ソーシャルアントレプレナーズアソシエーション(SEA)が運営するSEAソーシャルベンチャーファンドは5月16日、Cronoへのシード投資を発表した。金額は非公開。また今回の投資に併せて、SEA代表理事の荻原国啓氏がCronoの新取締役に就任する。
Cronoは、若年層向けの奨学金提供、および貸与型奨学金の返済を肩代わりする企業との人材マッチングサービス事業を計画している。同社によると近年、大学・専門学校に通う学生の約40%が貸与型奨学金を借入しており、数百万円の債務を抱えた状態で卒業。返済が困難にケースが増えているという。同社は、奨学生の生活圧迫や自己破産を防ぐだけでなく、債務が挑戦の障壁になっている問題を解決する。
具体的には、債務のために挑戦を諦めざるを得ない若年層の学生に対して、Cronoが奨学金を貸し付ける。学生が将来的に加盟企業に入社・勤続することで、貸し付けた奨学金の返済を企業が肩代わりする仕組み。
Cronoのサービスを利用する学生の応募資格としては、就職活動に近い年制大学の2、3年生もしくは大学院生など。もちろん、同社のサービスの「本気で挑戦する人を支援したい」という理念を理解していることが最低条件となる。この奨学金システムを立ち上げた背景には、同社のスタッフが学生時代に経済的な理由で留学できなかった経験が基になっているそうだ。将来的には、就活解禁によって各種ルールが取り払われたあと、大学1年生や高校生・中学生などに奨学金を提供する環境を作る考えもあるとのこと。
企業と奨学生のマッチングについては、オフラインとオンラインの両方がある。オフラインでは、奨学金をサポートする企業を集めた就職イベントなど開催。オンラインでは、企業側から学生側にオファー、学生側から企業への応募、Cronoシステム内で双方へレコメンドする仕組みなどを準備しているそうだ。
なお、Cronoの奨学金を受けている学生が就職後に離職した場合、奨学金はその学生自身が返済を続けることになる。加盟企業への入社によって債務が企業に移るわけではなく、あくまで肩代わり。ただし、転職先の企業がCronoの加盟企業であれば、奨学金の返済は引き続き企業側が請け負ってくれる。加盟企業は非公表だが、すでに約10社程度が賛同しているという。
なお、奨学金の返済方法は企業ごとにカスタマイズ可能にする予定とのこと。例えば20年間で完済の奨学金の場合、入社時に総額の半分を一括返済、10年後に残りの半分を一括返済とすることで、同じ企業に長く働いてもらうためのインセンティブにすることもできる。企業奨学金の提供条件として、加盟企業のインターンシップに参加することが条件になるケースも考えられるそうだ。
今後は、海外留学のプログラムを提供している機関やエンジニアスクール、資格取得専門学校とアライアンスを組み、経済面で諦めざるを得ない学生にCronoが資金面をサポートし、各スクールがコンテンツを提供する座組みも進めていく予定とのこと。