ビジネスの世界では、ソーシャルメディアは、eメールのように扱われることが多い。あらゆる会社がソーシャルメディアを導入している。弊社、アルティメーターグループが、2012年の後半に700名のエグゼクティブとソーシャルメディア戦略の担当者に行った調査では、参加者全員が程度の違いはあれど、ソーシャルメディア戦略を利用していると答えていた。しかし、eメールとは異なり、フェイスブックやツイッター等を介して、効果的にコミュニケーションを取る方法をマスターとしているとは言い難い。
ここ数年の間、企業は、ソーシャルメディア戦略をマーケティング、サービス、そして、その他の関連する取り組みに採用するペースを早めてきている。しかし、ソーシャルメディアの採用、そして、顧客と従業員の関係、および、収益への影響の理解は、必ずしも比例しているわけではない。 ソーシャルメディア戦略と企業の価値感の間には溝があるため、大勢のエグゼクティブは、総合的なアプローチ、そして、そのアプローチを支えるために構築したインフラについて見直しを迫られている。この内省的なプロセスは、日頃のソーシャルメディア戦略を、より深いソーシャルビジネス戦略に変えるモチベーションを企業に与えつつある。
シャーリーン・リーと私は、昨年、時間を割いて、企業がソーシャルメディアにアプローチする仕組み、計画、プロセス、そして、成果が時間の経過とともに成熟する経緯を徹底的に調査した。その結果、興味深い傾向が浮かび上がった。この結果は、新たにリリースしたレポート、「ソーシャルビジネスの進化 – ソーシャルメディアの転換の6つの段階」の中で取り上げている。
調査結果は、控えめに言っても、衝撃的であった。ソーシャルメディアプログラムおよびキャンペーンを実行する企業、そして、ソーシャルビジネス戦略に具体的に投資する企業との間に大きなギャップが見られた。アルティメーターは、ソーシャルビジネスを、ソーシャルメディアとソーシャルな手法を会社に徹底的に統合して、事業のインパクトをもたらす取り組みと定義した。
裂け目の片方には、何も意図せず、または、成果を目標に結びつけることなく、積極的にソーシャルメディアに投資する企業(部門)が存在する。もう一方の側には、ソーシャルメディアとソーシャルな手法を企業全体に徹底的に統合し、目に見える事業のインパクトをもたらすことに成功している企業がいる。
事実、ソーシャル戦略が事業の成果に結びついていると感じると答えた企業は34%であり、企業の部門が共通するビジョンの下、協力する体制が整った、総合的なアプローチを行っていると答えた企業は28%だけであった。また、来年以降を見越した計画を策定していると自信を持って答えたのは12%のみであった。しかし、最も衝撃的だったのは、エグゼクティブが、「会社のソーシャル戦略に関して、詳しく知らされている、関与している、そして、協調している」企業の割合が、調査に参加した企業の5割だけであった点だ。
しかし、望みがないわけではない。シャーリーンと私は、1)組織の戦略上の目標と明確に一致しているかどうか 2)組織的な協調および当該の戦略の実施を支えるサポートがあるかどうかが、ソーシャルビジネス戦略を成功に導くための重要な基準である点に気づいた。そして、大半の企業は、成熟する上で、6つの注目すべき段階を進む(または、既に進んでいる)ことを見抜いた。
以下に6つの段階を挙げていく:
段階 1: 計画 – “情報収集”
1つ目の段階の目標は、戦略の進展、組織的な協力体制、リソースの推進、そして、戦略の実行の強固な土台がある点を確認することだ。この段階では、1.顧客の声に耳を傾け、ソーシャルメディアでの行動に関する情報を学ぶ、2.実験プロジェクトを用いて、ソーシャルメディアの取り組みの優先順位を決める、そして、3.評価を行い、内部の準備の状態を評価する等の取り組みが重要な鍵を握る。
段階 2: プレゼンス – “主張する”
主張を行う行為は、計画からアクションへの自然な進化を表している。ソーシャル戦略を実施していくにつれ、経験によって、ソーシャルメディアでの組織的な、情報に基づくプレゼンスが確立されていく。この段階では、1.ソーシャルメディアのコンテンツを活用して、既存のマーケティングの取り組みを拡大する、2.情報を提供して、取引後の課題を支える、3.部門の目的、または、役割の目的に測定基準を合わせる等の取り組みが重要である。
段階 3: 交流 – “会話が関係を深める”
この段階に進むと、企業は、ソーシャルメディアは「あったらいいね」ではなく、関係構築において欠かせない要素だと考えるようになる。この段階では、1.会話に参加して、コミュニティを構築する、2.交流および影響力を使って、購入までに要する時間を効率良く短縮する、3.消費者同士の交流および直接的な交流を介して、サポートを提供する、4.リスク管理およびトレーニングのルールを確立して、発想を変える、5.エンタープライズ用のソーシャルネットワークを介して、従業員の交流を促進する等が重要な鍵を握る。
段階 4: 形式化 – “規模を考慮して整理する”
まとまりのないソーシャル戦略を実施すると、段階 4へ組織を移す主な原動力にマイナスの影響を与える可能性がある。この段階では、3つの主要なアクティビティ:エグゼクティブの支援の確立、ハブ – CoE(センター・オブ・エクセレンス)の構築、そして、組織全体を対象とした管理基準の策定に対して、形式化されたアプローチが用いられる。企業は、潜在的なCoEの落とし穴を考慮しておく必要があるが、計画を形式化することで、長期的な規模の問題に直面する可能性がある。
段階 5: 戦略 – “ソーシャルビジネス化”
企業が成熟の段階に移行すると、ソーシャルメディア戦略は、実際の事業へのインパクトをもたらすようになり、認知度はますます高くなる。その結果、経営陣および部門のトップがソーシャルのポテンシャルに注目するようになる。この段階では、1.ソーシャルをあらゆる組織の領域に統合する、2.エグゼクティブの関与を獲得する、3.運営委員会を設立する、4.ソーシャルの取り組みを事業のユニットに押し出す等の取り組みが重要な役割を持つ。
段階 6: 集中 – “真のソーシャルビジネス”
部門を横断して機能し、エグゼクティブからの支持を取り付けた結果、ソーシャルビジネス戦略は、進化する組織に浸透していく。この段階に進むためには、企業は単一のビジネス戦略のプロセスに力を入れなければならない: つまり、ソーシャルをデジタルに融合し、1点集中型のメディアを用いて、総合的な消費者経験を生み出し、総合的なソーシャルな文化を作る取り組みである。
この記事はBrian Solisに掲載された「The Gap Between Social Media and Business Impact: 6 stages of social business transformation」を翻訳した内容です。