2020年はSTEM分野における女性の活躍の場をどう広げるべきか

職場における多様性と受容に対する高く野心的な目標を設定して2020年を迎えることで、私たちは来る年における私たちのゴールを再設定するチャンスを得ることができる。

画像クレジット:Thomas Barwick (opens in a new window)/ Getty Images

Girls in Techは、STEM分野における女性の活躍の場を整備することに真剣に取り組んでおり、毎年何万人もの個人に対して職業上の最大の可能性を達成するための支援を行っている。10年以上前に、シリコンバレーのスタートアップで働く、唯一の女性エグゼクティブとして私はこの組織を設立した。そのとき感じていた無力さが、他の女性たちがこの男性優位の業界を進んでいくための手助けをする情熱を育てたのだ。

多くの組織、特にMe Too運動とTime’s Up運動 の影響を強く受けたアートおよびエンターテイメント組織は、2020年までに50/50の男女平等を目指して努力しているが、残念な現実として、テクノロジー業界の場合はこの数字に近付くにはまだまだ道のりが遠い。 テクノロジー業界に関しては、2025年が近くなるまで男女平等へと近づくことはないと予測されている。

しかし、進歩は 起きつつある。多くの組織が現在、多様性と受容(D&I、Diversity and Inclusion)に焦点を当てたリーダーシップ役職を設定している。例えばHPのチーフ多様性オフィサー(CDO)であるLesley Slaton Brown(レスリー・スラトン・ブラウン)氏は、10年以上に渡ってHPをハイテク業界で最も多様で受容的な組織の1つとするために貢献してきた。この分野における、もう1人の優れたリーダーは、TwitterのD&I担当副社長であるCandi Castleberry Singleton(キャンディ・キャスルベリー・シングルトン)氏だ。変化を受け容れるD&I担当の幹部と企業によって、私たちは目標に到達することができる。

ペースを加速させるべき正当な理由がある。 BCGによる最近の研究によれば、「リーダーシップチームの多様性を高めることで、イノベーションがさらに改善され、財務パフォーマンスが向上する」ことが示唆されている。BCGは、さまざまな業界で規模もまちまちな企業を、8か国1700社にまたがって調査した。この研究は多様性の増加が収益に直接影響することを発見した。実際にこのレポートでは、より多様な管理チームを持つ企業はイノベーションのおかげで19%高い収益を得ていることが報告されている。

この発見は、イノベーションが成長の原動力であるハイテク企業、スタートアップ、および産業にとって重要なものだ。明らかに、D&Iは「やるべきこと」をリストアップするための単なる指標ではなく、収益性の高いビジネスにおける不可欠な部分なのだ。単純化して言えば、高い多様性がよい高い収益につながっているのだ。

それでは、個人としてどうやってそこに到達すればいいのだろうか?スタートアップエグゼクティブから創業者に至る道のりで、私は多くのことを学んできたが、私はここに挙げる知恵が、読者がキャリアに手をつけるための役に立つことを期待している。

