どんな植物原料からでもビールを醸造できる技術を開発、Province Brandsが1.7億円を調達

ビール業界には気象に関連した危機が潜んでいるが、Province Brands(プロビンス・ブランズ)という会社は、それを解決すると主張するテクノロジーを掲げ、先ごろ160万ドル(1億7000万円)を調達した。

カナダ拠点の同社は、ビールをあらゆる植物原料から作る方法を開発し、全地球気候変動により拡大する大麦そのほかの穀物の不足のソリューションになると自らを称している。

同社にとってこれはピボットだ。設立当時は自社の技術を大麻からビールを醸造する方法として大麻会社に売り込んでいた。しかし、大麻市場が底割れし始めたのを機に、Province Brandsは醸造業界全体へと訴求対象を広げた。

「大麻産業は長年過大評価されてきた」とProvince Brandsの共同創業者であるDooma Wendschuh(ドーマ・ヴェンドシュー)氏は話す。「2019年中頃からそれが崩壊しはじめた。大麻巨大な資本を要する産業であり、必要な設備を整えるためには途方も無い金額の投資が必要だ」

市場が大麻産業に関心を示さなくなると、Provinceは投資家のところに出向いて、220万カナダドル(約1.7億円)を転換社債で調達した。

「投資家には避けうる損はさせたくなかった」とヴェンドシュー氏は説明する。

Province Brandsの直近のラウンドは2019年のシリーズBで、500万カナダドル(約4億円)を7000万カナダドルの入金前評価額で調達したと同社は表明している。

「このラウンドを完了したことで、Province Brandsの技術、知的財産権、市場機会の魅力が一気に注目されるようになった」と同氏は言った。

既存の機関投資家とエンジェルから得た資金は、同社のテクノロジーをもっと広く売り込むために使われる。大麦などの主要原料の値上げに打撃を受けているビール会社は、Province Brandsの技術を使って自社ブランドの大麻ビールを市場に出すことができるようになる。

同社のCambridge Bay Canadian Hemp Lager(ケンブリッジベイ・カナディアン大麻ビール)は、大麻から作られた初めてのビールであると、Province Brandsの声明に書かれている。原料は大麻とホップ、水、酵母だけで、THC(テトラヒドロカンナビノール)やCBD(セルロース結合ドメイン)を含んでいないため、アルコールが売られている場所であればどこででも合法的に売ることができる、と同社は言っている。

「我々が大麻からビールを醸造する技術を開発したことによって、あらゆる非デンプン性植物原料からビールを醸造できるようになる」と同氏。「これは、天井知らずの大麦価格に悩むビール会社に変革を起こさせる可能性をもっている」と続ける。

また、「大麦は大規模なビール製造には高価過ぎる場合がある」とも指摘する。

「調達した資金は、当社が12万3000平方フィート(1万1400平方m)の醸造設備建設のフェーズ1を完了し、カナダ保健省から新規の認可を受けるために使用する」とProvince Brandsの共同創業者であるJennifer Thomas(ジェニファー・トーマス)氏は語る。同社はカナダ保健省から2019年に研究開発ライセンスを受けている。

既にProvince Brandsは、いくつかの大手酒造会社と共同で、保有原料から代替ビールを作ろうとしている。ある匿名のテキーラメーカーとは、(テキーラの原料である)竜舌蘭(リュウゼツラン)から作るビールを共同開発している。

資本市場が困難なこの時期に、2カ月以内に資金調達を完了したことは注目に値する。

画像クレジット:Cavan Images / Getty Images

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook