近年エンタメやコマースをはじめ様々な領域で「ライブ動画」というフォーマットが広がってきているが、これからはフィットネスのレッスンもライブ動画化される時代になっていくのかもしれない。
女性限定のオンラインヨガサービス「SOELU(ソエル)」を展開するワクテクは6月26日、複数の投資家を引受先とした第三者割当増資により8000万円を調達したことを明らかにした。
同社では今回調達した資金をもとにプロダクトの開発体制を強化するとともに、SOELUブランドの構築や会員の最大化を目指すほか、インストラクターやトレーナーの人材育成にも力を入れる方針。
なお今回のラウンドに参加した投資家は以下の通りだ。
- KLab Venture Partners
- iSGSインベストメントワークス
- ANRI
- THIRDPARTY
- 赤坂優氏
- takejune氏
- 大湯俊介氏
- 花房弘也氏
- 安田直矢氏
- 水谷寿美氏
- 飯田くにこ氏
ビデオチャットを活用、いつでもどこでもヨガレッスン
オンライン英会話サービスがマンツーマンの英会話レッスンをWeb上で手軽に受講できるようにしたように、SOELUはジムやスタジオで開かれる少人数のヨガ教室をオンライン化したサービスだ。
レッスンはビデオチャットシステムのZoomを使ってリアルタイムに実施。インスタラクターが画面越しに受講者の様子を見てフィードバックをくれるため、オンラインではあるものの孤独を感じづらく、臨場感も味わえる。
初級〜上級までレベルに応じたヨガレッスンの他にも、マタニティヨガや産後ケアヨガ、ママ&ベビーヨガ、ピラティス、骨盤トレーニング、全身引き締めトレーニングなど約30種類のプログラムを用意。オンラインの利点を活かし、これらのレッスンを朝5時から深夜24時台まで開催している。
レッスン時間は1回あたり30分〜60分ほど。多くても10名程度の少人数レッスンとなっていて、月に8回受講できる月額3980円(税抜)のプラン、1日2回を上限にレッスンが受け放題となる月額7980円(税抜)のプランがある。
長く継続できるフィットネスサービスを作る
「自分たちが作りたい健康サービスは、ライフステージが変わっても長く続けられるもの。一過性ではなく、継続できる仕組みこそ価値があると考えている」——そう話すのは、ワクテク代表取締役CEOの蒋詩豪氏だ。
ワクテクは2014年4月の設立。当初運営していたオタクコンテンツを扱うキュレーションメディア事業を2017年に譲渡し、同年9月頃から現在手がけるオンラインヨガサービスを検証してきた。その中で体験レッスンを受講した女性約100名にヒアリングしたところ、既存の手段における課題が見えてきたのだという。
「できればジムやスタジオに行きたいけど、時間などの制約があって継続して通うのが難しいという声が多い。その一方でyoutubeの動画やDVD教材ではよほどストイックな人でなければ、孤独で飽きてしまう。特に仕事や家事、育児をしながら美容や健康にも気を配りたい女性には、同じような悩みを抱えている人が多いにもかかわらず、しっかり解決できるソリューションがなかった」(蒋氏)
何もオンラインでヨガのレッスンを受ける仕組み自体は真新しいものではない。試しに「ヨガ オンライン レッスン」などのキーワードで検索すると、いくつか該当するものがでてくる。
ただそれらの多くは録画したレッスンを配信するオンデマンド型のものか、パーソナルトレーニングに近いマンツーマン型のもの。何よりも「楽しく、続けられること」を重視した結果、蒋氏は少人数のライブレッスンという方式が最適だという結論に行き着いた。
「もちろんマンツーマンのレッスンもニーズはあると思うが、レッスンフィーが変わらなければ必然的に生徒が支払う単価は高くなり、負担も大きい。自分たちがやりたいのは一部の人をターゲットにしたものではないので、コスト面も含めて続けにくくなる要因をとにかく取り除いていきたい」(蒋氏)
複数人制をとることで価格を抑え、ライブレッスンにすることで安心感だけでなく多少の強制力を持たせる。
他にも子どもを寝かしつけてから参加できるように予約なしで途中入室できる仕組みや、赤ちゃんが泣いてしまってレッスンが続けられなくなったら無償でチケットを補填する制度を導入。使い切れなかったチケットは繰り越せるなど、忙しくても続けやすい環境を整えている。
レッスンの時間帯も大きく影響するポイントのひとつ。SOELUに多くの受講者が集まるのは、子どもが起きていない早朝や深夜のレッスンなのだそうだ。
この時間帯でも受けられるプログラムはリアルな場だとなかなかないだろうし、仮にあっても自宅を抜け出して通うのは困難。実はインストラクター側にもこの時間帯で講師業をしたいというニーズがあるため、双方にとっていい仕組みだ。
今後は自作のライブレッスンシステムも
SOELUは誰でもインストラクターとしてヨガを教えられるC2Cのプラットフォームではなく、B2C型。仮に予約が0名でもSOELU側で賃金を保証するため、インストラクターは安定的な収入が見込める。集客面でも自分ひとりでやるよりかなり楽だ。
現在SOELUには研修中も含めて約30人のインストラクターが在籍。プログラムのラインナップも30種類ほどで、1日平均15〜20のレッスンが開催されている。
今回調達した資金も活用しながら今後はプログラムを100種類くらいまで増やし、ユーザーが好きな時間に好きなレッスンを受講できるような体制を目指す。また現在はZoomを活用しているが、今後は自社で独自システムを構築する計画だ。
ちなみにSOELUは女性限定のサービスだが、ライブ×フィットネスという軸で他のターゲット層向けのサービスも展開できそうな気もする。その点について蒋氏に聞いてみたところ、直近はSOELUに集中しながらも「ゆくゆくは男性向けのフィットネスサービスなども検討していく予定」(蒋氏)とのことだった。