ローンチ1ヶ月で月間2億PVペースの「Peing – 質問箱」をジラフが買収、世界展開目指す

ここ数ヶ月、匿名質問サービスがちょっとしたブームになっている。その火付け役となったのは以前TechCrunchでも紹介したサウジアラビア発の「Sarahah(サラハ)」。自分に寄せられた質問に対する回答を、Twitterやインスタグラムのストーリーで公開して楽しむ。

ただ最近ではSarahahに似た「Peing – 質問箱(ピング)」が急速に利用者を増やし盛り上がりをみせている。同サービスは1人の日本人がわずか6時間で作り、11月22日にリリースされたばかり。1日当たりのPVが800万を超える日もあるなど、1ヶ月で月間2億PVを目指せる規模のサービスになっている。

そんなハイスピードで成長するPeingだが、売却に至るスピードも非常に速かった。

買取価格比較サイト「ヒカカク!」やスマホ特化型フリマ「スマホのマーケット」などを提供するジラフは12月21日、Peingを買収したことを明らかにした。同社はすでにPeingの開発・運営者せせり氏からPeingを譲受しており、今後はポケラボの創業者でジラフ執行役員の佐々木俊介氏が事業責任者に就任。佐々木氏のもとでサービスの拡大を目指していく。またせせり氏はアドバイザーとして同社に参画するという。

Peingは質問箱に届いた質問に対する回答がTwitter上に投稿され、広がっていく

1人で作ったサービスは1ヶ月で月間2億PVペースに成長

「どんどん増加するユーザーやアクセスに個人レベルで対応するのに限界を感じ、自分で運営するより組織的に運営できる所に託した方がユーザーさんも幸せになると思い売却を決めた」—— せせり氏が1ヶ月前に立ち上げたばかりのPeingを譲渡した理由だ。

現在26歳のせせり氏は19歳の時から7年かけて、1人で30個のWebサービスを開発し売却も経験。これまでの経緯を記したブログ記事はかなり拡散されたため、実際に読んだ人もいるかもしれない。

この記事をきっかけにせせり氏のもとには、「流行るサービスの作り方」に関する質問が増えた。そこで参考になるサービスを実際に作って説明しようと、開発したものがPeingだ。同サービスはSarahahに似ているが、Twitterログインを取り入れ登録時の手間を削減。画像投稿とリンク投稿を選べるようにしてTwitterのメディア欄を圧迫しないなど、使いやすい設計を意識されている。加えて日本語に対応していることもあり、国内でユーザーが急激に増加した。

以下はPeingの開発に着手してから1週間の推移だ(日付は全て2017年11月)。

  • 21日:「Peing – 質問箱」の開発に着手
  • 22日:サービスの公開(1000PV/日)
  • 23日:3000PV/日達成
  • 24日:1万PV/日達成
  • 25日:5万PV/日達成
  • 26日:10万PV/日達成(日本トレンド4〜5位)
  • 27日:40万PV/日達成(日本トレンド1位)
  • 28日:60万PV/日達成(TwitterAPI一時停止)

当初はクリエイターやIT業界界隈のユーザーが中心となっていたが、徐々にユーザー層が拡大。お笑いコンビNON STYLEの井上裕介さんなど著名人も利用し始めている。現時点でアカウント数は80万を超え、リアルタイムで2〜3万人が閲覧し、12月の月間PVも2億に到達するペースだ。せせり氏が個人で運営するには負担が大きく、今後のサービス拡大も見据えて売却に至ったという。

TwitterのDMから始まりほぼ2日でディールが成立

ジラフ代表取締役の麻生氏によると、上述したブログ記事をきっかけにせせり氏と一度話をしたことがあったとのこと。その時はPeingが今ほどの規模になっておらず買収の話は一切なかったが、その後せせり氏がTwitter上でnanapi創業者の古川健介氏に事業譲渡の可能性について打診している現場を発見。「(ジラフで)買収するチャンスもあるのではないかと考えた」という。

「匿名質問サービスというフォーマット自体は真新しいものではないかもしれない。ただフリマアプリを筆頭に個人間をつなぐサービスが注目され、普及している時代だからこそ広がっていく可能性もある。ライトなサービスなので海外展開もスピーディーにできるし、チームで開発・運営することで機能面などもっとよくできる部分も多い」(麻生氏)

写真左が「Peing – 質問箱」開発者のせせり氏、右がジラフ代表取締役の麻生輝明氏

事業譲渡について実際に話し始めたのは12月17日の夜。Twitterのダイレクトメッセージで麻生氏から提案し、2日ほどで大まかな契約が成立したそうだ。買収金額については非公開だが、過去に面識があり一定の信頼感があったことに加え、スピード感も決めてとなって折り合いがついた。現状Peingではマネタイズを強化していないがすでに収益も出ている状態で、このまま伸ばせれば「半年程で回収可能な額での買収」(麻生氏)だという。

