1997年10月15日にケープカナベラルから発射されたカッシーニ・ホイヘンスミッションが先週、20年にあと1ヶ月を残し、土星に突入した。これまで数多くの美しい惑星の写真を送り続けたミッションからの、ほろ苦い「グランドフィナーレ」となった。ほぼ燃料が枯渇した状態での、これはその最後の最も劇的な実験となった。
その最初の8年間は、土星よりも内側の惑星たちの重力を使って加速を続けていたが、一旦目的地に到達したあとは、科学はその足取りを早め豊かになった。その後に続いた土星を巡る12年の間に、私たちの太陽系で最もフォトジェニックな惑星の、素晴らしい映像と魅力的なデータが得られた。カッシーニの最後の日を祝い、最も印象的なイメージや予期せぬ発見を振り返ろう。
まずは打ち上げと土星への旅から始めよう。そしてカッシーニが新しくもたらした土星のリング、その表面、そして数多くの衛星たちについての映像。そしてカッシーニが沈みゆく最後の映像まで。
1/19:カッシーニとホイヘンス
カッシーニが今日の主役だが、もともとカッシーニ・ホイヘンスはNASAとヨーロッパ宇宙機関による共同ミッションだった。カッシーニは何年もの間土星を周回していたが、後でスライドをお見せるホイヘンス探査機は、液化炭化水素で覆われた魅力的な衛星であるタイタンを目指していた。
両者は1997年10月15日に、タイタンIVB /ケンタウロスロケットに搭載された単一のパッケージとして打ち上げられた。
2/19:木星のフライバイ
カッシーニの主な任務は土星とその衛星を調査することだったが、チームは木星によるスイングバイの機会を見逃すわけにはいかなかった。それはチームにとって、探査機に搭載された科学機器のミッション達成能力を、本番に先立ちチェックできるチャンスにもなった。
このサイドミッションの一環として、カッシーニはこの驚異的な衛星イオの写真を撮影した。このガスでできた巨人(木星)の渦巻く表面の前では本当に小さく見えていた。
3/19:木星の極の地図
2000年に行われた木星のフライバイの最中に、カッシーニはその後何年もあとに木星探査機ジュノーが撮影するまで、ベストショットとなった木星の画像を、なんとか撮影することに成功した。木星の南極のこのサイケデリックな地図(北西の四分円に赤い点を見ることができる)は啓示だった。対応する北極のマップはここにある 。
木星の磁気圏とオーロラの新たな調査も行われたが、ジュノーが到達するまではその秘密にメスを入れることはできなかった。
4/19:土星の栄光のリング
カッシーニの強力な観測機器が、複数のリングを持つこの惑星の、太陽を背負った象徴的な姿を捕らえた。驚くほど美しいものだということの他に、このショットを含む他の映像によって、科学者たちは斜めから当てられた光によって、新しいリングの識別を助けられた。
リングの中の他の興味深い現象も同時に観察された…
5/19:リングの「スポーク」
リングには不規則な部分があることは長年にわたり知られていいたが、カッシーニの定常的な観測により、これまでにない程細かいことが観察された。リングと一緒に回転するこれらの構造は「スポーク」として知られているが、実際にはアジアと同じくらいの大きさを持つ氷の雲である。
6/19:その詳細
カッシーニによる最も接近したリングの映像では、それらが観測機器が識別できるものよりも更に細かい構造を持っていることが明らかになった。この、Bリングには、数百の小さな波が見えるが、これは実際には、衛星ヤヌスが近傍を通過する際に引き上げられて土星を渦巻状に取り巻く物質と同じものだ。
土星のリングは、最も印象的なスポットの一つかもしれないが、歴史や予期しない状況に溢れた、私たちがこれまでに出会った中でも、最も複雑なものでもある。私たちはこの先すべての物語を知ることはできないかもしれないが、カッシーニは多くのギャップを埋める手助けをしてくれた。
7/19:繊細な土星の表面上の色の変化
カッシーニのカメラの改良された光学特性は、私たちが軌道に入ることができたなら見える土星の姿を見せてくれる。この自然色の映像は、ゴールド、ベージュ、ピンク、そして北極部には素敵な青の広がりを見せている。
これらの色は単なるショーのためのものではない:大気の流れや巨大な嵐によって、それぞれ異なる組成のガスが表面に浮かび上がって来ている場所を示しているのだ。
そして、すべての中で特に興味をそそる嵐がある…
8/19:この六角形を見よ
確かにこれこそ土星の表面で最も奇妙で魅力的な特徴だろう:この六角形を見よ。この形状は、6つのジェットストリームによってお馴染みの形が作られているもので、時には幅3200キロの土星ハリケーンが引き起こされている。
ここに表示されている色は2013年(左)と2017年(右)のものだ。私たちはなぜ色がそんなに変化したのかを知っているわけではない。ただこのエリアへの太陽からの露光が増えたことが原因なのかもしれない。私たちが見ているガスの組成が変化したのだろうか?それは、新しい色を底から湧き上がらせるような、新しい嵐を巻き起こしたのだろうか?それはより大きな季節変化を反映しているのだろうか?科学者たちは多くの仮説を持っている。
9/19:見える流体力学
土星の「表面」は実際には混合ガスの巨大なボールの外層に過ぎない。このため、カッシーニによるクローズアップは、このような本体がどのように振る舞うかを観察するための絶好の機会を提供する。いつでも目に飛び込んで来て常に変化を続ける美しい渦巻きは、絵としての切り取りにも相応しいものだが、巨大で激しい惑星の流体力学に影響を及ぼしている多大な要素に対して興味を持つ科学者たちによる、興味深い研究も可能にしている。
