リテンションとは、人との関係を維持する意味合いを持ちます。マーケティングでのリテンションは「既存の顧客との関係」に該当し、ここに重点を置いた手法は、新規顧客の獲得を重視する一方で関心が高まっているのです。
今回の記事では、リテンションのコストと顧客管理のデータ化といった特徴や注目される背景を含め、マーケティングにおける施策やメリットなども紹介します。
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リテンションとは?
リテンション(retention)とは、日本語で「保持」を意味します。
マーケティングにおいては「既存顧客との良好な関係を維持していく」ための活動をいいます。この言葉は、人事業界でも使われており、その場合は「人材の流出防止」のための施策のことを指します。
昨今の人口減・人材の流動化を背景とした離職防止や従業員の定着を図る人事手法でもあるのです。ではマーケティング領域ではどうでしょうか。
なぜリテンションが注目されるのか?
マーケティング分野「既存顧客との関係維持」でリテンションが注目されている理由は、「低コスト」と「顧客情報のデータ化」の2点です。
詳しく解説していきます。
新規顧客の獲得よりも低コストで購買につながる
新規の顧客を獲得しようとすれば、既存顧客を維持するよりもコストがかかるといわれています。
マーケティングの世界には「1:5の法則」という考え方があり、新規顧客に投じた営業や広告などのコストと比べて、既存顧客へのフォローや追加購入を促進する費用はその1/5であるというものです。
特にBtoB領域で新規顧客を獲得するとなると、「広告費用」「商談」「契約書締結」などさまざまな対応に時間とコストがかかりますが、既存顧客はそうした獲得コストはかかりません。
また、コミュニケーションなども、当然新規の方がコストがかかります。「どんなツールを使ってやりとりするか」「この会社の決済権は誰にあるか」「誰が実装するのか」など、0から確認する必要が出てきます。このように新規顧客の場合は、獲得だけではなくコストもかかってくるのです。
デジタル化によって顧客データが活かせる
ECサイト等でのネット販売が普及したことも、リテンションが注目される背景にあります。
デジタルデータで「顧客の販売情報」や「ユーザーの行動情報」が取得できるため、新規顧客よりも既存顧客へのアプローチのほうがより成果につながりやすくなったのです。
なかでも、Webを中心としたリテンションマーケティングでは、顧客の属性や購入履歴に合わせたアプローチを行うCRM(顧客関係管理)の導入が、一般的になりつつあります。
リテンションを実践するポイントは「取得データ」と「施策」
リテンションマーケティングを実践するにあたっては、入手元がアナログ・デジタル問わず、まずは活用できるデータを取得しなければなりません。
一般的には「過去の購入履歴」や「ウェブサイトの訪問履歴」、「マーケティング施策への反応」といったデータについて管理・分析して進める必要があります。
近年では、各企業がCRMなどのデジタルマーケティングシステムを用いて、より複雑にデータの管理・分析を行い、以下のような施策に力を注いでいます。
- アフターサービスの充実を図る
- 既存顧客限定の特典やキャンペーンを用意し、新規顧客と差別化する
- 自社の商品・サービスの情報をメルマガなどで継続的に発信する
- リアル(対面)とデジタルを融合させたハイブリッドな顧客体験で満足度向上を図る
典型的な例では、商品を購入した際に次回に使えるクーポンを配布したり、メールマガジンやSNSなどで継続的な情報を提供したりする取り組みが当てはまります。ポイントカードシステムの導入も、リテンションマーケティングの施策のひとつです。
さまざまな施策が考えられますが、基本的な考え方としては「販売して終わり」ではなく、しっかりと接点を持ち続けることが大切になります。
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リテンションで生まれるメリット
リテンションマーケティングによって顧客と良好な関係を維持することで、さまざまなメリットが生まれます。
代表的な4つのメリットをそれぞれ紹介します。
LTV(顧客生涯価値)が向上する
顧客と良い関係を構築することで、サービス利用や商品購入を繰り返すリピーターが増えると、将来的な収益性を考える指標である「LTV」(ライフタイムバリュー=顧客生涯価値)が向上します。
顧客生涯価値とは「1人の顧客が取引を始めてから終わるまでの期間にもたらす利益総額」のことです。既存顧客の1人でも多く、LTVを向上させることができれば経営の安定につながります。
