フランス発のスタートアップSpendeskは、設立から数ヶ月しか経っていないが、既にエンジン全開だ。25日(水)にクローズしたラウンドで220万ドル(200万ユーロ)の資金を調達し、リブランドを経た同社は、近々モバイルアプリのローンチと利用者全員へのコーポレートカードの発行を予定している。
もともとeFoundersの支援を受けていたSpendeskだが、ついに彼らの援助なしに独立してビジネスを展開する準備が整った。なお今回のラウンドには、Kima Ventures、Funders Club、エンジェル投資家のEdward Lando、Nicolas Steegmann、Frédéric Montagnonが参加していた。
さらに驚くべきことに、Spendeskのプロダクトを数ヶ月間利用した顧客企業のいくつかが同社への投資を決め、Birchbox、AB Tasty、La Belle Assiette、Tinycluesのファウンダーもラウンドに参加した。
Spendeskのゴールは極めてシンプルだ。前提として、フランスでは経費処理にとても手間がかかる。まず購入したもの全てに対して、ひとつひとつの商品が明記されたレシートが必要になる。2杯のコーヒーに3ユーロ使ったとしても、レシートの写真を撮らなければいけない。そのためほとんどの人は少額の費用は経費申請していない。
さらにフランスではコーポレートカードがアメリカほど普及していない。アメリカ企業であれば、取引銀行がほとんどの従業員に対してコーポレートカードを発行しているので、彼らは飛行機のチケットなどを購入する際に自分のお金を使わなくて済む。しかしフランスでは、一旦従業員が自分のクレジットカードで支払を行って、1、2ヶ月後に払い戻しを受けるという習慣が根付いているのだ。
また、経費処理は経理担当者や経理部の大きな悩みの種だ。彼らは大量のフォームを手書きで埋めて、いつもレシートを提出するよう依頼しなければならず、かなりの時間を無駄にしている。
Spendeskは上記のような問題を、包括的なエンタープライズ向け経費管理システムで解決しようとしている。システムのカバー範囲は、私が初めてSpendeskを取材したときから変わっていないが、個々の機能は以前に比べて進化した。
顧客はアカウントの作成後、Spendeskの口座に希望額を送金でき、そのお金はThe Bancorpが管理する口座内に安全に保管される。そして顧客はその口座から、各従業員にお金を振り分けることができるのだ。例えばある従業員は月1000ドルまで、別の従業員は月1万ドルまでといった具合だ。
すると従業員は、自分のクレジットカードを使わずに必要なものを購入できるようになる。オンラインで何か購入するときは、バーチャルMasterCardを使えばいいし、実店舗で何か購入するときはプラスチックのクレジットカードを使えばいい。
もしもチーム全員の航空券を購入しなければならないようなとき(自分の限度額を超える支払を行わなければならないとき)は、システム上で上司に決裁をお願いすれば通知が飛び、上司は内容を確認した後にSpendesk上で承認することができる。
既に一部の顧客はプラスチックのカードを使用しているが、今後Spendeskは利用者全員からのカード申請を受け付けるようになる。文字通り従業員全員分のコーポレートカードを発行することもできるのだ。
「これまで私たちはオンライン上での決済にフォーカスしてきましたが、そちらはとても上手くいっています」とSpendeskのファウンダー兼CEOのRodolphe Ardantは話す。「しかし交通費の精算で困っている人がまだいます」
モバイルアプリは近日中に公開予定で、レシートの管理にきっと役立つだろう。カードで支払を行うたびにユーザーは即座に通知を受け取り、その通知をスワイプしてレシートの写真をとれば、全て完了だ。そして全てのレシートのデータは、経理部がアクセスできるデータベース上にまとめられる。
従来のクレジットカードと現代的なウェブ・モバイルインターフェースを組み合わせることで、Spendeskはリアルタイムで経費情報をトラックできるサービスを生み出した。現在同社は毎週3000件ほどの決済を処理しており、フランス、ドイツ、イギリス、スペインに拠点を置く数百社がSpendeskを利用している。DeezerやWebedia、Hostmaker、DrivyもSpendeskのユーザーだ。
本日調達した資金のおかげで、Spendeskは他のヨーロッパ諸国へ進出する際に、(これまでとは違う規制やポリシーを持つ)新たな銀行とパートナーシップを結ばなくてもよくなった。
SpendeskはSaaSモデルを採用しており、利用料は企業のサイズに応じて従業員ひとり当たり8〜15ユーロに設定されている。そして従業員の数が多いほどひとり当たりの料金は低くなる。さらに利用料はSpendeskの口座から引かれるため、顧客は「料金を支払っている」という印象を受けない。
今後のSpendeskが力を入れるべき分野は既に想像がつく。例えば数ヶ月前に私が仕事で中国へ行ったときは、現金しか使えなかった。つまりSpendeskを導入していたとしても、従業員が一旦建て替えなければいけない場面はよくある。今後Spendeskがどのように建て替え費用の処理をプロダクトに組み込んでいくか見るのが楽しみだ。これが実現すれば、企業は今使っている経費精算システムに別れを告げられるかもしれない。
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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter)