スマートニュースは2月26日、ディヴィデュアルの同社への参画を発表した。ディヴィデュアルは、2008年4月にメディアアーティストで代表取締役の遠藤拓己氏と、情報学研究者で取締役/共同創業者のドミニク・チェン氏によって設立された会社だ。創業時にはMITメディアラボ所長の伊藤穰一氏らからエンジェル投資を受け、メディアやコミュニケーションアプリ、ゲームなどさまざまなプロダクトを生み出してきた。買収のスキームや買収額については非公開としている。ディヴィデュアルは登記上存続し、現在提供している事業も継続していくという。
凹んだ経験を書き込むと誰かが慰めてくれる「リグレト」については、TechCrunch Japan 東京Camp 2009にもデモ出展していたから、読者の中には覚えている人もいるかもしれない(残念ながら,サービスは2017年1月に終了してしまったのだが)。それから、タイピングの行為そのものを時間軸も含めて記録し、後から再生できる「TypeTrace」なんかも印象的なソフトウェアだ。
“Lie” (inspired by Saskia Olde Wolbers) [TypeTrace] from dominick chen on Vimeo.
その後フォトメッセンジャーの「Picsee」、コミュニティの「Syncle」といったアプリを展開。現在はリズムゲームの「Steps!」、養蜂シミュレーションゲームの「Honeybee Planet」の開発・運営を行っている。正直終了したサービスも多いのだが、リグレトをはじめとして、シンプルなデザインの中に、強い思想を持ったプロダクトを生み出してきた印象も強い。
前述のとおりディヴィデュアルは今後も既存事業を継続していくが、すでに同社のメンバー3人は、スマートニュースのプロダクト開発にコミットしていくという。具体的には今後はニュースアプリの「SmartNews」上に新機能を提供していくことになるようだ。
スマートニュース代表取締役会長 共同CEOの鈴木健氏は、ディヴィデュアルの参画について、下記の通りコメントしている。
「ぼくが尊敬する世界最高のクリエーター集団がスマートニュースの仲間として参画していただくことになり、とてもうれしく思っています。TypeTraceが紡ぎ出す打感の息づかい、リグレトが露わにした人類の優しさの可能性。彼らが生み出してきた奇跡のようなサービス達は、インターネットの歴史にその名が刻まれるだけではなく、形を変え、姿を変え、スマートニュースを『いきるためのメディア』という新たな次元へと進化させてくれることでしょう。ミトコンドリアが細胞を進化させ、腸内細菌がヒトと共生体であるように、スマートニュースはこれからも異なるDNAを取り込み、多様性を拡張していきます。当社は、dividualという思想と実装の散種に協力できることを、大変誇りに感じております」
また、ディヴィデュアルの遠藤氏は、鈴木氏との出会いから参画に至るまでの心境について、次のように述べている。
「フランスに住んでいた2004年当時、Google検索で鈴木健さんとPICSYの存在を知り、同世代の日本人にこんなユニークな人がいるのかと大変驚いたことを覚えています。翌年東京で出会い、その後次第に肝胆相照らす友人となり、ディヴィデュアル創業の際にも大きく背中を押してもらいました。
2017年の初夏にその健さんからスマートニュースへの参画についてお誘いを頂き、人の世の縁を感じ、今回の決断に至りました。今後はディヴィデュアルでの10年で得られた経験を活かし、世界がこれからも多様性とセレンディピティに満ち溢れた場所であり続けるよう、スマートニュースの一員としてその使命を果たしていければと気持ちを新たにしています」
なおスマートニュースでは、3月中にももう1社スタートアップのグループ化する予定。今後はその他のスタートアップについても買収等の検討を進めるとしている。