住宅関連サービスプラットフォームのPorchが4社を買収

先日SPAC(特別買収目的会社)でのIPO(新規株式公開)を実施したPorch(ポーチ)が、総額1億2200万ドル(約126億円)で4社を買収したことを米国時間1月15日に発表した。最大の注目は1億ドル(約103億円)で買収したHomeowners of America(ホームオーナーズ・オブ・アメリカ)だ。今後、ポーチは家財保険業界にさらに進出するだろう。加えて、引越し関連事業向けのデータプラットフォームを扱うV12を2200万ドル(約22億円)で買収し、住宅診断サービスのPalm-Tech(パームテック)と屋根業者向けのSaaSアプリを販売するiRoofing(アイルーフィング)も合わせて買収した。パームテックとアイルーフィングの買収価格は公表されていない。

ポーチといえば、住宅のリフォームや修繕関連のサービスを7年前の2013年から提供している企業、というイメージかもしれない。もちろん今でも変わらずそれらのサービスを提供しているが、実は、同社は起業から数年後に「住宅関連の包括的なソフトウェアプラットフォーム」の構築に主軸を移している。買収を重ねた結果、現在では、Porch.com、HireAHelper(ハイヤーエーヘルパー)などのサービス、住宅診断のInspection Support Network(インスペクション・サポート・ネットワーク)、引越し関連サービスのKandela(カンデラ)、保険仲介業者のElite Insurance Group(エリート・インシュアランス・グループ)がポーチグループの傘下となっている。米国では、住宅購入者3人のうち2人が毎月、ポーチのツールを直接的または間接的な方法で利用している。

ポーチの創業者でCEOのマット・アーリックマン氏、画像クレジット:Porch

ポーチの創業者でCEOのMatt Ehrlichman(マット・アーリックマン)氏は、当初は従来型のIPOで上場する予定だったが、最近急増している特別買収目的会社を活用したIPOによって予定を1年早めることが可能となり、本日の買収発表に至った、とTechCrunchに語った。

アーリックマン氏によると、「3億2300万ドル(約335億円)の資金を調達できたため、株式を公開して上場することに加えて十分な増資も可能となった。これにより、予定を1年早めて、ポーチと非常に相性がよいと思われる企業の買収を今年のうちに進めることができた」という。ポーチの2021年の収益予測は当初1億2000万ドル(約124億円)だったが、今回の買収により1億7000万ドル(約176億円)に上方修正された。前年度(2020年)比で134 %の成長となる。

これまでに公表された文書を見ると、ポーチは、2021年に保険業界に進出することを以前から計画していたことが分かる。アーリックマン氏が述べるように、ポーチは最近、自ら包括的なソフトウェア企業として位置づけるようになっており、提供するサービスにインシュアテックが追加されることで継続的な収益を見込んでいる。加えて、ポーチは既に多種多様なサービスを提供しているため、追加されるサービスの顧客獲得にかかるコストは限りなくゼロに近い。

ポーチは既に保険仲介業務の認可を取得している。ホームオーナーズ・オブ・アメリカを買収したということは、保険会社でもあり総代理店でもある企業を買収したということだ。

アーリックマン氏は次のように述べている。「消費者の経済価値をすべて獲得することが可能だ。新居のオーナーが家財保険に申し込むのをサポートし、オーナーが満足できるようにその保険を当社で管理する。当社が投資したテクノロジーを駆使することにより、新居のニーズに合わせた家財保険を納得のいく価格ですぐに見つけられる。住宅の検査によって屋根が古いかどうかを確認し、水回りやその他の機器の不具合を発見するといった、他の企業にはない住宅関連の豊富なデータが、家財保険を取り扱う際に大きなメリットとなる」。

確かに、このようなデータがあるからこそ、数多くの買収が意味あるものとなる。ポーチは幅広い顧客層についてよく理解しているため、買収した企業に対して必要なデータを提供でき、それが、サービスの追加や、より的確な意思決定へとつながる。

ホームオーナーズ・オブ・アメリカは現在、テキサス、アリゾナ、ノースカロライナ、サウスカロライナ、バージニア、ジョージアの6州で営業しており、31州で認可を受けている。既に800を超える代理店が加盟するネットワークを形成しているが、ポーチは今後数か月でそのネットワークと営業地域をさらに拡大する予定だ。アーリックマン氏は「全国で顧客を獲得するためのコストがかからないので、事業の拡大に注力できる」と説明する。

ポーチがV12を買収した狙いは、V12の引越し関連事業とそのデータプラットフォームだ。今回の買収により、この分野での収益2億ドル(約207億円)という中期的目標の達成に近づくだろう。自動車業界など多岐にわたるV12のサービスは今後も提供されていく予定だ。V12プラットフォームの主な目的は、ブランドが特定の消費者にアプローチする適切なタイミングを把握することである。例えば、新車を買ったり引越したりする前のタイミングだ。ポーチは、自社が既に保有しているデータとV12の強みを活用してこの分野での拡大を図ることにより、アーリックマン氏いわく「真の」引越し業者となり、同業者との差別化を目指す。

「当社のマーケティングソフトウェア部門の基盤はV12であり、V12は引越し関連事業に強い。V12プラットフォームにより、長期的に見て非常に大きな差別化を図ることができる。成長を見込める分野はほかにもいくつかあり、それらの分野でもV12プラットフォームを展開していく予定だ」とアーリックマン氏は語る。

アイルーフィングとパームテックの買収の目的は、ポーチがこれまでに買収した企業や住宅診断会社と同じように、ポーチグループの関連製品全体と統合することによって企業の成長を促進することである。

ポーチのCFOであるMarty Heimbigner(マーティ・ハインビグナー)氏は次のように語っている。「当社のビジネスは、今回新たに買収した事業も含めて、ほぼ全体的に継続的な収益を見込めるし、予測可能だ。このようなリピート収益は収益コストが20 %未満で利益率が高く、当社プラットフォームで年間30 %以上の成長が期待できる。そのため、今回の買収は株主にとって非常に大きなメリットとなると確信している」。

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カテゴリー:ネットサービス
タグ:買収 住宅

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(文:Frederic Lardinois、翻訳:Dragonfly)

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TechCrunch Japan

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