フリーランスでも正社員の保証や信用が得られる人材サービス、メタップスが事前登録開始

働き方改革の影響などもあって、近年国内でもフリーランスや副業(複業)への注目度が高まっている。

ランサーズが実施している「フリーランス実態調査」などを見ていても広義のフリーランスの経済規模が年々拡大していることがわかるし、副業系サービスをまとめたカオスマップが登場するほど、この領域にフォーカスしたサービスが一気に増えてきているのが現状だ。

ただ、当たり前だけどフリーランスも良いことばかりではない。やり方次第で仕事の内容や働く時間帯、場所を自由に決められるのは大きなメリットである反面、社会的な信用や福利厚生・報酬制度、退職金など正社員の方が優れている部分も多い。1人で活動する場合はバックオフィス業務を全て自分で対応する必要があるし、仕事の幅や成長の機会が限定されてしまう可能性もある。

最近は正社員やフリーランスなど雇用形態に固執せず、同等の機会や環境を整備しようとしている会社もあるけれど、そのような例はまだまだごく一部にすぎない。

さて、少し前置きが長くなってしまったけれど、今回紹介する「re:shine(リシャイン)」は簡単に言えば「フリーランスとして働きつつ、正社員のメリットも享受できる」というプロジェクトだ。

大枠としてはフリーランス人材と企業をマッチングするクラウドソーシングサービスにも近いが、そこにre:shineならではの機能が追加される。同サービスの表現を借りると“フリーランスという働き方に、正社員の保証や信用をアドオンできる”仕組みとも言えるだろう。

運営元のメタップスでは5月のβ版公開に向けて、本日3月29日より同サービスの事前登録を始めた。

フリーランスに安心と成長機会を提供、多様な働き方を支援

「re:shine(リシャイン)」の画面イメージ。あくまで開発段階のものだが、既存のジョブマッチングサービスよりは、Slackのような画面設計に近い。ここにプロジェクト(案件)や登録ユーザー・チームが表示される

上述した通り、re:shineの軸はフリーランスとして働きたい個人やチームと、仕事を依頼したい企業をマッチングする機能だ。

初期の段階ではエンジニアやデザイナー、ディレクターが対象。個人としてre:shine上のプロジェクトに応募することはもちろん、サービス内でチームを組んで「1人ではチャレンジできない難易度の高い案件」に挑むこともできる(複数のチームやプロジェクトに同時参加することも可能)。

クラウドサインAPIを用いることで契約時の手間を削減したり、勉強会やオフ会の機会を設けてユーザーにスキルアップの機会を提供したりなど、細かい特徴はいくつかあれど、最大の特徴はやはりフリーランスという働き方に正社員のメリットをアドオンできる点だ。

具体的にはユーザーは運営元のメタップスと雇用契約を締結し、形式上は同社の正社員となる。そこで正社員として実績や信用を積み重ねながら、フリーランス的な働き方を通じて自分がやりたいプロジェクトにどんどんコミットしていく。

正社員になる以上、基本はメタップスでの仕事が中心になるのかとも思ったけれど、同社IT戦略グループマネージャーでre:shine発案者でもある阿夛浩孝氏によると、決してそんなこともないそう。働く時間に応じて月の固定給やインセンティブなどの報酬が柔軟に決められるため、極端な話「メタップス内の仕事を全くしない」という選択肢もありだという。

「自分自身、前に所属してた組織の中でその組織を外れるという選択肢を考えた時に、保守的な理由がネックになって思い止まった経験がある。周囲の家族持ちのフリーランスに話を聞いても、家を買う際にフリーランスだと条件が厳しくなってしまうなど、そこに悩みを抱えている人が一定数いることもわかった」

「業界的にもエンジニアが圧倒的に不足している一方で、その悩みを解決する手段はない。エンジニアが既存の雇用形態や給与形態に囚われ過ぎず、多様な働き方を選択できる仕組みを作りたいと思ってこのプロジェクトを始めた」(阿夛氏)

僕自身も、フリーランスになってからもうすぐ4年が経つ。色々な仕事にチャレンジできるし、自分の好きな場所で働けているので不満はないけれど、正社員ならではの報酬制度や充実した社内制度などを少しうらやましく感じたことはある。

また誰かに依頼しない場合は経理処理などのバックオフィス業務を自分で担う必要があるが、re:shineの場合はその点もメタップスのサポートを受けられるそう。細かい経理業務などが苦手な人には便利な仕組みと言えそうだ。

冒頭でも触れた通り、re:shineの事前登録は本日からスタート。まずはエンジニア、デザイナー、ディレクターを対象に50人を定員として申し込みを受け付ける方針だという。

専門家の“時間”を売買するメタップスの「タイムバンク」、iOSアプリを公開

7月にサービスを発表して注目を集めていたメタップスの「タイムバンク」。そのiOS向けアプリが9月11日に公開された。App Storeから無料でダウンロードできる。Android向けアプリも提供準備中だという。

アイドルからアスリート、経営者などの専門家が時間を売買

タイムバンクは「時間」を売買するマーケットだ。アイドルやアスリート、経営者、クリエーターといった専門家の時間を10秒単位でリアルタイムに売買できる。時間の売買は、株価のように日々の取引で変動する。また、時間の売買に加えて、専門家が設定する条件を満たすと「リワード」として購入した時間を使用できる。例えば時間を売りに出している専門家と出会う、講演してもらう、ランチやディナーを楽しむ、といった具合だ。

専門家のファンであれば時間を持ち続けて応援することもできるし、それを行使して専門家と出会ったり力を借りることもできるし、その専門家の時間を求める人へ、自身が保有する時間を売ることもできるというサービスになっている。なお、時間の売買や時間購入のための出入金時には、所定の手数料がかるとしている。

メタップスでは7月のサービス発表とあわせて、時間を発行する専門家の申請(SNSの影響力や信頼性、専門性をもとにスコアを算出、同スコアが57以上でないと申請に通過しないとしていた)を受け付けている。

現在アプリ上には、タイムバンクの運営アドバイザーでもあるキッズライン代表取締役社長の経沢香保子氏ら5人の時間について新規発行がアナウンスされている状況だ。金額を見てみると、例えば経沢氏の時間は1秒72.3円で売り出される世予定となっている。メタップスによると、当初は専門家が一度に売りに出せる時間は1000万円未満。また専門家とユーザーとのお金のやり取りは、同社が仲介に入ることで、安心して利用できる運営体制を構築するとしている。

審査は「かなり硬い」、今後は1日数人ペースで専門家を拡大

ただし、アナウンスされている時間の売買はいずれも9月13日から。なお申請通過後の審査に関してはかなり時間をかけているそうで、今後1日数人程度のペースで専門家の数を拡大していくとしている。

「基本的にはSNSスコアの審査に通った方に一人ずつご連絡して、時間の内容の調整から注意事項の確認など一件一件すり合わせてやっていってるかたちです。だいぶウェブっぽくないやり方ですが、決済事業を通して審査の重要性は身に染みているので泥臭いやり方でやっていこうと思ってます。経営陣の大半が金融出身者なのと、(自社が)公開企業なので、かなり硬い人達でやっています」(メタップス代表取締役CEOの佐藤航陽氏)