本稿の著者Lena Levin(レナ・レビン)氏は、新型外科固定術ソリューションの大手開発会社Via Surgicalの共同ファウンダーでCEO。
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最近制定された、ヘルスケア提供者が誠実な信念を理由に処置を拒んだり、トランスジェンダーを治療しないことを許す法律は、一見テック業界にとって問題ではなさそうに見えるが、この種の法制度はヘルステックの基本的価値と直接衝突する。
アーカンソー州のAsa Hutchinson(アサ・ハッチンソン)知事は2021年3月、S.B. 289法案に署名した。「医療の倫理および多様性に関する法律」として知られているもので、ヘルスケアサービスを提供する者は誰でも(医師に限らない)、ケア行為が自分の良心に反すると信じた場合、緊急を要しないケアの提供を拒否できる。
アーカンソー州は、過去数年間この種の法律を推進してきた米国のいくつかの州の1つだ。このような 「conscience law(良心法)」はあらゆる患者に害を及ぼし、LGBTQ当事者や女性、郊外市民らは特にそうだ。中でも、一部の州で40%以上の病床がカトリック団体に支配されていることは大きな理由だ。
これらの法律は医師が自分の宗教的信条に反する可能性のある治療に従事しなくてはならないことを避けるための予防措置に見せかけながら、実際にはそれをはるかに超えており、破棄されるべきものだ。
「緊急を要しない」はさまざまな解釈が可能
アーカンソー州の法律は、極めて危険な坂道の始まりだ。同法が生殖の権利やLGBTQコミュニティに与える直接的影響だけでなく、医療従事者が自分の信条に反するというだけの理由でさまざまな種類の行為を拒否できるという問題を生み出す。
ヘルスケア提供者が宗教、倫理、良心などに基づいてどのサービスを実施するか決めるのを許すことは、国の差別禁止法の下で患者が有する保護される権利を実質的に奪うものだ。
ある医師や救急救命士にとって「緊急」であるものが、別のところで「緊急を要しない」と解釈される可能性がある。医療専門家による一部サービスの提供回避を許すことで、この法はヘルスケアサービスの範疇に関わる者なら誰でも、どんな種類のサービスでも、その時それが緊急ではなかったと信じたと主張する限り、拒否できるという解釈が可能になる。
同法はさらに、患者に患者の望む治療を提供できる誰かを紹介することも拒否できるとしている。これは、身体的、精神的健康問題を抱える患者に不当な負担を強いるものであり、別の提供者を探すために治療が遅れる恐れがある。健康や命に関わる問題では、複数の女性がカトリック医療施設で治療を拒否され、近くの救急医療センターに移動を強いられた事例がある。
ヘルステックコミュニティはあらゆる人々の健康改善に務めている
アーカンソー法は医療技術の開発と改善に尽力するビジネスの価値に相反する。そのビジネスの中心にいるヘルステックスタートアップは、より多くの患者により多くの優れたサービスを提供するために戦っている。ヘルスケアを誰もが利用できるようにするプラットフォームを作ることから、サービスの質を向上させる特別な医療機器の開発、新たな治療方法やワクチンの研究まで。
世界的パンデミックのためにワクチンを開発している一方で、ウイルスが特定の人々にとって緊急かどうかはさまざまな解釈が可能だという理由で医者が投与を拒むことを許している状況を想像して欲しい。あるいは、院内薬剤師が自分の信じる陰謀論を理由に何百回分ものワクチンを故意に使用不能にしたところを。アーカンソー州で決議されたような法律は、ヘルスケア・システムが陰謀論者に悪用される隙きを与え、すでに多くの健康ビジネス業者がQAnon(キューアノン)の嘘を根拠にアドバイスやサービスを提供している。
ヘルステックコミュニティは医薬や医療機器を自分たちと似た信条の患者のためだけに開発しているのではない。同様に医療従事者は、患者が必要な医療を受けるのを個人の感覚に基づいて難しくすべきではない。ヘルステック事業者やヘルスケア提供者にとって究極のゴールは、全員のための治療の質の改善という単一の焦点に絞られるべきだ。
「医療倫理」とアンチLGBTQ法は非倫理的である
ヘルステックコミュニティは、全員の健康を改善するべく新たなソリューションを市場に持ち込もうと日夜努力を続けるだけでなく、患者の命と健康の向上のために培われてきた重要な進歩を根絶やしにするこうした法律に立ち向かう必要がある。
アーカンソー法をはじめとする類似の法律は、適切な治療を見つけるという本来医療コミュニティが負うべき努力を患者に押し付けている。
カテゴリー:パブリック / ダイバーシティ
タグ:Via Surgical、アーカンソー、医療、コラム
画像クレジット:Frank and Helena / Getty Images
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(文:Lena Levin、翻訳:Nob Takahashi / facebook )