パラグアイのPoは3Dプリントされたカスタマイズ義肢を南米の貧しい人びと向けに開発

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人工装具(義肢など)の世界は2つの方向に進んでいる:1つの方向では、もし望むなら、最新のロボットソフトウェアと小さくなったセンサーが、たゆまず改善され続けている感覚とリアリズムを備えた、手足と指を可能にしてくれる。もう1つは、高速製造技術が、貧しく地理的に孤立した地域に洗練されたデザインをもたらすことを可能にする方向である。パラグアイの会社であるPoは、後者のゴールを目指している。もし彼らのものがなければ何も手に入れることができないような人たちのために、カスタマイズされた義肢を製作するのだ。

パラグアイについては、TechCrunchの共同創業者Eric Dijkhuisが以下のように述べている「驚くべき人びとに溢れ、沢山の課題も抱えた国です。1日当たりの切断術が多い国で、上腕の切断が高い割合を占めています。これは職場の安全規制の欠如と危険な作業エリア、そして多数のオートバイ事故に起因しているのです」。

低所得者が多いため、極めて少数の人たちだけが必要な義肢を購入することができる — Dijkhuisによれば3パーセント以下だ。Poの創業者は、そこに強い問題意識を感じた。オブジェクトをプリントして製造し、高度な既成の制御システムを入手できる時代に、なぜそのままでなければならないのか?

そこで、彼らは耐久性が高くプリント可能な手と前腕をデザインすることにした。形の調整や、サイズ、色、その他の基本パラメータをカスタマイズできる。現在は機械的に制御されるPoの腕が100以上使われているが、彼らはThalmic LabsのMyoデバイスに出会うことで、新たな発見を行った。

Myoについて覚えている人もいるだろう:それは腕に巻き付けて、様々な動きで生じる腕の筋肉の生体電気信号をモニターし、データを他のデバイスに無銭で送信するものだ。なので、例えば握り拳を作ったり、手を上に傾けたりすることで、ノートPCのウィンドウを閉じたり、アプリケーションを切り替えたりすることができる — そして義肢の場合なら、単純に動きを義肢にミラーリングすることが可能だ。

現在Poは5人を対象にMyPoのテストを行っている。MyPoはオリジナルのメカニカルアームとMyoによる制御メカニズムを組み合わせたものだ。

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「わずかなコストでMyPoは義肢の旧来の機能を反映します」とDijkhuis。「何種類もの掴み方、高い自由度、そして既にMyoアームバンドに対応しているアプリケーションと統合することさえ可能です」。そのため、オブジェクトを摘み上げたり動かしたりといった動作に加えて、ジェスチャーを、ソーシャルメディアや音楽アプリ、その他のものと対話するようにすることができる。

この最後の機能は、他者によっても検討されている最中だ:既存の義肢にぴったり装着することができて上記のような対話機能を実現するMyo対応のアクセサリーを、ドイツのデザイナーが最近作成した

四肢制御機構としてMyoを使用する利点は、予め学習させたジェスチャーと筋肉の動きを、直接腕の動きをに結びつけることができることだ。よって、ユーザーが拳をつくるための指を欠いていたとしても、かつてそうしていた頃の動きの記憶が残されていれば、Myoはそれを検知し反応することができる。

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「考え、思い出し、行動。そしてMyoのアームバンドが、全てのプロセスを素晴らしくガイドしてくれるのです」とDijkhuisは言う。

もちろんPoは、3Dプリントの義肢としは、最初でも唯一のものでもない — 既に多くの者がそれを行っている。とはいえ、単にデザインをするだけでは十分ではない。フィッティング、構成、そして部品のコストの問題がある。

「私たちは、ユーザーが負担可能な金額を支払い、残りを民間の寄付を通じた助成で賄えるような手助けをしています」とDijkhuisは説明した。「私たちはまた、私たちの仕事をサポートしてくれる、独立専門家、NGO、同盟企業や公的機関と協力しています。私たちのビジネスモデルは、現在Poパートナーによって、北アルゼンチンとブラジル南部で展開されていますが、誰でも標準的ですぐに使える手続きで自身の活動を始められるように、私たちのワークフロー全体がこれからオープンなものになります」。

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一方、全てのデータはThingiverseにアップされている(Thingiverseは3Dモデルを投稿し共有するサイト)ので、あなたはそこからデータをダウンロードし、調整し、提案を行ったり、あるいは自分自身で試してみることもできる。

想定利用者は技術に精通した都会人ではなく、企業もサービスも数十億ドルの評価額を求めるものではないので、これは技術的には特に注目すべきアプリケーションではない。しかし、貧しすぎて買う余裕のない子供に義肢を与えるというゴールは、大声で宣伝される価値がある。

「Poの作成と開発で、私たちは新しいテクノロジーの力を目の当たりにしました。3Dプリント、Myoアームバンド、そしてオープンソースです」とDijkhuisは語った。「私たちは、社会的影響へと適用されるこれらの技術が、業界を変革するだけでなく、人工装具の未来のためのゲームルールを書き換えて、イノベーションパワーを世界中の人に届けてくれるものと信じています」。

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(翻訳:Sako)

モバイルテクノロジーと社会起業で貧困をハッキングする

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[筆者: Thane Kreiner](サンタクララ大学Miller社会起業センターの事務局長)

シリコンバレーでは、“ハッカー”という言葉が、クリエイティブで独創的で、困難な課題を達成できる巧妙な方法を見つけることが上手な人を指す、褒め言葉へと進化してきた。“hack”という言葉が通常表現している一部のそのほかの意味ではなく、このような観点から、私は最近のTEDxの講演で、フランシス法王と国連を、貧困のハッカー(hackers of poverty)と呼んだ。

世界の貧困は、困難な課題と呼ぶにふさわしい。貧困救済に投じられているお金は、2013年を例に取ると、およそ1500億ドルと推計される。しかしそれにも関わらず、75億近い世界の人口のうち40億もの人たちが、一日平均4ドルに満たない生活費で暮らしている。まさしくそれは、困難な課題そのものである。

貧困は、次のような恐ろしい結果をもたらしている:

  • 10億人が安全な飲み水にアクセスできない。
  • 25億人が屋外で排便し、コレラやチフスなどの下痢性疾病や腸の寄生虫を拡散して、子どもを20秒に一人殺している。
  • 16億人が電気水道ガスなどのない生活をし、それ以外に10億人が不安定な公共光熱サービスに依存している。
  • 30億人が屋内で木を燃やして炊事をしているので、空気汚染により年間430万人の主に女性と子どもが死亡している。
  • 世界の金融システムから疎外されている人びとのうち、30億人の零細農民家族は、収量を上げるための細流灌漑や肥料、酪農収穫物等を保存するための冷蔵施設など、単純な生産資本にも投資できない。

貧困現象は主に三つの原因によって、日に日に悪化している:

  1. 2050年には世界の人口が今より20億人増えている。人口増加の大半はアフリカと東南アジアで生ずる。貧困率が下がったとしても、貧困者の絶対数は増加すると思われる。
  2. 今は、人類の歴史上最大の、人口の都市移動が起きている。すでに世界の人口の半分以上が、職を求めて都市で生活している。しかしこれら都市移民のあまりにも多くが技能と教育を欠くため、良い職を見つけることができない。彼らは都市の貧困層になり、故郷の田舎と違って、簡単に食べ物を手に入れることもできない。
  3. 今世紀末には地表の平均気温が摂氏4度上昇し、多くの科学者たちが壊滅的と呼ぶ限界を大きく超える。気候変動の最初で最大の被害者が、貧困層である。旱魃や熱波、海水温の上昇、水の酸性化などによって食糧不足が深刻化する。
今地球上には、毎日トイレを使える人よりも携帯電話を持っている人の方が圧倒的に多い。

これまでの貧困対策は、中央集権的でお役所的な開発事業や政府の補助が多く、効果を上げていない。だからこそ、“貧困をハッキングする”視点が重要である。貧困ハッカーのやり方は、各国政府等と、どう違うのか?

二つの貧困ハック: 分散システムと社会起業

これまででもっとも成功した分散システムは、モバイルテクノロジーだ。モバイルの契約ユーザーは世界に68億人いて、この惑星上ではモバイルフォンにアクセスする人びとの方が毎日トイレットにアクセスできる人より多い。貧困ハッカーは、この、ほぼ全面的に普及しているモバイルテクノロジーを利用する新しい投資やローン、クレジット等の方式により、貧困の経済を変えようとしている。すでに、南半球におけるモバイルマネーは、北半球の集権的な銀行のパラダイムを凌駕しつつある。

社会起業(social entrepreneurship)は、西欧的世界で確立した基本的なビジネスの原則と慣行を発展途上地域に適用して、成果を上げつつある。ただしそれはトップダウンの援助的アプローチではなく、社会起業は、貧しくて経済や社会の主流から疎外されている人びとのコミュニティの中で作られたソリューションを、育成し支援する。それにより、それらのソリューションのより広範な普及と、長期的永続性を担保しようとする。

社会起業によって作られた社会的エンタープライズ(組織、団体、人的ネットワーク)は、途上世界におけるエネルギーと食糧の提供方式に革命をもたらす、貧困ハッキングだ。また、それらのソリューションの資金確保や、配布、販売などの方式も刷新する。そしてそれにより、貧困層の人びとを経済活動の主役へと変えていく。

ところでフランシス法王と国際連合は、貧困をハッキングすることと何の関わりがあるのか? 法王が最近行った二度目の回勅Laudato Si’(汝をほめたたえよ)*と、国連が最近発表したSustainable Development Goals(SDGs)(持続可能な開発の目標)には、同じメッセージがこだましており、基本的に同じ結果を求めている: 今のシステムは壊れている。ハックすることが必要である。〔*: きまり文句として‘神をほめたたえよ’となるところを‘あなたを…’としたところが現法王らしいところ。〕

法王フランシスと国連のSDGsは、‘やり方を変える’ためのガイドラインだ。もっとクリエイティブで実効性のあるやり方に、変えること。そしてそれを実際にやるのは、われわれ全員だ。私たちは全員が貧困のハッカーになり、自分にできることをしていく。もはや、一刻の猶予もない、飾り言葉ではなく文字通り。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))