国防省、自動車を遠方から停止させるマイクロウェーブ兵器を開発中――自動車テロの抑制に期待

自動車がテロに使われる例は増え続けている。しかしアメリカ国防省が開発している自動車その他のエンジンをリモートで停止させるテクノロジーが実用化されれば多くの人命が救われることになるかもしれない。ペンタゴンのJNLWD(合同非致死性兵器開発)プログラムでは電波エンジンストッパーを開発中だ。これはDefense One の記事によれば、車両等を利用した民間人をターゲットとしたテロを防止することを目的としている。

車両を利用したテロなどの暴力行為や違法行為(たとえば許可を得ない車両がセキュリティー・ゲートを突破しようとするなど)を防止するため、JNLWDでは強力なマイクロウェーブを車両に照射し、エンジンをコントロールしている電子装置を無効化することで車両を停止させようと試みている。下のビデオでこのテクノロジーの実験を見ることができる。

Defense Oneによれば、 JNLWDは2つのバージョンを開発中だ。一つは有効距離が50メートルと短いがトラックの荷台に搭載できる程度の小型版で、もうひとつは有効距離100メール以上の大型据え置きタイプだ。この装置は繁華街やショッピングセンターなど人々が密集する公共スペースを自動車を利用したテロ行為から防衛するのに役立つと期待されている。

電波兵器は以前から開発されてきたが、電力消費量が膨大なことで知られており、マイクロウェーブをきわめて細いビームに収束させるテクノロジーにおけるブレークスルーのおかげでこれらの装置が可能になったという。

自動車を利用したテロはアフガニスタンやイラクなどの紛争地域以外ではほとんど発生していなかったが、最近では都市の中心部や観光客の集まるスポットなどが狙われる例が目立っている。先週はカナダのトロントで車両によるテロで10人が殺害されるという事件が起きた。

この例でも分かるように、自動車テロは実行が容易で不意を打たれた歩行者に多大の被害をもたらす。車両停止装置のようなデバイスが必要とされる事態は不幸だが、こうした電波エンジン・ストッパーが実用化されれば車両テロの抑制に効果があるはずだ。攻撃があったときすばやく遠方から車両を非致死的に停止させることができれば犠牲者の数を抑えるだけでなく、警察が犯人を無傷で逮捕し、情報を得るためにも役立つだろう。(トップ写真はニューヨークで起きた車両テロのもの)

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

アメリカ、ノートPC持ち込み禁止令を完全解除――イギリスは禁令維持

アメリカ政府は、各所で物議を醸したノートパソコンの持ち込み禁止令を、全ての空港・航空会社について完全に解除した。中東の一部の航空会社と空港が対象となっていたこの規制だが、国土安全保障省によれば、「十分なセキュリティ対策がとられた」ため解除を決めたとのこと。

今月に入ってから既に主要航空会社3社は対象から外されていたが、昨日(現地時間7月19日)深夜に残り全ての航空会社と空港に関しても禁令を解除すると当局がTwitter上で発表した。

十分なセキュリティ対策がとられたことを受けて、3月に施行された大型の携帯電子機器(PED)の持ち込み禁止令を、10空港・9航空会社について解除する。

今年3月の発令後は、すぐにドバイやアブダビ、ドーハといった中東10か所の主要ハブ空港と航空会社9社を対象に、アメリカ行きのフライトでノートパソコンやタブレット、電子リーダーといった大型の電子機器が機内に持ち込めなくなっていた。

そもそもの狙いは国家の安全保障で、禁令はテロ組織が電子機器に爆発物を隠して機内に持ち込もうとしているという情報に端を発したものだと言われていた。

しかし、施行のタイミングや対象となった航空会社・空港に関しては疑問が残り、アメリカの航空会社が対象に含まれていなかったことから、自国の経済を守る狙いがあったのではと考える人もいた。禁令によって利用客にはかなりの不都合が生じ、特にビジネス客への影響は大きかった(その結果、対象となった中東の航空会社にも悪影響が及んだと考えるのが普通だろう)。

しかもトランプ大統領は、大きな議論を呼んだイスラム圏の主要7か国からアメリカへの渡航禁止に加え、同地域の企業を対象にした大統領令にも署名していたことから、ノートパソコンの持ち込み禁止にはアンチムスリム思想が関係しているのではないかとも疑われていた。

