米国における出会い系アプリの利用は上昇中であり、それに起因する問題も増加している。Pew Research Center(ピュー・リサーチセンター)が米国時間2月6日発表した最新レポートによると、米国成人の30%が出会い系アプリまたはウェブサイトを使ったことがある。2013年のわずか11%から急増した。そして米国成人の12%がオンライン出会いを通じて長期間の関係をもったことがある。さらに、ユーザーの大半はオンラインの出会いを良い体験だったと答えている。しかし、特定の分野を掘り下げてみると、ハラスメントに関する深刻な問題が浮かび上がってくる。
調査によると、オンライン出会いユーザーの37%が、自分は興味がないと言った後も出会った相手が引き続き連絡してきたと回答し、35%が露骨なメッセージや画像を送られ、28%が汚い言葉を浴びせられた。割合は少ないものの(9%)、身体的危害を受けた人もいた。
全体的に、こうした数値は女性の方が男性よりもずっと大きかったとレポートには書かれている。
具体的には、オンライン出会いを利用している女性の48%が、「ノー」と言った後も連絡され続けたことがあると答えた。46%は不快な画像を送られ、33%が汚い言葉をかけられ、11%が身体的脅威を受けた。
若い女性では数値はさらに大きくなる。18~34歳の女性でオンライン出会い系サービスを使っている10人中6人が、興味がないと伝えたあともしつこく連絡をしてこられたと答え、57%が不快な画像を送られ、44%が汚い言葉をかけられ、19%が身体的脅威を受けた。
若年層は、高齢者と比べて出会い系アプリやウェブサイトを多く使う傾向にある。これには複数の要因があると考えられる。若い世代は新しいテクノロジーを使うことに抵抗がなく、多くの高齢ユーザーは最終的に長期的関係をもったために出会い系アプリをやめるという事実がある。
ピューリサーチによると、LGBの人々は、異性愛者より出会い系アプリやうウェブを使ったことがある割合が2倍近く、それぞれ55%と28%だった。
もう1つ、このレポートの興味深い調査結果は、オンライン出会いの成功率だ。出会い系市場のリーダーであるTinderは、若年層の取り込みに最近力を入れており、「シングル」ライフスタイルを目指すユーザーをターゲットにしている。オンラインでの出会いはカジュアルなもの、結婚は何年も先、という人々だ。米国で最大かつ最も成功している出会い系プラットフォームとして2019年に12億ドル(約1318億円)を売り上げたTinderには、業界のトレンドを動かす力がある。
それに関して、米国成人の30%がオンライン出会い系を使ったことがある一方で、信頼ある関係にいたったのは出会い系ユーザーの39%にあたる米国成人の12%にすぎない。ここでも、2013年の出会い系利用者が11%、長期的関係にいたったのがわずか3%という数字よりはずっと大きい。
「2013年の調査と今回とではいくつか異なる点があるが、利用者が増え、成功率が高くなっているという全体傾向に間違いはない」とピューリサーチは説明する。
オンライン出会いにまつわる数々の問題をよそに、良い体験と答えた人(57%)の方が悪い体験(42%)よりも多い。ただし全体的にみると、アプリやサイトが米国における出会いと関係に与える影響に関ついて、人々は複雑な感情を抱いているとピューリサーチは見ている。例えば、米国人の半分が出会い系アプリは良い影響も悪い影響も与えていないと答えている。
しかし、現在出会い系アプリを使っているユーザーに、アプリの印象を尋ねたところ、期待よりも失望(45%)、楽観より悲観(35%)、安心より不安(25%)を感じていると答えた。ちなみにこれは、会いたかった魅力的な相手を簡単に見つけられるなどの好意的回答をしたのと同じ人たちだ。
また、米国成人の半数近く(46%)が、アプリやサイト経由で人と出会うことは安全ではないと考えている。そう感じている女性(53%)の方が男性(39%)よりも多い。この数値は、女性の方がアプリによるハラスメントの標的になりやすいことと相関している可能性が高い。
レポートはほかにも、出会い系アプリの利用やユーザーの感情を、地域・年齢層、教育水準別に分析しているほか、ユーザーの意見も紹介している。
全体的に見て、さまざまな結果が入り混じっている。概してユーザーはオンライン出会いに満足している。多くの人が相手候補を簡単に見つけられると考えているが、必ずしも安全ではないと思っている。ユーザーは、ハラスメントを受けることをオンライン出会い体験の一部としてある程度受け入れているようだ。これは多くの人が、ハラスメントを受けているにもかかわらず、オンライン出会い全体について好印象をもっていることから推測できる。
本調査は、オンライン出会いプラットフォームの浅薄さも指摘しているようで、いかに写真が重要(71%が非常に重要と答えた)であるかを挙げた。これは人との相性を決める価値として、趣味や関心事(同36%)、宗教(同25%)、政治(同14%)、さらには相手がどんな関係を望んでいるか(同63%)さえも上回っている。
大半の人々は、出会い系アプリには嘘つきや騙そうとしている人でいっぱいだと信じており(それぞれ71%と50%)、出会い系サイトやアプリでそうした行為が頻繁に起きていると思っている。
最後に、オンライン出会いに成功した人は、そうでない人よりもアプリやサイトに好印象を持っているようであり、これはオフラインでも同じことだ。
ピューリサーチの調査は2019年10月16日から28日にかけて実施され、4860人の回答を得た。レポート全文を読むことができる。
画像クレジット:Leon Neal / Getty Images
[原文へ]
(翻訳:Nob Takahashi / facebook )