甲板員が素晴らしいウェイターになることを知る ―― なぜそれが重要なのか

【編集部注】著者のTX Zhuoは、フィンテック、エンタープライズソフトウェア、マーケットプレイスに焦点を当てるFika Venturesのマネージングパートナーである。

HR技術におけるブレークスルーは、雇用主に対して、プロセスを強化し、最高の人材を引き付けるための改革ツールを与えるだけでなく、ジェンダー間の均等報酬や、ブラインド採用(blind hiring:人間の属性を見ずスキルだけで採用を行うこと)などの長年に渡る労働問題をも解決しつつある。また同時に、従業員に対しては、現在の職務をはるかに越えた職務シナリオのために必要な事前スキルセットを獲得し、自動タグ付けを行う新しい手段が提供される。現在および将来の従業員のニーズを、雇用主が提供できるものと照合するチャンスが与えられる。

1月には、Gartnerが、2018年における世界のIT支出の成長を、HR技術が促進すると予測している 。さて、この数ヶ月間というもの、状況をよりよく理解しようと努力していたため、私はこの先の展開に関してよく見通せる位置に立っていると考えている。私はHR分野の10人のリーダーに対してインタビューを行った、例えばそれはJan Fiegel(SideWalk Labs)、Parker Barille(元LinkedIn Product VP)、そしてCindy Cordon(Policy Genius)といった人びとだ。私が聞いた話を以下にお話しよう。

まずは基本的な点から

HR技術は巨大なスペースである

もちろん、そうなるだろう。とはいえ現在はそれほど大きなものではない。世界のHR技術産業は4000億ドルと見積もられているが、投資は経済の変化に敏感である。HR技術分野での投資案件数は2012年以来着実に増加している。以下のチャートに示すように2012年から2016年にかけては175%の成長である。しかし投資額のピークは2015年の26億ドルである。2016年には402件の案件が、約22億ドルの資金提供を受け、2017年におけるHR技術会社への投資金額は11億ドルに留まった

出典:CB Insights

より詳細に見ていくならば、現在HRに費やされている費用は、会社内の他のほとんどの機能に比べると小さいものである。例えば、世界のHRソフトウェア市場は、年平均成長率(CAGR)2.4%で成長し、2022年には92億ドルに達すると予測されているが、GartnerはCRMソフトウェアは2017年までに全世界で365億ドルに達すると予測している。

しかし、社会的圧力、データと効率に対する業界ニーズ、そして最高の人材を獲得するための競争の中で、HR技術に対するベンチャーのチャンスは徐々に増加するだろう。

福利厚生プラットフォームが次に必要とされる大物である

新しい従業員の世代が、福利厚生プラットフォームのエキサイティングなユースケースを推進している。企業は従業員たちに向けて創造的な特典を生み出している。例えば先進的なヘルスケアプランに「加えて」Robin CareLUCYのようなプラットフォームを提供するというものだ。こうしたプラットフォームは従業員とその家族向けのサービスで、その掲げるモットーは「共に育つ家族を愛することを助け、愛するキャリアを成長させることを助ける」というものである。

しかし、このようなプラットフォームは、景気後退による打撃を受けると、即座に切り捨てられる可能性がある。雇用者側には、これを単にミレニアム世代のためのエキゾチックな特典としてではなく、「必要不可欠な」従業員のニーズとしてこれを受け入れるために、マインドセットと判断基準の変革が求められている。とはいえ、私はこうしたプラットフォームに対しては楽観的であり、その成功を目にしたいと思っている。

HR福利厚生プラットフォームが景気後退の後には厄介になってしまうと結論付ける前に、やるべきことは残されている。BloombergのBNAのレポートによれば、人事部門の予算は、大不況以前には毎年4〜7%増えていたものの、2009年にはわずか2%で、やっと年4%程度の成長率に回復したところだ。付加価値の高いプラットフォームが新しい基準になることを後押しするためには、持続的な市場の成長が大切である。

変らず求められているもの

企業は依然として、より良い候補者評価ツールを求めている

LinkedInは、中堅から熟練者レベルの採用にのみ有効である。これに対して新卒者や若年ホワイトカラー労働者の場合、経験を売りにすることは難しいため、従来のようなレジュメを書かずに済ませることは難しい。こうしたことから、PortfoliumStrive Talentのような企業は、スキルを披露するための創造的な方法を提案し、伝統的な体験ベースのレジュメを否定しようとしている。HireVueは、文字通り候補者の顔を読み取って、誠実さとその受け応えの質を評価できる、ビデオベースのシステムを提供している。