10/19:神秘的なタイタンのベールをめくる
土星最大の衛星であるタイタンは、霞んだ厚い層で覆われている。しかしこの目的のために作られたカッシーニの観測機器が、科学者の予測を拒む世界をしっかりと覗き込んだ。予想に反して、そこは液状の炭化水素の広大な海ではなく、その表面には海と川が点在していた。驚くほど地球に似通っていたのだ(ただし、すべて恐ろしく毒性があり、凍てつくほど寒い点は異なるが)。
11/19:モンスターの海
一度はっきり観察されたタイタンの海は、驚くほど邪悪な名前を授けられた。ギリシャ神話セイレーンの1人であるリゲイア、マオリ神話に登場する海神プンガ、そしてご存知のように北欧伝承の海の怪物クラーケンである。
タイタンの複雑な表面は、惑星学者にとっては、猫にとってのマタタビのようなものだ。彼らは衛星の歴史と成り立ちのヒントを求めて、熱心に映像の新しい断片を分析した。
ホイヘンスの投下によって私たちが目にしたのは…
12月19日:ホイヘンスの降下
短くはあるが輝かしい任務を帯びて、ホイヘンスはタイタンの霞んだ大気の中を降下した。衛星の過酷な環境に屈するまでの3時間以上に渡って、驚くべき映像を送り続けてきた。
ホイヘンスは実際に着陸を果たし、故障する前の地表の画像を送ってきた。地球から最も遠い場所での、宇宙船の着陸記録を保持している。
13/19:生命の可能性を一番持つ衛星、エンケラドス
一見すると、氷で覆われた土星の衛星が生命を持つ期待を持つことはできない。しかし太陽系内の多くの星の極限状態を考えてみるならば、エンケラドスは極めてマシな方だと思えてくる。
確かに敵対的な氷の下には、巨大な水の湖に見えるものがある。これは生命を支えることができる温度と圧力があることを意味している。そこにメタンを加えればエネルギーの素も得ることができる。少々の適応が行われれば、地球の極限微生物がそこで生き延びられない理由もないが…きっともう何かが住んでいることだろう。
14/19:吹き出している!
有名なエンケラドスの地質活動は数十年前に観察されたが、より詳細な調査によって衛星の表面で広く見られることがわかった。南極近くに見られる「タイガーストライプ」は最も顕著なものの1つだ。
これらの地質活動を観察し分析することで、科学者たちは衛星の構成と内部活動を推測することができた。それまで予想されていたものよりも20倍の有機物が存在することが判明したことで、エンケラドスは地球外生命体の存在可能性を持つエキサイティングな候補になった。
15/19:それは衛星ではない!いや待て、やはりそうだ。
土星の53の衛星は全てが独自の形と起源を持っている。そしてカッシーニから送られて来た驚くべき画像が、それら全てに対して何らかの新しい知見をもたらした(特にカッシーニが発見した衛星たちに関しては)。
例えばミマは、1つのクレーターと、スターウォーズのデス・スターのような不気味な表面を持っている。
16/19:ライトサイドとダークサイド
そして、フォースの具現化という意味では、イアペトスは、片側が荒涼とした白、もう片側が炭のような黒という劇的な表情を見せている。これはちょうど地球の月のように、この衛星が潮汐力により常に土星を向いていることから、崩壊する衛星フェーベからの塵が、常に黒い側に降り注いで色を付けているからだ。
正直なところ、見るべき衛星があまりにも多すぎる。それぞれの衛星に関しては、NASAのこの有益なカタログで、個別に見ることができる。
17/19:「地球が微笑んだ日」
ヴォイジャーが撮影したペールブルードット(淡く青い点)のように、この信じられないほどの画像にはすぐに息を呑まされ、謙虚にさせられる。逆光を放つ土星とそのカラフルなリングの背景の中に、地球の姿を捕えられる珍しい機会を、見逃すわけにはいかない。
このショットでは、地球はおよそ14億4500万キロマイル離れている。本当に近付いて良く見れば、私たちの月がその右側に添えられている。
18/19:最後の突入
最後の軌道周回を終えた後、カッシーニは土星の大気の中に時速12万4000キロ以上のスピードで突入した。その最後のエネルギーを使ってアンテナを地球に向け続け、最後の最後までデータを送り続けた。
こうした尊い宇宙船を、確実な破滅へと送り込むことは残酷なことのように思えるかもしれない。しかしこれは、カッシーニの最終目的であり、最初から計画されていたことなのだ。最後に1度だけの実験で、最後にもう1度歴史を残した。
ここに示したのは探査機が送り返してきた最後の画像セットの中の1つだ。カッシーニが降下していくにつれて、衛星エンケラドスが土星自身の向こうに沈んで行くのが見える。
19/19:ミッション完了
カッシーニのシグナルが永遠に消え去ったときに、宇宙管制センターは感動に包まれた。ミッションのプログラムマネージャーと宇宙船運行チームマネージャーをそれぞれ勤めたEarl MaizeとJulie Websterは、宇宙船の最終突入のあとハグを交わした。
カッシーニ、ホイヘンスそしてこの素晴らしいミッションを可能にしたエンジニアと科学者たちの国際チームに敬意を表する!
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(翻訳:Sako)