KDDIが2011年から手がけているインキュベーションプログラム「KDDI ∞ Labo」。その採択企業の1社がイグジットしたようだ。∞ Labo第6期(2014年上期)の最優秀チームであるMist Technologies(Mist)がアドウェイズとの株式譲渡契約を締結。今後はアドウェイズ子会社として活動していくことを明らかにした。買収の金額等は非公開。
東大大学院発の技術系ベンチャー
Mist Technologiesは2013年の創業。東京大学大学院の学生だった代表取締役CEOの田中晋太朗氏を中心にしたメンバーの研究チームが母体となっている。2015年にはKDDIが手がけるコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)ファンド「KDDI Open Innovation Fund」からの出資を受けている。
創業前から手がけてきたのは、サーバの負荷を分散しつつ拘束にコンテンツ配信を実現するP2P型CDN(コンテンツデリバリーネットワーク)の「mistCDN」。∞ Laboへの参加などを経てサービスをブラッシュアップしてきた。現在ではフジテレビオンデマンド(FOD)の一部のコンテンツなどで導入が進んでいる。
このFODでのmistCDN導入がMist Technologiesのターニングポイントだったと語るのはCo-CEOの山下真寛氏。mistCDNによって4K動画の高速配信が実現する一方、配信された動画を再生できる高品質のプレーヤー自体がほとんどないということを知った。そこにニーズがあると踏んだMistは、モバイルブラウザ向けの動画プレーヤーである「Mist Inline Player」やモバイル・PCのブラウザ向けの360度動画プレーヤー「360 VR Player」などを開発していった。
今後は共同での商品開発も
現在、積極的なスタートアップ投資を行っているアドウェイズ。VC経由でMistの存在を知り、当初はプレーヤーまわりの知財の買収について話し合いを進めていたそうだが、最終的に今回の発表どおり子会社化に至ったという。
「アドウェイズはスマートフォンマーケティングをグローバルに展開している。広告効果測定のPartyTrackやアドネットワーク事業のOct-passなどを子会社のBulbitで開発しているが、現在DSPについても試験運用中だ。そこでの動画配信で何か一緒にできないかという話になった」(アドウェイズ取締役の山田翔氏)。なお今後のスタートアップ買収については、「積極的にできるわけではないが、今後事業とフィットするのであればやっていきたい。今回の取り組みが試金石になると思っている」(山田氏)とのこと。
今後Mistでは、田中氏をはじめとした既存メンバーを中心にプロダクトの提供を続ける一方、Bulbitをはじめとしたアドウェイズグループと共同での商品開発を進める。