VR(およびAR)によるHRは、没入感のある経験と効率性を兼ね備えており、今年この領域には既に大きな投資が行われている。採用応募者を評価するためのVR技術を開発したイスラエルのスタートアップActiViewは、Teddy Sagi Groupの主導するシリーズAラウンドで、650万ドルを調達した。AI採用技術を提供するAllyOは、1400万ドルの資金調達を行った

企業は使うべきソフトウェアを知りたい

HR技術の会社の数が増えるにつれて(このSilicon & SalsaによるHR技術の一覧表を見て欲しい)、企業たちは選択肢の過多に苦しんでいる。Salesforce AppExchangeのような、企業が最先端のソリューションを見つけるためのプラットフォームが、HR技術市場には欠けている。TechnologyAdviceはとりあえず良い試みだが、そのUIはフレンドリーでも直感的でもない。

クラス最高のアプリをただ選択するだけでなく、候補者の属性や将来の離職に関する予測精度を上げるために、複数のプラットフォーム間でのデータの同期が必要とされている。HR技術の分野をターゲットとしている企業は、プラットフォーム間でビッグデータ分析を可能にさせる、包括的なデータ記録システムが必要である。

HRスタッフは新しい従業員を募集するために時間を使い過ぎている

平均すると、米国ではインタビュープロセスにかかる日数は24日間に及ぶ。既存の従業員が候補者と調整しインタビューするのに費やす時間を短縮するためには自動化が鍵となる。そしてこの時間の掛かるタスクに対処することを狙うプラットフォームが存在している。

人材募集の分野は込み合っているが、特徴や利点を比較する実験は十分行われている。LearnUpのような企業は、企業が個々のインタビューをスケジュールし、準備をするのを手助けするだけでなく、プラットフォーム上にスキル向上のためのレッスンやジョブコーチングのためのリソースも加えている。これをさらに進めると、madeBOSのような企業登場する、この会社は小売業ならびにその関連業界における初級レベルの労働者たちに対して、自発的能力開発を提供することで、労働市場での流動性を高め、貴重なHRスタッフの時間を節約している。

ブルーカラー労働者の仕事にスキルマッチングをすることで、高いパフォーマンスが得られる

レストランがウェイター/ウェイトレス人材を募集するときには、多くの場合他のレストランで働いた経験のある人材を探す。小売業でも同様である。ファイナンスの世界では、過去の成績や経験が、将来の成績につながるものではないということに注意を払っている。そして時間給の従業員を雇う際に、過去の経歴に頼ることほど間違いを犯しやすいものはないのである。なぜなら肝心なスキルというものは、手早さ、良い対人スキル、(注文に対する)記憶力などだからである。

スキルセットのマッチングだけに目を向ければ、甲板員(船の掃除などの雑用をする係)も素晴らしいウェイターになるのだ。ロサンゼルスに拠点を置くTalyticaは、時間給人材管理の世界で、この重要な区別を理論的に行うことによって、認知能力、人格、強いキャリアへの関心、そして特定の仕事に対するスキルなどを評価する能力を誇っている。

ワークライフバランスへの見果てぬ夢を達成するために必要な、全てのサポートを従業員が手にしているような、素晴らしい世界を想像して欲しい。あるいは、候補者たちが、背景、性別または民族に対する偏見ではなく、スキルによって選別される世界を想像して欲しい。これらは、HR技術が全体的に提供することのできる利点のうちの2つに過ぎないが、なぜ甲板員が素晴らしいウェイターになる可能性があるのかを明らかにしてくれる。この業界を探究してみると、HR技術プラットフォームが、求人側と求職側から疑うこと無く必要とされているものを生み出す、確かな手段であることは明らかである。どの企業が魅力的な解を提示し、今シーズンのビジョナリー投資の対象を、業界の「新常識」にすることができるかは、まだ予断を許さない。

あなたはHR技術を新しく取り入れた起業家だろうか?もしそうなら是非私に連絡して色々教えて欲しい。

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(翻訳:sako)