ラグビーワールドカップ2019でUberのサービスは日本でどう使われたか

Uber Japanは2月4日、2019年に日本で開催されたラグビーワールドカップ2019で、Uberのサービスがどのように使われたのかについて、報道関係者受けのメディアラウンドテーブルを開催した。登壇したのは、UberのAPAC(アジアパシフィック)でディレクターを務めるÉmilie Potvin(エミリー・ポトビン)氏。

UberのAPAC(アジアパシフィック)でディレクターを務めるÉmilie Potvin(エミリー・ポトビン)氏。昨年のTechCrunch Tokyo 2019にも登壇し、Uberの国内展開について語ってくれた人物だ

まずUberの現状について、国内では11都市でサービスを展開しているほか、地方自治体と協力して高齢者向けの移動サービスを実施していると説明した。またデリバリーシェアリングサービスのUber Eatsについては10都市で展開しており、約1万4000件のレストランを利用可能とのこと。アジアでの利用回数は10億回を超えているなど、同社では最速で展開しているビジネスだそうだ。

そして、ラグビーワールドカップ2019の期間中にUberアプリを起動してハイヤーを探そうとした人は、前年比で52%増となったとのこと。利用したのは100カ国、1000都市以上のユーザーだったという。また、実際にUberを利用してハイヤーを呼んだ人は前年比で68%増。ワールドカップ期間中の平均移動距離は11km、最長移動距離は羽田空港から苗場までの513.9km、料金31万円だったという。なお平均移動距離の11kmは、東京駅で乗車して国道20号と青梅街道を経由して中野駅で降車した場合の距離に近い。

11月1日開催されたニュージーランドとウェールズの3位決定戦では、会場となった東京・調布市にある味の素スタジアム近辺での利用率がアップした。15時から23時まではUberを開いた外国人の数は前年比で27%増となり、実際にスタジアム近辺でUberを使ってハイヤーを使ったユーザーは、乗車場所ランキングでは全体4位、降車場所ランキングでは全体の5位にランクインした。

11月2日に開催された南アフリカとイングランドの決勝戦では、やはり会場となった横浜市港北区にある日産スタジアム近辺での利用率がアップ。当日のUberの全体の利用率は国内で前年比8%増となったほか、日産スタジアム近辺でUberを利用してハイヤーに乗車したユーザーは全体の5位、降車したユーザーは全体の3位にランクインした。

また国内でも好調のUber Eatsについては、大会期間中にホテル客室からの依頼が増えたそうだ。通常時は10件のオーダーのうち2件ほどがホテル宿泊客からのオーダーだったが、期間中は5件と半数がホテル宿泊客の利用だったという。ホテル宿泊客の国籍や性別などは明らかにされなかったが、同社は海外からの観光客の利用が増えたと見ている。ちなみに、注文が多かったフードはフライドチキンとハンバーガー、そして麻辣タンメン。飲み物については、ビールのオーダーはワールドカップ開催前より25%増えたという。

同氏によると、2020年は東京五輪などで4000万人以上の観光客が来日すると見込まれており、日本にとってエキサイティングな年になることは間違いと語った。また。4年前のブラジル・リオデジャネイロのオリンピックでは、Uberアプリを利用したユーザーは70カ国におよび、ブラジルのドライバーの収入アップに寄与したことを例に挙げた。

そのほか、Uberアプリの比較的新しい機能としてSpotlightが紹介された。これは利用者別にユニークな色が割り当てるもので、ハイヤーやタクシーが乗車位置に近づくと、スマートフォンの画面がその色に塗りつぶされる機能。利用者はその画面をドライバーに見せることで、複数の利用者がいる乗車場所でも依頼したドライバーを見つけやすくなる。そのほか、複数人で利用する際に複数の降車場所の指定、割り勘、現在位置の共有、Uber Eatsのオーダーといった機能も搭載されている。

質疑応答でポトビン氏は、JUMPというサービス名で知られる電動アシスト自転車や電動キックボードの国内でのサービスの展開については、「JUMPについては地方自治体などと話し合いを進めている最中だが、今後強力に推し進めていきたい」と語った。また都内ではハイヤー中心でタクシー会社とテ形できていない点については「Uberとしてはさまざまなタクシー会社と連携したいと考えている」と述べるに留まった。とはいえ、都内ではJapaxTaxiを筆頭に、ソフトバンク系のDiDiやDeNA系のMOVなどのプラットフォーマーがタクシー会社を取り合いをしており、Uberが入り込む余地はあまりないと考えられる。

またアジア展開については、Grabに事業を丸ごと売却した東南アジアを除くと、日本と韓国、オーストラリア、台湾、香港、そしてインドでサービスを展開中とのこと。特に台湾の事業は順調に推移しているそうだ。ちなみに、ライバルのJapanTaxiは、韓国のカカオT、台湾のLINE TAXI、東南アジアのGrabと連携しており、各アプリからJapanTaxi加盟のタクシーを呼べる仕組みが出来上がっている。東京五輪でも訪日外国人向けに配車サービス会社同士の戦いは熾烈を極めそうだ。

今回発表された数字はほとんどがパーセンテージで実数は明らかにされなかったが、日本国内ではハイヤー・タクシー配車事業よりも、Eats事業が順調だという印象を受けた。国内導入に向けて交渉中の電動キックボード事業は、道路交通法などの参入障壁が高いもののの、免許やヘルメット着用、ナンバープレート装着などが不要な電動アシスト自転車のシェアリングであれば現実的かもしれない。