キャンピングカーなどを拠点に旅や生活をするだけでなく、クルマをDIYして自己表現のツールにするなど、新たな文化として注目を集める「バンライフ」。バンライフの文化を広め、市場を開拓しようとしているのが、バンライフのプラットフォーム事業を展開するCarstayだ。
「難易度は高い挑戦ですが、バンライフが当たり前になった世の中の方が豊な生活を送ることができると信じています」とCarstayの宮下晃樹代表は意気込む。
宮下氏はロシア出身で、米国留学の経験があり、慶応義塾大学経済学部を卒業。20歳で公認会計士試験に合格し、外資系企業に就職するが2016年に退社・独立して、2018年6月にCarstayを設立した。
Carstayは現在「バンシェア」と「カーステイ」の2つの軸で事業を行っている。バンシェアはバンライフを楽しみたい個人と、キャンピングカーなどを保有するオーナー間で、クルマを共用できるカーシェアサービスだ。カーステイは空き駐車場などのオーナーと、キャンピングカーなどで旅をする個人とをマッチングするシェアサービスとなる。それぞれウェブサイトかアプリ(iOS、Android)で利用可能だ。
シニア向けから転換、若者に注目されるバンライフ
近年、バンライフ市場は拡大し、需要にも変化が起きている。「キャンピングカーの販売高は日本だけでなく、世界でも年間10%ほどで伸びています。ここ3、4年でInstagramにおける『#vanlife』の投稿が1000万件を超えるなど、もともとはシニア向けだったものが、より若者にフューチャーされるようになり、人気が出ているのです」と宮下氏は説明する。
実際にバンシェアの利用状況をみると、約95%がキャンピングカーを運転することが初めてで、20~30代の女性を含むグループが多いという。2021年8月の夏休み期間中、コロナ禍であっても密を避けることができ、手ぶらでキャンピングカーに乗って地方に旅ができると、予約数は前年比10倍増で推移し、売上高は過去最高となっているという。
また、特に注目を集めているのが、サウナテント付きのキャンピングカーだ。キャンピングカー利用のオプションとしてテントサウナを貸し出してみると、バンシェアにおける2021年6月の予約獲得数1位となった。「いわゆるサウナーが外でサウナをすることが流行っているようです。そもそもキャンピングカーの中に何が積んであるかといえば、オーナーさんの趣味のグッズです。それらも貸し出しをします。クルマとしての移動手段、滞在方法から、アクティビティまですべてトータルでユーザーが楽しめるよう工夫しているのです」と宮下氏。
平均的な料金は、バンシェアとカーステイを両方予約すると、1泊2日で5万円ほどとなる。宮下氏は「6人乗りのキャンピングカーであれば、キャンプなどで食材などを購入しても、1人当たり大体1万円から少し足が出る程度で過ごせるイメージです」と述べた。
また、バンシェアはキャンピングカーのオーナー側にもメリットがある。キャンピングカーを手に入れても、年間340~350日ほどは乗らず、遊休率が高い資産となっているという。オーナーは乗らないときに貸し出すことで、副収入としてはもちろん、キャンピングカーの維持費節約につながるのだ。
さらに旅好きが高じてキャンピングカーを購入するオーナーも多く「自慢のキャンピングカーをいろいろな人に魅力を味わって欲しい」「穴場のキャンプサイトまでキャンピングカーで旅をしたら絶対に楽しい」と、次世代に魅力を伝えられると積極的にサービスに登録しているという。
バンシェアの登録台数は現在160台ほどだが、オーナーとして登録している人は500人ほどいる。宮下氏は「まだ需要は流動的なので、すべてのクルマを登録してもらっても、実際に稼働するかはハッキリと言えません。なので、いま登録してもらっているクルマの稼働率が一定以上になれば、その都度登録する台数を増やしていく計画です。22年5月までには500台に増やしていきたい。また、カーステイの車中泊スポットは現在300カ所ほどですが、22年5月までには全国1000カ所まで増やしていく考えです」と説明した。
また、宮下氏は「我われはバンライフ市場の入り口を抑えています。初めて乗る人がバンライフそのものに興味を持ち、キャンピングカーを購入することも出てくるはずです。そこからバンシェアにオーナーとして登録し、どんどん稼いで欲しい。このライフタイムバリューを取りきることが重要になります」と話した。
キャンピングカーをカスタマイズする新たなプラットフォームも
「今後、バンライフを追求していくうえで、車内でいかに快適に滞在できるのかは、私たちの究極的な課題だと認識しています。一方で、この部分は自動車メーカーに依存する部分も多いので、私たちはプラスアルファの部分を担っていきたいと考えています」と宮下氏。
宮下氏は続けてこう語る。「住宅にはオーダーメイドやデザイナーズ物件など、ユーザーの好みを選ぶことができます。しかし、キャンピングカーはそこまでに至っていません。市場を眺めても、似ているキャンピングカーが売れている状況なのです。だからこそ、誰もが自分好みのキャンピングカーにカスタマイズできるようなプラットフォーム作りに挑戦したい」。
すでにCarstayは自動車会社との連携を進めているという。「キャンピングカー業界はDXされてきませんでした。板金屋など、クルマの2、3次市場のプライヤーが支えてきた市場ではありますが、デジタル化されてない問題が多いことも事実です。ここを我われがIT会社としてやり切れば、新たなプラットフォーム作りも夢ではありません。2025年ほどには完成させたいです」と宮下氏は展望を語った。
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