以前に検索エンジンとSEOの歴史について書いてくれた大学生の佐々木くんに、次のテーマで「Googleの検索に関する特許」についてまとめてもらいました。
Googleの特許は「何がしたいの?」を理解する手がかりに
Googleの特許を知る事はSEOを考える上でとても重要な事です。何故ならSEOを実施するにあたって、検索エンジンとしてのGoogleの考えや方針は必ず理解しておく必要があり、Googleが持っている特許の内容は、その考えや背景を読み取るための材料になるからです。
この記事ではGoogleの特許の中から検索エンジンに関する特許を一部ピックアップし、紹介します。
※年代は申請日で記載しています。
※発明者もしくは譲受人がGoogle Inc.になっている特許を記載しています。
※ここに挙げられていないものも含め、特許を取得していることと、それがランキングに反映されていることは別問題です(特許はとったが使っていない、があり得るということ)。
PatFT:認定された特許
※PatFTとは公式に認定されている特許を指します。
リンクされたデータベース内におけるノードのランキングに関する方法
(1998年1月 特許番号:6285999)
検索技術に関わる特許の中で最も有名かもしれません。いわゆる”PageRank”のアルゴリズムに関する特許です。特許権の所有者はスタンフォード大学ですが、Googleが独占で使用する権利を持っています。
検索エンジンの音声インターフェース
(2001年2月 特許番号:7027987)
音声による検索システムに関する特許です。以下の参考URLをご覧いただくとわかりますが、現在少しずつ普及してきている音声検索について、今から10年以上も前から、それが使われるシーンを想像されていたわけですね。
ちなみに「特許の一部は製品化・サービス化するが、そうでないものもある」というのはこの記事の最後にも書かれています。
曖昧な検索クエリに対して検索結果を提供する為に修飾されたインデックスを使用する方法及び装置
(2003年3月 特許番号:6529903)
ユーザーが検索する時にサイトの管理者が想定した具体的なキーワードを打ちこまず”曖昧な言葉”での検索をしてしまった場合を想定した施策に関する特許です。
※参考:「Google」の知的財産戦略
ユーザーの行動や特徴のデータに基づいた文章のランキング
(2004年7月 特許番号:7716225)
いわゆる”リーズナブルサーファーモデル”の特許です。全てのリンクを均等に扱うのではなく、データや特徴に基づきリンクに妥当な重み付けをして扱う、という考え方です。
ソーシャルネットワーク内の関連メンバーを評価する為の方法とシステム
(2004年8月 特許番号:8010459)
SNSでの友人のクールさ、セクシーさ、信頼度などによって評価が出来るシステム、といった少し変わった特許です。
カメラ付き携帯電話用の画像ベースの検索エンジン
(2005年5月 特許番号:7565139)
“画像での検索”に関するシステムの特許で、内蔵カメラ付きケータイの普及が背景にあります。携帯電話で撮影した画像そのものを検索に利用するための技術です。
フレーズベースの情報検索システム内のスパムドキュメントを検出する
(2006年6月 特許番号:7603345)
文書内の関連フレーズの数に基づいてスパム文書を特定するシステムに関する、とする特許。スパム文書にありがちな「キーワードの集合体」のような文書のパターンを検出し、スパム文書と非スパム文書を識別します。
参考:http://www.seobythesea.com/2006/12/phrase-based-information-retrieval-and-spam-detection/
コンテンツに基づいた広告サービスの提供
(2006年7月 特許番号:7734624)
サイトの内容に近いジャンルの広告を表示する技術の特許です。コンテンツを閲覧しているユーザーに関連性の高い広告を表示することで、より高い広告効果を実現することができます。
強化された検索結果
(2006年1月 特許番号:7624101)
電話番号または住所を含んだクエリ検索に応じる事と、クエリに関連のある住所のリンクを示す事が出来るといった検索機能の強化に関する特許です。この特許にはWebの膨大な情報量に対して、ユーザー(特に新規でWeb検索に不慣れなユーザー)が求めている情報を探す為に労力を使ってしまう可能性が高いという背景があります。
電子メール環境内でのメッセージランキング
(2008年9月 特許番号:8095612)
自分の受信メールの内容を検索結果にランク付けして反映する方法に関する特許です。以下の記事で詳細に紹介されていますが、ウェブページとは異なり、メールならではのシグナルにもとづいてランク付けされます。
AppFT:出願した特許
※公式に認定されていないが、公開されている特許を指します。
MapReduce内のフレームワークデータの処理
(2011年4月 特許番号:20120254193)
MapRuduceというGoogleのサーバー処理に用いられている分散処理アルゴリズムで、「処理速度の向上→検索結果反映までの時間短縮」の技術に関する特許です。
ポリシーに違反してるかをチェックするシステム
(2012年8月 特許番号:20130110748)
過去の”問題あり”なデータと比較して、ポリシーや法律に抵触するような悪意のある書き込みを事前に防止出来るようにする技術ですが、以下の記事にもあるように「道徳的な判断をGoogleが行う」というところに賛否が分かれそうな技術とも言えます。こちらも製品化されるとは限らないとのこと。
ソーシャルネットワークオブジェクトランキング
(2013年10月 特許番号:20140108428)
ブログやコミュニティなどのソーシャルネットワーク内のコンテンツのランク付けには、一般的なウェブページとは異なるシグナルも利用するべきだ、といった主旨の特許です。例えば友達やファンの数、プロフィールの閲覧数、投稿へのコメント数、最新の話題かどうか、などです。
補足:特許の探し方
Googleの特許は登録までしている特許(PatFT)も公開までしかしていない特許(AppFT)もすべて米国特許庁データベースで検索する事が出来ます。
特許番号や譲受人、発明者など様々な条件で検索する事が出来ます。
しかし、こちらの検索ページはそんなに見やすい訳ではないので私はGoogleの特許検索エンジンをオススメします。
一番の違いは、実際に特許の概要が説明してあるページにアクセスして自動翻訳をした時です。米国のデータベースだと活字がひたすら並んでいて見づらいですが、Googleの方だと項目が分かれていて見やすいです。
出典
まとめ
検索技術に関する様々なテーマからピックアップして、ごく一部を紹介させて頂きました。これらの特許内容はGoogleがこれからの検索エンジンをどうしていきたいのかを知る材料になり、ひいてはSEOをどのように考えていけばいいのかを知る材料になります。
こうした技術を読むにあたり、「どういう技術なのか」はもちろん大切ですが、「こび技術が開発された背景はなにか」「何が実現できるのか」「利用者にどういう利点があるのか」などを考えてみると、テクニカルな解釈ではなく、Googleが本質的に目指す方向性などを理解するのに役立つと思います。
しかし、前述の通りGoogleが特許を取得していてもその特許内容を検索エンジンに全て反映させているという訳ではないので注意して下さい。
参考:特許取得=Googleの検索アルゴリズムに組み込まれている訳ではない
ヴォラーレ株式会社 佐々木