Stripeが日本で正式ローンチ、三井住友カードが資本参加を発表

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アプリやオンラインのショッピングサイトに数行のコードを加えるだけでオンライン決済機能を導入できるStripeが、アジアに攻勢をかけている。2週間前のシンガポールでのローンチを皮切りに、Stripeがついに日本でも正式にローンチする。それに併せ、同社への新しい出資者も発表された。日本国内最大のクレジットカード会社、三井住友カード株式会社がStripeに資本参加するのだ。

三井住友カードからの出資金額は非公開ではあるものの、今回の出資は戦略的な意義を持つ。2015年5月に日本でベータ版公開して以来、Stripeと三井住友カードはパートナーであり続けてきた。

日本で初めてVisaとパートナーシップを結んだという経歴をもつ三井住友カードは(VisaはStripeの出資者でもある)、Stripeの正式版の発表を全面的にバックアップしている。三井住友カードの協力により、日本のStripeではマルチカレンシー対応が実現したのだ。これにより、日本の事業者が自社の製品を世界130ヵ国の通貨で販売することが可能となった。日本円での販売のみに制限されている現行のバージョンを考えれば、これは大きな進歩だと言えるだろう。

(単純な計算による推測ではあるが、今回の出資金額は少なくとも1000万ドル規模であり、前回のラウンド以降、継続的に出資が行われていたと考えられる。Crunchbaseに掲載されているStripeの合計調達金額は2億9000万ドルであり、Stripeが今回のローンチに併せて発表したプレスリリースには「これまでで合計約3億ドルを調達」したとある。同社のバリュエーションは50億ドルで、この数字は2015年7月に行われた前回の資金調達時と変わらない)

これまでのベータ版を公開してきたこともあり、Stripeは正式ローンチに先駆けて日本でも相当数の顧客をすでに獲得している。全日本航空、Eコマース・プラットフォームのBUYMA、イベントアプリのPeatix、SumartHRなどがその例だ。Stripeの発表によれば、世界全体の顧客数は10万社にものぼり、マーケットプレイスのGoFundMe、オンデマンドのモバイルファースト・ビジネスであるLyftやInstacartなどもStripeの顧客企業だ。

Stripeの料金体系は1回の取引につき3.6%の手数料報酬型だ。この手数料率は他の国とほぼ変わらない。API自体は無料で提供されている。

慎重に動き、築き上げる

今回の日本への進出により、Stripeは世界25ヵ国でビジネスを展開することになる。また、日本でのローンチ発表の翌日には、同社にとって26ヵ国目となるスペインでのローンチも発表されている。Stripeはすでにグローバル企業ではあるが、今回発表された日本進出はいくつかの点において重要な意味をもつ。その一つに、Stripeにとって日本市場は攻略すべき巨大市場だという理由がある。(中国に次いで)アジア第2の市場規模を持ち、GDPの規模という点で考えても日本は世界有数の巨大市場だ。

すでに日本市場には楽天PayPalなど、オンライン決済事業を手掛ける企業が数多く存在している(楽天はStripeの競合企業の一つであるWePayにも出資している)。しかし、マルチカレンシー対応のオンライン決済機能(日本円だけではなく130ヵ国以上の通貨で取引が可能)はStripeが日本初だと同社は話している。

従来では、日本企業が日本円以外の通貨を取り扱う場合には個別の銀行口座や事業体を組織する必要があった。その理由の一つとして、日本でのStripeのビジネスを指揮するDaniel Hehhernanは
「日本の金融インフラは他国とはまったくの別物であり、そのことが日本企業のグローバル展開を難しくさせています」と話している。

「この数十年間、日本はテクノロジー発展の中心地として機能してきました。しかし、世界全体の経済にまでビジネスを展開させられたのは、ほんの一握りの企業だけでした」とStripeの共同創業者兼CEOのPatrick Collisonは語る。「Stripeが目指すのは、日本企業がもつクリエイティビティと野心を世界に送り出す手助けをすることなのです」。

Stripeの新サービスでは詐欺防止機能が加わるなど、セキュリティが強化されている。また、その他の国での例と同じく、ベーシックなオンライン決済機能だけでなく、より大きな金融エコシステムを構築することで利益率を高める方針だ。

その例として、会計サービス、請求書管理サービス、セキュリティ、PCIコンプライアンス、そしてApple PayやAndroid Payなどのサードパーティ・サービスへのアクセスなどが挙げられる(Stripeが先月開始したInstant Payoutsなど、サービスの中には現状アメリカ国内での利用に限られているものもある)。

Stripeが日本にオフィスを構えたのは2014年6月だ。それにもかかわらず、正式ローンチまでにこれ程までの時間がかかった理由をHeffernanに聞いてみた。

「Stripeは世界各国でまったく同じサービスを展開するのではなく、それぞれの新しい市場を深く観察しようとしています。時間をかけて市場が持つニュアンスをさぐり、その国ならではのニーズや問題点を理解しようと努めるのです」と彼は語る。「そうすることで切迫したニーズに応えることができ、そのマーケットにとってベストなサービスを提供することが可能になります」。

Stripeをマルチカレンシーに対応させるためにも相当な労力が必要だったようだ。

「マルチカレンシーは日本市場向けにゼロから構築してきた機能です。これを実現させるためには相当な時間と労力をかける必要がありました」とHeffernanは話す。「マルチカレンシー対応の決済サービスは日本初の試みであり、これを日本で実現させたいと思ったのです」。

つい先日、三井住友グループがフィンテック分野のスタートアップへの出資に関心があると報じられたばかりだということを考えると、三井住友カードのStripeへの資本参加はとても興味深いニュースだ(言い換えれば、フィンテックへの資本参加はこれが最後ではないかもしれないということだ)。

日本市場の状況として、2016年以前はフィンテック企業への出資機会は少なかったことが挙げられる。その理由は日本金融市場の規制が厳しいこと、そして東京で起きたマウントゴックスの破綻をきかっけに、新しい金融モデルに対する視線が厳しくなったことが考えられる。

そのため、かのStripeへの出資に際しても、ある程度の調査は行われたようだ。「私たちはFacebookやTwitter、Kickstarterなど、洗練された世界レベルのテクノロジー企業を観察しました。すると、それらの企業すべてが決済処理のためにStripeのサービスを利用していることを知ったのです」と三井住友カード社長の島田秀男氏は話す。「Stripeは日本のビジネスに新しい金融技術インフラをもたらす企業であり、彼らの手助けができることを嬉しく思います」。

次のステップとして、いまだベータ版の公開に留まっている香港市場がある。Heffernanは、(現在同社がサポートしている)東南アジア各国ではStripeに対する注目度は高いと話し、東南アジア市場におけるStripeのビジネスは「まだ初期段階」だとも話している。「今後数カ月というタームでは、アジア市場はStripeにとって最重要項目であり続けるでしょう」。

Stripeへの出資者には三井住友カードの他にも、Sequoia Capital、Kleiner Perkins Caufield & Byers、Visa、American Express、Peter Thiel、Max Levchin、そしてElon Muskなどがいる。

[原文]

(翻訳: 木村 拓哉 /Website /Facebook /Twitter