  • あなたのための、メンター、セラピスト、そしてチアリーダーとして振る舞ってくれる、経験豊富な専門家である「パーソナルアドバイザリーボード」を任命しよう。そうした人たちは、重要な意思決定、複雑な課題、独特な職場関係に直面したときに、頼れる極めて貴重なガイドになる。アドバイザリーボードへの参加を検討できる人物には、元上司、業界内の仲間、経験を分け合える家族ぐるみの友人、そして協力的な大学教授さえも含まれる。定期的にそういう人たちと直接会ったり、電話またはビデオ会議で顔を合わせて、自分自身のキャリアの上手く行っている点とうまく行っていない点について話してみよう。あなたが目標にこだわとうとするときに、そうしたひとたちは現実を確認するための役に立つ。そしてそれらは少しだけガイダンスがなければ厄介な状況に陥る局面で、非常に有益なものとなり得るのだ。
  • 報酬の公平性、D&Iへの取り組み、トレーニング、そして福利厚生などに、高い「カルチャースコア」を持つ企業に雇用機会を求めよう。Comparablyなどのオンラインサイトを使用して、カルチャースコアを検索してほしい。障害者雇用に対応している組織を探している場合には障害者平等指数(Disability Equality Index)を使用してスコアを調べてみよう。 LinkedInなどのサイトを使用してネットワークをスキャンして、企業文化についてさらに調べる前に、事前に会話できる組織内への接続ポイントを見つけよう。また、現従業員および元従業員の企業の匿名レビューを提供するGlassdoorなどのオンラインリソースをなるべくたくさん確認することを検討してほしい。大事なインタビューに臨んだときには、こうした分野に関する詳細な質問で文化について問合せよう。どんな採用担当者も、自分の会社には「素晴らしい文化」があると言ってくるが、それが口先だけのことではないことを明らかにさせる厳しい質問を投げかけよう。
  • 重役の部屋または会議室でははっきりと発言しよう。あなたの考えが重要なのだ。それらを相手と共有して議論することを恐れないようにしよう。提示されている内容が理解できない場合には、質問をして明確化を求めてほしい。そうした疑問を抱くのはあなた1人ではない可能性は高い。また、机に向かった席を選ぼう。これは文字どおりの意味だ。私はこれまで、多くの女性が壁際の席を選び、自分が「たいしたことのない人物」だというメッセージを安易に送っている場面に遭遇してきた。
  • 職場のいじめには立ち向かおう。いじめは、男女を問わず、さまざまな形と規模でやってくる。いじめ側に対抗することは、あなたの職業生活において最も困難なことの1つ。感情に流されないことが重要だ。いじめを受けた場合には、深呼吸をして3つまで数え、考えをまとめて次の行動を決定しよう。「この件について、直接話し合うために今日の午後時間を割いて貰えますか?」と言うこともできる。これはいじめ側に注意を喚起し、そのふるまいにあなたがタイムリーに反応するという姿勢を明確にするし、あなた自身にも考えをまとめる時間を提供してくれる。誰かがあなたをいじめるためにメールを使用している場合には、すぐに応答してはいけない。その代わりに、数時間待ってから応答しよう。また、電子メールに対する応答には電話を使うか、直接相手の目の前に行き、会話を続けることを検討してみよう。いじめをする人間は電子メールの後ろに隠れていて、双方向の対話の場に引き出されると、攻撃する力を失ってしまいがちだということに気が付くことになるだろう。それでも問題が解決しない場合は、いじめ行為の日付、時刻、詳細とともに、攻撃的な行為を記録して文書化しよう。この情報を使って、人事チームに指導を求めてほしい。HRが問題の解決に役立たず、嫌がらせや差別が続く場合は、雇用問題専門弁護士の支援を求めて、あなたの権利を守るようにしよう。これは、理由もなく組織から解雇された場合に特に推奨される。そして、もしあなたがボスなら、チーム内のいじめを容認してはならない。チームと組織全体の改善のために、そうした行為をすぐに止めさせることが重要だ。
  • 真剣に考え、自信を持って意思決定をしよう。メール中の感嘆符やスマイリーフェイスはすべて考え直そう。もちろん特定の状況下では問題ないが、ぶりっ子でプロらしくないと見えることもあるからだ。特に女性は、こうした感情を表す文字表現によって、会話を「和らげよう」とする傾向がある。メッセージの受け手とその動機付けの方法を学ぼう。もし週末のソフトボールの試合の計画を任されているのなら、チームを発奮させるために感嘆符を使いたくなるだろう。しかしプロジェクトの状況を尋ねる際に感嘆符を使うことは意味がまったく違う。口頭でのコミュニケーションに関して言えば、「Just」(まあちょっとね〜)とか「uhm」(ふ〜ん)といった、リーダーシップを傷付ける可能性のある意味のない言葉に注意しよう。声の抑揚も、他人があなたの自信をどのように受け取るかに影響を与える。伝えたいことを疑問文のように表現してはならない。
  • 本当にそう思っているのでない限り、「it’s ok」(大丈夫)とか「no big deal」(大したことない)と言うことをデフォルトにしてはならない。例えば、誰かが遅刻したり、あなたが受け入れにくいことをしたりしたときには、「I understand that happens sometimes」(そんなときもあることは理解できる)と伝えることを考えてみよう。あるいは先方が率先して謝ってきたときには、「apology accepted」(お詫びは確かに受け取りました)と言ってみよう。このようにして、彼らの行動が自分に対して及ぼした影響を、軽微なものとして単に流してしまわないようにするのだ。そして、同じ行動が再び起きることを無意識に許してしまっているわけでもないということだ。

最後に。あなたが途中で学んだリソースと知見を共有することで、若い女性たちが高みに登るためのハシゴをあなたも下ろしてあげて手助けすることも忘れないでほしい。あなたが働いている会社のメンターとしてボランティアを申し出よう。正式なメンターシッププログラムがない場合には、まずその整備の支援を申し出よう。組織の外でほかの女性を助ける機会を探そう。あなたの助けになる非営利団体は無数にある。ガンジーが言ったように「あなたが世界で見たいと願う変化そのものに、あなた自身がなりなさい」ということだ。

【編集部注】著者のAdriana Gascoigne(エイドリアナ・ガスコイン)氏は、テクノロジー業界の女性たちに力を与え、教育し、指導することに専念している世界的非営利組織Girls in Techの創業者兼CEOだ。

原文へ

(翻訳:sako)