後発だがSarahahに比べてユーザー登録の手間が少なく、うまくバイラルの波が作れれば一気に拡大できるチャンスもあるというのが麻生氏の見立てだ。海外からの流入もあるが“質問箱”では意味がわからないのが現状のため、アジア圏や英語圏から他言語対応を始める方針。合わせてバイラルを生み出す仕組みの研究や、Twitter以外のSNSに合わせた横展開の検討も進めていく。

ヒカカク!やスマホのマーケットなどジラフの既存事業とPeingの親和性は決して高いとはいえないだろう。ただその点については「リユース領域しかやらないということはなく、枠にはめすぎずにチャレンジの機会があればやりたい」というのが麻生氏の回答。今回の買収についても既存株主からの異論はなかったそうだ。

「C向けのサービスですぐに世界展開を狙えるサービスはそんなに多くはない。そのようなチャンスを得られたことをポジティブに捉えている。まだまだ施策としてやりきれてない部分も多く可能性はあると考えているので、挑戦していきたい」(麻生氏)

レレレ、「CoffeeMeeting」「TimeTicket」などをグローバルウェイに譲渡——山本氏は引き続きサービスを担当

レレレ代表取締役の山本大策氏(左)、グローバルウェイ代表取締役社長の各務正人氏(右)

レレレ代表取締役の山本大策氏(左)、グローバルウェイ代表取締役社長の各務正人氏(右)

“コーヒー1杯飲む時間を過ごす”をコンセプトにしたビジネス向けマッチングサービスの「CoffeeMeeting」、ユーザー同士が自分の空き時間を売買する「TimeTicket」などを提供するレレレは10月6日、グローバルウェイに事業を譲渡すると発表した。金額は非公開。

また今回の事業譲渡にともない、レレレ代表取締役の山本大策氏はグローバルウェイに参画。グローバルウェイ内に新設する「グローバルウェイラボ」にて、TimeTicketなどのサービスの運営・開発を継続する。法人としてのレレレは今後解散する予定で、実質的にはグローバルウェイがレレレを買収するかたちとなる。なお、事業譲渡後もサービス名等に変更はない。

レレレの設立は2012年5月。代表の山本氏はリクルートのMedia Technology Lab(MTL)の出身だ。同社はこれまでにインキュベイトファンドやEast Venturesから資金を調達。外部のデザイナーなどとも組みつつ、山本氏1人でサービスを開発してきた。TimeTicketは現在3万3000ユーザー。これまでのマッチング数は6000件。常時2万枚のチケットが販売されている状況だという。

さまざまなスキルを売買できる「TimeTicket」

さまざまなスキルを売買できる「TimeTicket」

グローバルウェイは4月に東証マザーズ市場に上場したばかり。企業の口コミ投稿や就職・転職支援を手がける「キャリコネ」を運営するほか、法人向けのクラウドサービスを提供している。

両者によると、今回の事業譲渡はグローバルウェイ側からオファーがあったものだという。

「レレレはこれまで4年で4つのサービスをリリースしている。これは1人だからこそできたスピードだとは思う。その一方で1つ1つのサービスの熱量が下がってしまったし、緩さはあった。だが今後に光が見えたサービスはある。これをどう成長させるかと考えた時にグローバルウェイと話ができた」(山本氏)

「キャリコネでやりたいのは、働く人を応援し、元気にすること。当初はビジネスSNSとして展開したがうまくいかず、口コミを中心とした現在のかたちにサービスをシフトした。(キャリコネは)口コミで働き方を『認識』し、転職で働き方を『改善』することを支援している。だが転職のゲートウェイを提供するだけでなく、転職しなくても学びによって自身の価値を向上させる『学習』もサポートしたいと考えていた」(グローバルウェイ代表取締役社長の各務正人氏)

働いている人同士がTimeTicketをはじめとしたサービスを通じて出会い、互いのスキルを学ぶ——グローバルウェイがキャリコネで作っていきたいのは単なる口コミサイト、転職サイトではないという。

キャリコネの年間ユニークユーザーは4200万人。今後はユーザーの送客などをはじめとして、連携した施策を進める予定。またTimeTicketなどのユーザー獲得に向けた広告出稿、開発メンバーの拡充なども進め、「今後数年間で億単位の投資を実行していく」(各務氏)としている。

なお今回の事業譲渡のスキームについては、「レレレの法人格を残して欲しいと思っていたが、事業に億単位の投資をするとなると貸し付けになるため(に事業譲渡というかたちをとった)。気持ち的には山本氏に引き続き社長として事業を進めて欲しい」(各務氏)と説明した。