捨てることも含めたコンテンツSEOに必要な戦略とその考え方


Content is king

という言葉そのものはSEOにおいて定着したが、正しい理解がなされているとは言い難いと思う。

「Content is King にまつわる誤解と真実という住太陽氏の記事にいかにこの言葉が誤解されているか?について詳しく書かれているが、私もほぼ同感である。

私なりにこの記事の内容を踏まえて、それ以外に色々思うところもあってこんな記事を書いてみる次第なのだ。

コンテンツには戦略がなくてはならない

これが私の言いたいことである。

戦略とは目的を達成するための、大枠での考え方だ。
戦争での勝利には戦略と戦術の2つのレベルがある。

個々の戦闘で勝つための方策を戦術という。

これに対して戦略とは戦争に勝つために、どのような方面に戦力を集中してどこを取りにいくか?
といった高い視点から考えることである。

戦術は現場指揮官が考え、戦略とは国家指導者レベルが考えるものだ。

コンテンツは戦略であるというのは、

1.コンテンツはビジネスの中でどのような位置づけであるのか?

を明確にし、

2.どのようなユーザーを集めたいのか?

を定めて、

3.集めたユーザーをどのようにコンバージョンにつなげるのか?

これを見定めて構築することを指している。
コンテンツを作ってもまったくコンバージョンが取れない、という失敗の多くはこの戦略がない。もしくは戦略が根本から間違っているのが原因だと私は考えている。

それでは1から順番に考察してみよう。

1.このコンテンツはビジネスの中でどのような位置づけであるのか?

ここがあいまいなサイトが多い。
根本が間違えると全て間違える。

売上を取りたいのか、企業や商品の知名度を高めたいのか、ユーザーからの信頼を得たいのか・・・

といった目的を定めることが最も重要である。目的は一つである必要はないが、明確に説明できる必要がある。

企業では何かを購入するときには稟議がたいてい必要なはずである。
稟議を通すには、決裁者が金を出すに値すると考える理由が要る。

コンテンツもそれと一緒だ。
コンテンツを作ることは、金を出すことと同義である。
もし、1つのコンテンツを作るために2時間かけるならば、少なくとも2時間分の時給分プラスアルファの金をかけるに足る理由が必要だ。

プラスアルファの額は大きい。
給与を払う以上の見返りがあるから、その人を雇っているのである。
給料分ピッタリしか稼いでいない人しかいなかったら会社は倒産する。

また、時給の他に家賃とか光熱費、諸経費といった様々な会社を運営するための経費も一人一人にかかっている。

時給が2000円の社員であれば、1時間の価値は4000円以上になろう。
2時間を要したならば8000円以上をコンテンツに投資したこととほぼ同義である。

これだけの金額を漫然とコンテンツ作成に投下するからWebサイトは失敗するのだ。

「日常業務が忙しくて、コンテンツ作成に手が回らない」

という言葉はよく聞かれるが当たり前だ。

日常業務とは給与以上の価値を会社にもたらすことがほぼ確実なビジネスである。

ところが、これに対して目的が明確でないコンテンツ作成は、ほぼ確実に赤字になるビジネスである。
日常業務を優先するのは合理的な判断だから、コンテンツ作成を行わないのである。

日常業務に優先する目的がない限り普通はコンテンツ作成は行われないし、行われるべきではないと私は考えている。
コンテンツ作成によるメリットは、効果が不明確であるがその投資に見合うリターンが見込めなければならない。

サイコロを振った時に、4以上が出れば1万円もらえるとする。
このサイコロを振るのに、4千円が必要であっても払ったほうが得である。
逆に6千円必要なら損である。

コンテンツを作って得られるかもしれない利益と、日常業務の重要度を上記のサイコロの例のように比較してやるべきなのか?を考えねばならない。

その結果、コンテンツを作るメリットが低いと判断したならば、いさぎよくやらないといった判断をすべきで、何でもかんでもコンテンツを作りさえすればいいってものではない。

※誤解しないために書いておくのだがコンテンツ作成は大きなメリットを、恒久的にサイトにもたらすものであることを最後に書き添えておく。

2.どのようなユーザーを集めたいのか?

サイトにユーザーを呼ぶだけでは目的を達成することは出来ない。
これは住氏の言うコンテンツとセリング(商品紹介)の関係から考えるとわかりやすい。
(セリングはコンテンツではないということ)

広告をどの雑誌に載せるか?

自動車の広告を載せるならば、自動車の雑誌に載せるとか、RV車であればアウトドアライフの雑誌に載せるといった考慮をするはずだ。

どの雑誌を選ぶかは死活的に広告効果に影響するので、誰でも厳しく厳しく吟味する。

かつ、雑誌の内容と広告で訴求する内容は連動しなくてはならない。

アウトドアライフの雑誌に自動車の広告を載せるならば、
「自動車のエンジン性能がこんなに優れている」といった切り口では駄目で、
「こんなに積める」「こんなに便利」「悪路を走れる」
といった訴求になってくるだろう。

ところが、自分でWebサイトでコンテンツを作る場合は雑誌の記事に相当する部分は自由裁量に任されているのに、広告とまったく連携していなかったり、訴求すべき内容とずれていることが多い。
被リンクを集める、バズを狙うといった明確な目的があればいい。それもなく、ずれがあったら無駄である。

3.集めたユーザーをどのようにコンバージョンにつなげるのか?

セリングのページにランディングしたユーザーは、コンバージョンにつながる可能性が高い。
しかし、コンテンツページにランディングしたユーザーは基本的には商品そのものに興味がない。

しかし、コンテンツに投資をする以上は、購入に結び付けなければならない。

2.のように個々のコンテンツに連動した訴求が必要である。
また、1回だけ見てもらうだけではなく、ソーシャルメディアやメルマガなどと組み合わせユーザーとの接触の質・量を高める。
リマーケティングなどと連携させLPと組み合わせてコンバージョンを取る。

といった様々な方策が考えられ、全て自由裁量に任されている。


非常にコンテンツ戦略は考えるべきことが多岐に渡り、簡単なものではないということが言いたかったのである。

最後に書いておきたいのだが、私はSEOにおいて必ずしも充実したコンテンツが必要だとは考えていない。
最低限、充実したセリングのページを作ることだけでもSEOは成り立つ。

充実したページを作ることによって、テキスト量が増えキーワードの掛け合わせが増える。
想定しないような2語、3語、4語・・・といったキーワードの組み合わせで検索結果に露出する可能性が増える。

そんなキーワードは競合がほとんどいない。
だから、コンテンツページを作るメリットが低いと考えたのであれば、セリングページだけを充実させる戦略はあり得るし、費用対効果を考えれば悪くない。

生半可にコンテンツに経営資源を投入するぐらいであれば、コンテンツSEOを捨てるって戦略もよい選択であろう。