真の検証のススメ:あなたのスタートアップが評判倒れにならないために

米国市場への参入を望んでいるイスラエルの起業家たちに最初に尋ねることの1つは、自社の製品やサービスが狙っている市場でどのように受け入れられているのかを、私たちに説明してもらうことだ。どのようなフィードバックを受け取っているのか?潜在的顧客層は、チームが売っているものを熱望しているのだろうか?

より広いビジョンと初期の製品自体に対する検証が、意欲的な起業家にとっては、重要な位置付けでなければならない(訳注:本記事の「検証」はValidationの訳である。すなわち「目的に対して妥当であるかを確認する行為」のことで、特に「市場における妥当性の検証」を指している)。会社が正しい軌道に乗っているのか、それとも間違った道をたどって時間を無駄にしているのかを知るための唯一の方法が、製品をテストして具体的なフィードバックを得ることなのだ。ただし、自社の成功の為には、積極的な市場検証がいかに重要であるかを理解している経験豊富な創業者であっても、間違った方向の検証を追いかけることに気を取られてしまうことがしばしばある。

すべての検証が等価なものではない。創業者にとって、意味のある検証と、自身を気持ちよくさせる以上の意味がない虚栄心に満ちた「勝利」とを区別することは非常に重要なのだ。偽りの検証はいたるところにあるからだ。以下に紹介するのは、創業者たちが注意する必要のある、いくつかの良くある罠である。

すべての顧客が同じというわけではない

創業者は、市場に参入する時点で勧誘しようとする顧客数が多すぎないか、あるいは少なすぎないかには注意深くなければならない、もしそれが最終的に狙っている市場セグメントではないとしてもである。もし初期の顧客層が、最終的に獲得したい顧客層と異なる場合は、その初期の顧客たちが求めることや、彼らが提供するフィードバックによって、短期的な目標が歪められ、ビジネスを誤った方向に進めてしまうだろう。

外に出て潜在的な顧客からの現実的で具体的なフィードバックを得ることを恐れないのが、最高の企業や創業者というものだ

これは特に、米国の外からやってくる企業の場合によく見られるものだ。スタートアップたちはそのホームマーケットで顧客の長いリストを保持しているが、その顧客たちは米国の顧客とは同じニーズを持っているかも知れないし、そうではないかもしれないのだ。しかし、こうしたスタートアップたちが自国から外へと拡大する「準備」を整えようとして、彼らはその製品を投資家たちや異国の顧客に売り込むために大変な苦労をすることになる。なにしろその製品は自分たちの狭いマーケットで検証されただけの馴染みの薄いブランドなのだ。多くの場合、初期の顧客たちは、より大きな米国市場での競合的な製品に触れたことがないか、そもそも解決しようとしている問題が異なっているために、スタートアップに対して誤ったメッセージを送ってしまう。

顧客を確保することは、あらゆるスタートアップの成功にとって明らかに重要であり、スタートアップが初期にどのように自らを売り込むかを決めるのに役立つ。それでも創業者は、そうした顧客の系統をきちんと文脈の中で捉えることができなければならない。そして長期的なビジョンを前方の中心に備えておかなければならないのだ。正しい属性の顧客があなたの製品を検証するまで、その製品は本当に検証されたとは言えないのだ。

大企業とのパイロットプロジェクトは?

大企業たちは、次の成長段階を推進するための、次世代最先端技術を常に模索している。これこそが、イスラエルのような、AI、IoT、サイバーセキュリティなどに関する豊富な才能を擁する国が、企業イノベーションラボの設置を多く受け入れている理由だ。

一見したところでは、これはイスラエルの起業家にとって素晴らしいことに思える。なぜなら、それは彼らに世界最大の企業たちへの露出とアクセスを与えてくれるからだ。だがそうしたグループとの近さやフィードバックが全てではない。これらのイノベーションラボの多くは、地元のスタートアップたちを、そのプログラムへ受け入れている。これは、特に初期の段階では明らかに、創業者たちにとってエキサイティングなものになる可能性がある。その大企業はやがて、集まったきたスタートアップと、その製品のテストを行うパイロットプログラムの実施を狙うだろう。もちろんそれはスタートアップにとって有益なものである。しかし、この1社だけの顧客を獲得しても、将来の成功が保証されるとは限らないし、真の意味で製品が検証されるわけではない。