その一方で、今年の3月以降、イギリスもアメリカに続いて中東や北アフリカの一部の国からの直行便を対象に、(対象となる航空会社はアメリカとは若干違うものの)ノートパソコンの機内持ち込みを禁じている。

本件に関してイギリスの運輸省に確認をとったところ、同国では禁令に変更はないとのことだった。

「誤解のないように言うと、イギリス政府が3月に施行した規制は今でも有効だ」と運輸省の広報担当者は語る。

外交筋からの情報として、イギリスの禁令もトルコ発の便に関しては近いうちに解除されるとトルコ現地の報道機関は報じているが、同担当者は「噂や憶測」にはコメントしないと語った。

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(翻訳:Atsushi Yukutake

通過するだけでチェック完了のボディースキャナー―、開発元のEvolvが1800万ドルを調達

商業施設を運営する企業は、アメリカ運輸保安庁ほどの資金を持っていないながらも、テロや銃撃事件が増加する中、人の安全を守るための手段を模索している。Evolv Technology Inc.と呼ばれるスタートアップは、そのような資金に限りのある企業でも、手作業による身体検査ではなく、最新鋭のテクノロジーを使って事件を未然に防げるようなプロダクトを開発している。この度同社は、1800万ドルを調達したと発表した。

なお今回のラウンドには、General CatalystLux Capital、Gates Ventures、Data Collectiveらが参加していた。

マサチューセッツ州ウォルサムに拠点を置くEvolvは、物理的なセキュリティチェックのためのソフトウェアとハードウェアを開発している。同社のEvolv Edgeシステムは、8フィート(約150cm)ほどの高さのセキュリティゲートで、ゲートを通過する人を高速でスキャンできるため、対象者は立ち止まったり、ゆっくり歩いたりする必要がない。同社が独自に開発した、ミリ波画像認識センサーを搭載したシステムは”異物”を検知し、爆弾や銃器などが施設に持ち込まれるのを防ぐことができる。

Evolv Edgeは、基本的に空港にあるボディスキャナーのような機能を備えているが、動作スピードは空港のボディスキャナーを大きく上回り、1時間あたり600人をチェックできると同社は話す。

さらにEvolvのシステムは、カメラや顔認識ソフトとも併用できるので、施設に入って来た人を関連データベースと照合し、もしもその人が施設への立ち入りを禁じられていたり、過去に凶悪犯罪に関わっていたりすれば、システムがアラートを発し、警備員がその人を詳しく検査できるようになっている。

CEOのMichael Ellonbogenは、「安全を守るために、私たちは物理的セキュリティに関する認識を根底から変え、生活の中にセキュリティ設備を埋め込んでいかなければいけないと私は考えています。私たちが日頃訪れるような場所でランダムに発生する暴力的な事件を許容しながら、安全を確保することなど不可能です。一方で、市民の安全を守るためとはいえ、何千人もの警官や軍隊を送り出して、世界中の観光地など人が集まる建物や商業施設の入り口を全て封鎖するような事態も受け入れられません」と話す。

Evolvは既に、スポーツ施設やエンターテイメント施設、交通のハブとなる場所やその他の商業施設を運営する企業を顧客に抱えているが、各施設の名前を明かすことはできないとEllonbogenは付け加える。

Evolvの株主であるLux CapitalのBilal Zuberiは、同社の顧問委員会や実務にあたっている社員が持つ、セキュリティ関連の専門知識を評価している。顧問の中には、国土安全保障省やニューヨーク市警、FBI、運輸保安庁といった組織で指導的役割を担っていた人も含まれているのだ。なおEvolvの投資家は、同社が今回の調達資金を、人員の増強や顧客ベースの拡大、研究開発などに使うことを期待している。

「残念なトレンドではありますが、物理的セキュリティは各地で起きる事件の深刻化と共に、進化を続けているため、テクノロジーを使ってセキュリティ上の問題を解決しようとしている企業が活躍する余地はまだあります。Evolvは独自に開発したセンサーや機械学習、AIといったテクノロジーを利用し、私たちの周囲で実際に何が起きているのか、そして身の回りにいるべきではない人がいないか、というのを解明しようとしています。彼らのゴールは、私たちの日常生活を妨げることなく、かつ誤報を起こさず、日常生活に潜む脅威を早期発見することです。将来的には、Evolvのゲートを通るだけで安心できるようになるでしょう」とZuebriは語る。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter