スタートアップとマーケットの週刊ニュースレター「The TechCrunch Exchange」へようこそ。
なんという1週間だったのだろう。そして、なんという1カ月だったのだろうか。読者のみなさんはお元気だろうか。疲れ果てていても仕方がない。みんなそうだ。週末があるのはそのためだ。
先週起こったことを振り返ってみよう。個人のトレーダーたちが結束して、多くのプロの投資家たちを激怒させたのだ。それは縮小しつつある物理的な小売業者の衰退がこの先も続くだろうというプロの投資家たちの合理的な賭けを反転させることで行われた。
GameStop(ゲームストップ)株を買いまくることで、個人投資家たちがスマートマネーの台本をひっくり返したのだ。その後は大混乱だ、いくつかの株は取引サービスでブロックされ、議会は怒り、億万長者がまるで一般人であるかのようにTwitter(ツイッター)に投稿し、Dogecoin(ドージコイン)を含む複数の仮想通貨が急騰し、何もまともに解決しないまま週末へと突入した。奇妙な出来事だ。
この教訓について語り合おう。第一に、過度に株の空売りをしてはならないということだ。その取引が世間の目に晒され、不利益を被らせようと反転させられるリスクがあるからだ。第二に、TechCrunchが長年にわたって取材してきたフィンテックスタートアップは、積立金要件や単純なプラットフォームリスクのために、予想以上に脆弱なものになっていたということだ。そして第三に、物事は常により悪化することがあるということだ。
その最後の教訓の証拠は、それがWeWorkがSPACを介して上場を模索する可能性があることが知られるようになった週の最中にやってきた。これは2021年が2020年よりも重要でいつも通りの年になったことを示している。
振り返りは止めて、本日のメイントピックへ入ろう、それは、私が実際に一緒に働いている人物、Guru Gowrappan(グル・ゴウラッパン)氏(ベライゾン・メディア・グループ、VMGのCEO)との対話だ。ご存知ない方のために言い添えておくなら、Verizon(ベライゾン)はVMGを所有しており、結果としてTechCrunchを所有している。VMGは、Yahoo!(ヤフー)から各種メディアブランド、その他のテクノロジー製品に至るまでの、さまざまな資産が集められた企業だ。それは年間に何十億ドル(何千億円)もの売り上げを得ているが、そのことを知れば、ゴウラッパン氏がどれくらい私のいる場所から高い場所にいるかがわかるだろう。私もTechCrunchの中ではそこそこの地位だが、全体の組織図の中では埋もれた立場だ。
要するにとても遠いということだ。
しかし、私たちはTwitter上でお互いをフォローしていて、 先週Verizonが報告したVMGの決算のかなり良かった数字をツイートした後、私は30分ほどゴウラッパン氏と話す機会を得た。つまりボスのボスの(中略)ボスを、特に前提なしに取材できるということだ。断るわけがない。
背景をお話ししておくと、VMGの第4四半期の売上は23億ドル(約2408億円)で、前年同期比11%増となった。Verizonはそれを「Yahoo!を買収して以来、前年同期比で成長した初めての四半期」だと述べている。何がその結果をもたらしたのか?Verizonの業績報告によれば「デマンドサイドのプラットフォームの収益が前年比41%増となり、広告が好調な傾向にある」とのことだ。
ゴウラッパン氏だけではなく、正直なところ私も、この成長は嬉しい。なにしろVMGの売上は、2020年第2四半期には前年同期比24.5%減の14億ドル(約1466億円)にまで落ち込んでいたのだから。
私はいくつかの質問を用意していた。最近の広告の勢いは2021年も続くのだろうか(それはVMGの組織をはるかに超えて多くのビジネスに影響を与える可能性があるだろう)。VMGが前年比で成長していることはVerizonにとってどれほど重要であったのか。彼は商業収入とジャーナリズムのバランスをどう取ろうと考えているのか。そして最近復活を見せて、Substack(サブスタック)やTwitter(ツイッター)そしてFacebook(フェイスブック)さえもが手を出しているニュースレター技術のような新しいメディアプロダクトについて、ゴウラッパン氏はどう考えているのだろうか。
私が聞き出したのは以下のようなものだ。
- 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の年の最後の数カ月に見られた強力な広告パフォーマンスについて、ゴウラッパン氏は「市場のダイナミクスのコア部分がより永続性のあるものへと変化している」と語った。そして消費者の行動が以前よりも「よりデジタルに、よりオンラインに」なっていると付け加えた。
- VMGのCEOは、2021年第1四半期の予想を詳細に語ることは拒んだが、VMGは「その勢いを継続する」ことを目指していると口にした。
- その勢いの一部は、サブスクリプションプロダクトから来ており、ゴウラッパン氏はそれを勝因の1つとして挙げている。「新型コロナによって起こったトレンドの1つを見てみると、消費者がより信頼できるコンテンツに移行し、より多くの時間とお金をサブスクリプションベースのプロダクトを消費するために使おうとしていることがわかりますね【略】TechCrunch / Extra Crunchは前年比で196%近く成長しました」。
- 現況に対する彼の回答から読み取れたことは、オンラインメディア事業にとって、今は悪い状況ではないということだ。ジャーナリズム業界の生き残りを見渡せばわかるが、ここ数年はとてもそのような状況とは言い難かったのだ。