大企業とパイロットプロジェクトを実施できることは、素晴らしい機会ではあるものの、勤勉な創業者ならその他のパイロットの可能性も追求しなければならない。第1に、パイロットプログラムは必ずしも実際の採用につながるわけではないので、創業者たちは全ての卵を1つのカゴに入れてしまうことは避ける必要がある。第2に、ただ1社の大口顧客から創業者たちが受け取るフィードバックは、顧客セグメント全体を代表するものではないかもしれないのだ。単に1つのイノベーションハブの中にいるだけでは、長期的な成功のためには充分でないことはよくある。

スタートアップの友人全員がうちの製品はクールだと言っているのだが…

これは明らかに危ないことのように思えるかもしれないが、相変わらずあらゆる場所で見かけることができる。初めて創業を行った者は、自信過剰に陥りやすく、自分たちや自分たちの製品に対する良い評判を過剰に受け取りやすい。シリコンバレーのような非常に混み合った市場では、圧倒的な数の新しいスタートアップが生み出されているため、冷静で偏りのないフィードバックを得ることは困難である。

「あなたの製品は素晴らしい」と言われることは、単に嬉しいだけでなく、盲目的な中毒を引き起こす可能性がある

これは特に、自社の製品や特定のテクノロジの検証を始めたばかりのスタートアップに、よく当てはまる。「よくわからないな」と言う相手へのアプローチを恐れて、自分の聞きたいフィードバックばかりを追いかける創業者を見かける。そうした肯定的なフィードバックはしばしば、他の起業家から寄せられるものだ。だがそうした起業家たちは、テクノロジーの一部に感心してはくれるが、明らかに本当の顧客としてそれを買って使ってくれるわけではない。

間違った人たちからのフィードバックを自ら求めることによって、創業者たちは、市場の中で望まれること望まれないことをはっきり告げてくれる潜在的な顧客層の声を直接聞くことなく、製品の間違った側面に焦点を当ててしまう。

1000万ドルを調達できた。これは価値が認められたってことでは?

VCからかなりの額のラウンドを得ることさえ、偽りの勢いをつけてしまうことがある。このトピックについては多くのことが書かれて来たが、特定の分野の起業家たちにとっては、多額の資金を調達することが、いままでになく容易になっている。これまでにないほど、多くのシード基金が存在している。シード段階とシリーズA段階における評価額と取引額は上昇を続けている。これが本当に意味していることは、1つのスタートアップに対する成功/失敗の賭けが、会社のライフサイクルの早い段階で行われているということなのだ。

あるVCが企業への投資を決定したからといって、そのスタートアップが約束の地に到達したということは意味しない。VCはあなたの顧客ではないのだ。そして彼らが提供する資金はビジネスを発展させるためには重要なものである一方、対象とする市場に売り込めるかどうかの真の検証の代わりにはならないのだ。

勝ったぞ!

創業者は、表彰や広報活動が自社の事業に与える目に見える影響を、誤解したり過大評価したりしがちだ。起業家たちが、これまで勝ち抜いたコンペのことや、どんなトップ10リストに含まれているかを自慢してくるのは、見慣れた光景である。誤解しないで欲しいのだが、表彰されることそのものが悪いわけではない。それはスタートアップへ人材をひきつけて採用する役にたつだろう。しかし創業者は、その御利益には限度があることを認識しなければならない。真の検証には役立たず、往々にして投資家や潜在的な顧客がスタートアップを評価する際には、意味がないことがほとんどなのだ。

検証への道のりには、いくつかの潜在的な罠がある。起業家がゴールから目をそらしたならば、罠に落ちるのは簡単だ。「あなたの製品は素晴らしい」と言われることは、単に嬉しいだけでなく、盲目的な中毒を引き起こす可能性がある。外に出て潜在的な顧客からの現実的で具体的なフィードバックを得ることを恐れないのが、最高の企業や創業者というものだ。もしそれをしていないのならば、単に自分のビジョンを狂わせる可能性がある偽の検証の影響を受けやすくしているだけのことなのだ。

画像クレジット: VLADGRIN (opens in a new window)Shutterstock

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(翻訳:sako)