Google Cloudの新しいCEOであるトーマス・キュリアン氏は、入社後すぐに会社の見通しや現在の顧客が求めているものを知るために、数多くの打ち合わせを重ねてきた。それらの打ち合わせの包括的なテーマは常に似通っていた。彼はGoogleのCloud Nextカンファレンスでのインタビューで次のように語っている。「テクノロジーは気に入りました。素晴らしいものです。彼らもそれが最高のものだと考えています。しかし彼らはまたより多くの人がそれを採用することや、ビジネスの方法に対する改善を行うことを欲しているのです」。
ということで、これが現在のGoogle Cloudにおける最優先事項である。Oracleで22年を過ごしたあとGoogle Cloudに来たキュリアン氏は、チームが新しい契約を発表し、価格体系を簡素化する計画を立てていることを語った。だが最も重要なことは、Googleが目の色を変えて採用を行っているということだ。「多くのお客さまが私たちに『私たちを手助けしてくれる人をもっと増やしてくれ』とおっしゃっています。なので私たちは、それに力を注ぐつもりなのです」とキュリアン氏は語る。
私はキュリアン氏に、前任者たちがそうした点に関する取り組みで間違いを犯してきたと思うかと尋ねてみた。外交官が常にそうであるように、キュリアン氏はその問いに(当然ながら)「否」と答えた。「いいえ、それはあらゆる企業における単なる自然な進化だと思います。成長し、ビジネスを理解し、機会を見出していく過程での」と彼は語った。「もしそういう立場を目にしたときに、そこに参加できたら素晴らしいと思いませんか?つまりお客さまから『あっちに行って下さい』と言われるのではなく『もっと人を雇って助けて下さい』と言われるような立場です」。
企業たちは、Googleの技術を使いたいので、Googleに企業というものを把握して貰いたいと願っているのだ、とキュリアン氏は主張している。「なので、わたしたちはそれに取り組もうとしているのです」。
Google Cloudにおける前任者ダイアン・グリーン氏の在任期間について、彼が何を考えているにせよ、現在キュリアン氏は、間違いなく組織の再構築をしようとしている。だが、彼自身の哲学が前任者とどのように違うのかと尋ねたときには、彼は顧客の声を聞き顧客の望むものを提供することが全てだと強調した。そして、顧客が求めているのは、より多くの支援だけでなく、例えばより優れたコラボレーションツールや業界固有のソリューションなどである。
しかし後になって、彼はまた、Google Cloudが今後行うことはその強みを発揮することであるとも述べている。「私たちが差別化要因を強調し、マルチクラウドインフラストラクチャを強化していく様子をご覧にいれることになるでしょう」と彼は語り、この日ローンチされたAnthosを、同社が成し遂げられるもの、そして顧客からの要求に応えて開発されたものの例として強調した。「私たちはセキュリティの分野に取り組み、分析の分野にも取り組んできました。そして私たちはAIの領域にも取り組んで、たくさんのソリューションに対する投資を行ってきました。その理由は…それがお客さまが私たちに望んでいることだからです」と彼は付け加えた。
Googleが、そのプラットフォームにより多くの企業を呼び込むことに、真剣に注力していることは秘密ではない。だがそれは、Google Cloudがスタートアップ企業たちを気にかけていないという意味ではない。「私たちが『エンタープライズに注力している』と言うとき、それはデジタルネイティブやスタートアップなどの、零細勢力に対する注力を止めてしまうという意味ではありません」とキュリアン氏は語った。「歴史的に、これまで私たちのメッセージは常に『Googleは企業に焦点を当てているのではなく、デジタルネイティブに焦点を当てています』というものでした[…]しかしGoogleが企業を気にかけていない、という外部の認識は真実ではありません。そして、私たちが今、企業だけに焦点を合わせるつもりであるという認識も、また真実ではないのです」。
キュリアン氏は、最大手メディア企業10社のうち9社がGoogle Cloudを使用しているほか、最大手小売企業10社のうち7社や、上位企業10社のうち6社も、Google Cloudを使用していると主張している。「他のクラウドプロバイダーたちは、誰もGoogleを使用していないと信じさせようとするでしょうけれど、それは真実ではないのです」と彼は付け加えた。
他のクラウドプロバイダーについて言えば、Googleが他の競合相手、特にAWSと比較して、オープンソースに対して全く異なるアプローチを採用していることは注目に値する。これはキュリアン氏のリーダーシップの下でもGoogle Cloudの中で変わることはないものだろう。「最も重要なことは、最後に生き残るプラットフォームは、生態系を破壊するものではなく、活かすものであると私たちが考えていることです。私たちは心の底からそれを信じているのです」と彼は私に語った。「最後に勝ち残るプラットフォームは、生態系をシャットダウンするのではなく、常に育むものなのです。オープンソース企業に目を向けてみると、彼らはテクノロジーを構築し、開発者がそれを使用できるようにするために、懸命に働いていると思います」。
キュリアン氏は、インタビューの中で競合他社を直接攻撃するようなCEOではないものの、以下の発言ではそれにかなり近付いたと言えるだろう。「オープンソーステクノロジを支える会社を維持するためには、何らかの収益化手段が必要です。もしクラウドプロバイダーが彼らと競合してその収益化手段を奪ってしまったら、存在が難しくなり、オープンソースコミュニティを悪化させてしまいます」。
Google Cloudの将来については、キュリアン氏は安易な未来予想はしたくないようだ。その代わりに、彼が主張したのは、同社が顧客が望むものに注力し続ける限り(手始めは多くの従業員を雇ってGoogleとのビジネスをやりやすくすることだ)、顧客はより多くのクラウドテクノロジーをGoogleから買ってくれるだろうということだった。
画像クレジット: Michael Short/Bloomberg / Getty Images
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(翻訳:sako)