【編集部注】執筆者のJake Brightはニューヨーク在住のライター兼作家で『The Next Africa』の共著者。
オーディエンスが見守る中、アフリカ発のスタートアップが資金調達を目指してベンチャーキャピタリストにプレゼンする。
これが『Face The Gorillas』の内容だ。ルワンダで年に数回開催されているこのピッチイベントは、現地のテレビやYouTubeで放送されており、他のイベント内で開催されることもある。
Faces The Gorillasは、2013年にYariv Cohen・Angela Homsi夫妻の手によって誕生した。ふたりは、社会的投資活動を行うKaenaatやIgnite Power Solarイニシアチブでの仕事を通じて、ルワンダのテックシーンと関わるようになった。
「私たちはICTセクターの支援をしようと、スタートアップ投資に興味がある人たちを集めたイベントを開催しており、それが番組化したものがFace The Gorillasなんです」とCohenはキガリ(Kigali)のオフィスの中で語った。「そもそもの目的は、ルワンダのスタートアップにビジネスの世界で通用するプレゼンのやり方を教えること、そして彼らに投資家が何を求めているのか理解してもらうことでした」
その後、ルワンダのICT商工会議所やkLabのような団体とパートナーシップを結んだこともあり、Face The Gorillasはシリーズ化して年に数回開催されることになった。2013年のローンチからこれまでに8回行われたイベントでは、8社のスタートアップが資金調達に成功し、3社が失敗に終わったとCohenは話す。投資額はアクセラレーターのようなパートナーシップを含み、最高で20万ドルに設定されている。
2015年には、大学生くらいの年齢のPatrick Muhire・Cedrick Muhoza兄弟によって設立されたルワンダ発のフィンテック企業VugaPayが、10%の株式と引換えに2人のVCからメンターシップと2万ドルの資金を獲得した。このイベントで名が広まった同社は、その後シリコンバレーの投資家Tim Draperからも投資を受けることになる。
Cohenによれば、Face The Gorillasではアフリカ大陸のルワンダ以外の国々からも参加を受け付けているという。彼らはイベントの場所と日時が決まり次第「アフリカ中のICTハブに募集要項を送付し、応募企業の中から資金を調達できそうなレベルの企業を選んで、トレーニングを実施してから本番にのぞみます」と彼は話す。
その場で投資契約をまとめるという番組のつくりは、アメリカの『Shark Tank」(日本版注:「マネーの虎」のアメリカ版)と似ているが、両者の間にはいくつか大きな違いがある。まず、Face The Gorillasに参加できるのはテックスタートアップのみだ。さらに、彼らは投資家と企業間の建設的な関係の構築を目指しており、Cohenも「私たちのイベントでは、投資だけでなくスタートアップの支援や教育に重きをおいているVCを”ゴリラ”として選ぶようにしています」と語っている。「直近で行われた3つのイベントでは、オーディエンスからの投資もありました」と彼は続ける。
中でも、ルワンダのTransform Africa Summit内で行われるイベントには注目が集まっている。今年の5月に行われたイベントでは、VugaTVを立ち上げたInes Muhozaのような若いファウンダーが、Cohenと投資家の前で5分間のプレゼンを行い、その後実際の投資に関する質疑応答が行われた。VugaTV CEOのMuhozaは、資金を調達することができなかったものの、Face The Gorillasに参加してよかったと感じており、「イベントに参加したことで、投資家を説得する上で何が重要かというのがわかったので、次は資金を調達できるように頑張ります」と語った。
そのとき会場にいた投資家のひとりであるEugene Nyagaheneは、Muhozaに対してビジネスの相談にのることを提案した。Nyagaheneはルワンダのメディア界の重鎮で、50万ドルのファンドの運用も行う実業家だ。”ゴリラ”のひとりとして、「まず起業家のビジネスに対する情熱を見て、それから数字に目を向けます。このふたつが揃っていないと私は投資しません」と彼は語る。
そのふたつが揃った企業が同じイベントに登場した。Ibaze Groupと呼ばれるこの太陽光発電スタートアップは、18%の株式と引換えにNyagaheneを含む複数の投資家が共同で出資した3万5000ドルを獲得し、プレゼン終了後にはオーディエンスから大きな拍手が送られていた。
Face The Gorillaは今後アフリカ中に活動の幅を広げていくのだろうか? 「そういった要望は既に受けていて、現在検討中です」とイベントのプロデューサー兼投資家でもあるYariv Cohenは語った。「もしも他の国に進出するとしても、教育というテーマ、そして投資家ではなく起業家にフォーカスしたスタイルは変えたくありません」
次のFace The Gorillasは2017年の第四四半期中に行われる予定だ。参加を希望するアフリカのスタートアップはkLabのウェブサイトでイベントの詳細や申請に関する情報を確認できる。
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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter)