複数人でバーチャル・デビットカード発行、イギリスのYsplitが考える新しい「割り勘のカタチ」

イギリスで新しい「割り勘」の方法が生まれたので紹介しておこう。Y Combinator出身のスタートアップがリリースした「Ysplit」だ。

Ysplitの特徴は割り勘をする上で誰もお金を立て替える必要がないということ。サービス利用の流れは以下のようになる。Ysplitを利用するにはまず、支払いを割り勘するメンバー(例えばルームメイト)それぞれが銀行口座を登録する必要がある。すると、そのメンバー専用のバーチャルカードがアプリ上で発行される。このカードは通常のデビットカードのようにオンラインでの公共料金の支払いなどに使用することが可能だ。そして、そのバーチャルカードを利用して決済すると、メンバー全員の銀行口座から自動で割り勘分の金額が引き落とされる。

決済が行われた際、Ysplitはメンバーの銀行口座の残高を確認し、残高が十分に残っていればいったん支払いをYsplitが立て替え、その後にメンバーの残高からお金を引き落とす。そのため、Ysplitのシステムでは、誰かが支払いを立て替えたり、あとからその人に個人間送金をする必要はない。

ユーザーはYsplitを完全に無料で利用することが可能だ。その代わり、Ysplitは支払いを受ける店舗側から1.3〜2%程度の決済手数料を受け取るモデルとなっている。

同サービスの開発背景について、Ysplit共同創業者のTunde Alao氏は「お金を貸し借りするという行為自体を完全になくしたかった」と語る。Ysplitはもともと、同社の共同創業者たちが最初に立ち上げたCluttrというスタートアップからスピンアウトして生まれたサービスだ。Cluttrはルームメイト間の公共料金の支払いをトラッキングし、それぞれがいくらお金を貸し借りしているかを把握するためのサービスだった。しかし、Alao氏は「このサービスはイギリスではまずまずの成功をしたが、貸し借りの状況をトラッキングすること自体がユーザーの課題を解決しているとは思えなかった」と言い、そのジレンマからYsplitのアイデアを思いついたという。

複数の固定メンバーでカードを作るというYsplitの構造上、同サービスは海外では当たり前となっている「ルームメイト同士での公共料金の割り勘」などに適したサービスで、突発的な飲み会など、メンバーの構成が流動的なシチュエーションでは使い辛いだろう。同社もまずはその領域に特化していくという。ただ、「(Ysplitの仕組みは)多くのシチュエーションに利用できる可能性をもつ」というAlao氏の言葉の通り、日本でも、例えばサークルメンバーや同じ部署の人たちでYsplitカードを発行し、飲み会の代金はそのカードで精算する、というような使い方は考えられるだろう。

(本稿は米国版TechCrunchの記事を翻訳・編集したものです)

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資産管理アプリMoneytree、iOS 10のメッセージで使えるiMessageアプリ「ワリカン」を早速ローンチ

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本日よりiOS 10の一般公開が始まった。スマホを持ち上げるとスリープが解除されたり、ホームスクリーンの小さなウィジェットからアプリ機能が使えたりと使い勝手が向上している。中でも大きく変わったのが、Apple純正のメッセージアプリだ。iOS 10のメッセージアプリでは、友人とやりとりしながら様々なiMessageアプリを使用できるようになる。日本でも早速、iOS 10の一般公開初日から使用できるiMessageアプリが登場した。本日、資産管理アプリのMoneytreeはiOS 10へのアップデート、そしてiMessageアプリ「ワリカン」の提供を開始したと発表した。その名の通り、友人とお会計を割り勘する時に使えるシンプルなアプリだ。

MoneytreeのiMessageアプリを説明する前に、改めてiOS 10のiMessageアプリについておさらいしたい。今年6月に開催された開発者カンファレンス「WWDC」で、Appleはメッセージアプリのアップデートを発表した。iOSに最初から搭載されているこのメッセージアプリは、iOS 10からスタンプや手書き文字を送受信したり、Apple Musicの楽曲などを簡単に共有したりすることができるようになる。

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iMessage最大のアップデートは、iPhoneにダウンロード済みのアプリと連動するインタラクティブなiMessageアプリが使用できるようになることだ。「iMessages App Store」が新設され、ユーザーは欲しいアプリをそこからダウンロードして使用できる。ただ、iMessageアプリは、iOSアプリのエクステンションという位置付けで、iMessageアプリを使用するには、iOSアプリをスマホにダウンロードしている必要がある。これは、Apple Watchでアプリを使用するにも、スマホに元のアプリをダウンロードしている必要があるのと同じ仕組みだ。

MoneytreeのiMessageアプリは、iOS 10のローンチ初日の今日から使用できるアプリの1つだ。MoneytreeのiOSアプリは、銀行口座や証券口座の残高を確認したり、クレジットカードの使用状況などを確認したりすることができ、iMessageアプリではワリカン機能を提供する。moneytree-immessage

「ワリカン」は、何名かで食事に行った時にそれぞれの会計金額を決めるためのシンプルなアプリだ。メッセージで、お会計金額を該当する人やグループに送付する。領収書を添付することも可能だ。メッセージを受け取ったユーザーは金額を確認し、もしその金額に不満があれば申し出たり、あるいは表示金額より多く払うことを提案することもできる。対面だと直接言いづらいお金のやりとりも、かわいらしいアプリのスタンプで伝えることが可能だ。支払いが完了した時には、支払い状況を変更することができる。

他のコミュニケーションアプリでこういった追加機能を提供することも可能ではあるが、iMessageアプリを選んだのはApple製品の安全性の高さが決め手とMoneytreeのChief of Marketingを務めるザック・タウブ氏は話す。iMessegeにはエンドツーエンドの暗号化が施され、プラットフォーム自体の安全性が高い。Apple製品はセキュリティー、プライバシー、透明性の高さに定評があり、お金のやりとりというセンシティブな情報を扱うMoneytreeでも安心してプロダクトを開発できるとタウブ氏は説明する。

また、Appleのセキュリティーやプライバシーへの取り組み方はMoneytreeとの理念にも通じるという。Moneytreeはサービス展開において、セキュリティーとプライバシーを重んじるスタンスを強調してきた。例えば、Moneytreeはアプリを提供する全てのプラットフォームで個人情報保護認証であるTRUSTeを取得してプライバシーの安全性を担保し、個人情報に基づくファイナンスマーケティングも一切行わないと明示している。Moneytreeは、今後モバイルでの電子決済といった金融サービスが充実するほど、ますます個人がどこに何の情報を提供するかをコントロールし、個人主導のデータの使い方が主流になると考えているという。その時、ユーザーはよりセキュリティーやプライバシーの安全性が高いプラットフォームやサービスを支持するようになるだろうとタウブ氏は説明する。

現段階でMoneytreeのiMessageアプリには、それぞれの個人が支払う額を決める基本的な機能しかない。しかし、人々がスマホアプリを使ってお金の話をすることに慣れれば、ゆくゆくは決済機能などを付け加えることも視野に入れているという。

Moneytreeが最終的に目指すのは「ソーシャルマネー」という新たなカテゴリーの確立とタウブ氏は言う。この「ソーシャルマネー」は個人が行うお金のやりとりを意味するそうだ。割り勘もその一種であり、例えば個人間でのお金の貸し借りや、広義には個人と会社間のお金のやりとりも含むと話す。今回のiMessageアプリは、その「ソーシャルマネー」領域に踏み込むための最初の一歩と位置付けている。

私もメッセージアプリを触ってみたが、手書きメッセージやGIFを見つけて送ったりするのは面白いし、専用アプリも役立ちそうではある。ただ、このワリカン機能を使うためには、食事や飲み会に集まった友人や同僚全員が、Apple端末で、iMessageを利用していて、さらにMoneytreeのiOSアプリをダウンロードしている必要がある。これは少しハードルが高いかもしれないと感じた。ただ、これはMoneytreeの問題というより、iMessage自体の普及率の問題でもあるだろう。Androidでは現状iMessageは利用できないし、日本では多くの人がFacebook MessengerやLINEを利用し、それらのプラットフォームには強力なネットワーク効果がある。プラットフォームのセキュリティーの高さやこれから魅力的なアプリが使えるようになれば、それは確かにユーザーを惹きつける理由になるかもしない。しかし、実際にそうなるかが分かるのはもう少し先のことのようだ。