- Buzzfeed(バズフィード)によるVMGからのHuffPost(ハフポスト)買収後に考えたことだが、Verizon内部でのVMGの位置づけについて、私はゴウラッパン氏に、VMGの最近の財務実績が会社をVerizonにとってより魅力的なものにしたかどうか、また、当社がやろうとしていた挑戦が結果を出したのかどうかを尋ねてみた。ところで、この質問は、書くことは簡単だが、自分を解雇できる人間と話をしているときに口にするのはやや難しい質問だ。とにかく、ゴウラッパン氏はそれに対して「完璧ですね」と答えた。VMGのCEOは、VerizonのCEOの意見を、メディア事業はVerizonにとって「コア」であり、「VMGが約束を果たす一方で、Verizonはメディア事業に投資を続けていきます」とまとめている。
- ゴウラッパン氏は、VMGはプラットフォーム上でeコマースを推進する際に、信頼性を売上と交換することはないと述べている。「いかなる場合も、信用を金銭と交換することはありません。とんでもない。編集チームが私を正直にしてくれるのです」と彼は言い、ジャーナリズムのバランスを崩すような変更はしないと付け加えた。そう聞くことができて良かった。
- 最後の質問は、VMGが真似したい、もしくは買いたいと思うような新しいメディアプロダクトはあるかというものだった。ゴウラッパン氏は全体的にパーソナライゼーションには強気だったが、VMGがSubstackのような企業を買収しようとしているのかどうかといった話題には触れようとはしなかった。
おっともう1つ、HuffPostのBuzzFeedへの売却を受けて、VMGが他のメディアを売却もしくは処分するつもりはあるのかという質問もしてみた。ゴウラッパン氏によれば、VerizonのCEOはメディア事業に「完全にコミットしています」と述べ、「それは売却によって生み出されるものではありません」と述べているという。売却ではなく「投資と成長の上に築かれます」と述べ「追加の事業を売却する予定はありません」と付け加えている。現在の健康保険が気に入っている身としてはひと安心だ。
以上がいつものExchange的な話題ではないことは承知しているが、私が常に心がけていることの1つは、仕事のおかげで自分のところにやってくる話題を、みなさんのところにお届けするということだ。
ということで、ここからはベンチャーキャピタルの話に戻ろう。
マーケットノート
先週のTwitterフィードはGameStopで埋め尽くされていたが、他にも知っておくべきことがある。例を挙げるなら、米国に拠点を置くフィンテックのAlfred(アルフレッド)が米国時間1月26日火曜日に1億ドル(約105億円)を調達した。同社はデジタルインテリジェンスと人間を融合させ、ユーザーの金融生活の管理を支援する。すばらしい。
また、アフリカのVC市場の掘り下げを含む、2020年のベンチャーデータに焦点を当てた私たちの最近のレポートに加えて、投資グループのWork-Benchが、2020年後半にニューヨークのエンタープライズテックシーンがどのように推移したかをまとめた。いつもの週なら私が分析してご紹介するような種類のデータなのだが、なにしろ今週は大変だったので中身の読み込みはみなさんにお任せする。
データといえば、企業がより多くの多様な候補者を採用するのを支援するスタートアップHalloがその「Black Founder Funding Q4 2020」にまとまったデータを発表している。読むべし。時間がないようなら、とりあえず私の目に留まり、気分を落ち込ませた見出しを挙げておこう。「Halloの調査によると、(2020年第4四半期に)分析された1537社のうち、黒人の創業者が率いていたのは40社に止まっっていた」 。
そして先週私は、決算報告後のMicrosoft(マイクロソフト)からいろいろと話を聞いた。詳細は後日に譲るが、2つのことがはっきりした。まずクラウドの世界にはまだまだ大きな成長の余地があるということだ。これはスタートアップのソフトウェア市場にとっては良い報せだ。また、Salesforce(セールスフォース)がSlack(スラック)を買収した理由を理解するために、Teams(チームス)の成長に関するデータをもっと知りたいと思っていたのなら、次の四半期を待とう。
その他のことなど
締めくくりに。私は2014年8月に、レイルガン方式のブリトーデリバリーサービスを思いついた。アプリでボタンを押せば、適当な店からブリトーをオフィスにまっすぐ届けてくれる。その後、Postmates(ポストメイツ)が実際にアプリに「ブリトー砲」機能を組み込んだが、これは陽気で楽しいものだった。
さて時は2021年。Postmatesは今ではUberの一部となっている。その彼らがブリトー砲をひっさげて帰ってきた。
私の怠惰で愚かなアイデアが、5年以上も経ってから、プロ仕様のポテト砲から打ち出されたブリトーめがけて、NFLのスター選手を走らせることになるとは予想もしていなかった。でも2021年になってここまでたどり着いたのだ。
つまり、これは私のスタートアップのアイデアはすべてすばらしいものだという証拠だと思う。
関連記事:WeWorkがSPACとの合併を通じて上場を検討中、WSJが報道
カテゴリー:フィンテック
タグ:The TechCrunch Exchange
画像クレジット:Nigel Sussman
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(文:Alex Wilhelm、翻訳:sako)