また、結果として広告などの獲得施策の効率化にもつながります。
ROAS(広告の費用対効果)が例えば、
1,000円(LTV)/100円(広告費)×100=1000%だった場合に
1,200円(LTV)/100円(広告費)×100=1200%と改善すれば、広告の効果も改善している
といえます。
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優良顧客に育成できる
顧客ニーズに合わせた丁寧なコミュニケーションを心がけることで、同じ商品だけでなく、ワンランクアップした商品を買ってもらえたり(アップセル)、関連性のある商品も一緒に購入してもらえたり(クロスセル)します。
1人あたりの客単価を上げつつ、こうした購入金額の大きい優良顧客を1人でも多く育てていくことが重要だといえます。さらに優良顧客に対しては、特別な優遇・体験を提供し、差別化を図ることも大切です。
自社のサービスは商品に、愛着を持ってくれるロイヤルカスタマーを育てることを目指しましょう。
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休眠顧客を掘り起こせる
既存顧客の中には「以前サービス利用をしていたけれど、今は利用していない」という休眠顧客も多く存在します。
リテンションマーケティングでは、休眠顧客に情報を送り続けることで、再び自社に目を向けてもらう機会を作ることができます。
フィードバックが期待できる
商品・サービスを長く使い続けてくれる顧客からは、貴重なフィードバックがもらえることもよくあります。
実際にサービスを利用したリアルな声は、サービス改善や今後の商品開発のヒントになる貴重な意見です。また、既存顧客はリピート購入だけでなく、家族や知人への口コミやSNSで拡散してくれる場合もあるでしょう。
リテンションマーケティングの実施は、予算をかけて宣伝するよりも低コストで、しかも高い効果を得ることが可能なのです。
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リテンションマーケティングの注意点
リテンションマーケティングを実践する上で、注意すべきこともあります。
特に気を付けておきたい2つの注意点を挙げましょう。
やり方を間違えると顧客が離れてしまう場合も
リテンションマーケティングのための施策が、顧客にとって邪魔になっては関係の維持は難しくなる一方で、かえって離れていく場合もあります。
そうならないためにも顧客セグメントを作り、顧客の状況に沿った的確なアプローチを行いましょう。例えば、「〇〇関連の商品を購入した」「割引クーポンに反応した」といったウェブ上の動きが示されたら、「同じジャンルの関連商品を紹介する」「間髪入れずにお得情報を送る」などパターン化したアプローチを整備するのもひとつの手です。
顧客セグメントによる的確なアプローチは、顧客に求められていない施策を排除することも可能となるでしょう。
成果を得るまでのコストはかかる
データを管理・分析する作業は、専門的で、項目も多岐にわたり手間がかかるため、なるべく自動化して行いたいものです。
限られた時間で効率を高めるため、多くの企業では、CRMのほか、MA(マーケティングオートメーション)、SFA(営業支援システム)といったツールを採用しています。
成果を得るまでは導入・運用コストがかかり、頭を悩ませることもあるかもしれません。事前にリテンション施策の目標値やゴールを明確に決めておくことで、予算面での目途を立てることができるでしょう。
また、こうしたツールの一番の敵は「導入したけれど、使いこなせていない」という状態です。いきなりたくさん導入するのではなく、スモールステップで取り組むのもひとつの手段でしょう。
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現代のマーケティング戦略に欠かせない考え方
人口減、顧客情報のデータ化、ネット販売の普及、デジタルマーケティングシステム……などの現代的なキーワードを見ても、リテンションは現代のマーケティング戦略に欠かせない考え方のひとつといえます。
企業にもたらされる利益は新規顧客を追いかけるだけでなく、既存顧客との関係性を見直すことが重要な時代といえるのです。マーケティング手法としてのリテンションは、今後ますます重要度を高めていくでしょう。
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