何百万人もの人にとって、Facebookはインターネットの全てだ。しかしFacebookを使ってニュースや物事への見解を得ようとしている人の多くは、Facebook上でも検閲が行われているということに気付いていないかもしれない。
タイではそのような状況が明らかになりつつあり、どうやら政府の要請に応じてFacebookが数多くのユーザーの投稿をブロックしているようなのだ。タイの不敬罪は王族の批判を禁じており、この法律がジャーナリストのAndrew MacGregor Marshallをはじめとした、王位継承問題に関する投稿を行っている著名ユーザーの投稿内容を封じ込めるのに利用されているようだ。以前はロイター通信の特派員を務め、現在はEdinburgh Napier Universityで教鞭をとるMacGregor Marshallは、タイ当局からは既によく知られた存在だ。彼が2014年に発表したタイ王室に関する本は、発売禁止となり「国歌の安全そして平和で規律ある社会を脅かすもの」との烙印をおされてしまっていた。
TechCrunchでは、MacGregor Marshallの主張通り、彼の投稿のうち少なくともひとつがタイ国内では読めなくなっている一方、国外では問題なく読めることを情報筋を通して確認した。Marshall McGregorのプロフィールや、残りの投稿内容はタイ国内でも問題なく表示されている。問題となっている投稿は12月末のもので、いつ頃ブロックされてたのかはハッキリしないが、今週再度投稿された内容は本記事の執筆時点ではタイ国内でも読むことができる。
Facebookは本件に関してコメントを拒否している。
Facebookがタイの法律に則った対応をとったのは今回が初めてではない。同社が公開しているデータからも、2016年の上半期に10個のコンテンツがタイでブロックされていることがわかっている。なお、下半期のプライバシーレポートも近日中に公開される予定だ。
世界中の自由に関する問題をモニタリングしているアメリカのシンクタンクFreedom Houseが発行した2016年のレポートでは、タイのインターネットとメディアは「自由ではない(not free)」とされている。実際にタイの軍事政権は2015年のクーデター(クーデター中Facebookは30分間ブロックされていた)で実権を握って以降、オンライン上での批判を封じ込め続けている。
「軍事政権が検閲や監視の権利を成文化しようとする中、タイのインターネットの自由度は2016年中に低下しました」とFreedom Houseはレポートに記載している。
国民の尊敬を集めていたBhumibol Adulyadej前国王が昨年10月に崩御し、息子のMaha Vajiralongkorn新国王が王位を継承すると状況は激化した。先月にも、新国王に関するBBCの記事を受けて、タイ当局が首都バンコクにある同社のオフィスを訪れたばかりだ。
Facebookは最近偽ニュースの対処に失敗し、特にアメリカ大統領選ではこれが大きな問題となっていた。さらにベトナム戦争中にナパーム弾の爆撃から逃げる少女の様子をとらえた写真をブロックするなど、いくつもの検閲に関する事件が明るみになり、Facebookがメディアとしての責任と影響力を果たせていないことが話題になっている。
しかし今回のケースに関して言えば、タイの不敬罪に従うということはFacebookの意図的な判断である。CEOのMark Zuckerbergは、中国など言論の自由が制限されている国では妥協も必要だと話している一方で、「世界をつなぐ」というビジョンのもと同社を率いており、Facebook上のコメントや、単にメッセージを受け取ったことを理由に逮捕者がでているようなタイの法律に追従するというのは、そのビジョンに沿ったアクションだとは言い難い。
さらに、Facebookはタイ最大のプラットフォームだが、検閲の対象となっているのは彼らだけではない。タイ政府はこれまでにもYoutubeやDaily Mail、チャットアプリのLINEといったオンラインプラットフォーム上のコンテンツに対して法的な処置をとっているほか、タイに2000万人以上のユーザーがいるLINE上の会話を監視することができると主張する大臣までいる。なおニューヨーク証券取引所に上場している日本企業のLINEは、この話を事実無根だと否定している。
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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter)