RightEyeのポータブル視線追跡検査器は、脳震盪の影響や読書の学習障害などを素早く検査できる

世の中では「目は心の窓」だと言われているが、生理学的に言うならば「目は脳の窓」が正しい表現だ。

RightEyeはその窓を通して、脳震盪やその他の脳の障害からもたらされる、一般的だが微妙な問題を発見する。その高速でポータブルな視線追跡ステーションは、数分のうちに、医者に行くべきか、プロの球技選手になるべきかを判定してくれる。

人間の目がどのように動いているのかを見ることで、多くのことを知ることができることがわかった。人びとは自分自身では気が付いていないかもしれないが、数多くの基本的な動作(目をキョロキョロさせたり、動く目標を目で追ったり)を私たちがどのように(巧みに)行うかは、個々人の間でかなり異なっている。例えば、あなたの目は、直線に沿って視線を移動させようとするときに、過剰なほどきっちり進んだり、まっすぐ移動できなかったり、あるいは上下にふらつくことがある。

健康な人たちなら、これらの変動は安全な範囲内に収まる、それは個体間に普通に見られる違いの一部だ。しかし、ベースラインを外れた特定のパターンは、脳震盪や目の筋肉の問題、さらにはパーキンソン病や自閉症スペクトラム状態などの強い指標となる。

RightEyeは、こうした動きを、オールインワンのデスクトップのように見えるカスタムデバイスで追跡する。このデバイスは、単一目的のコンピュータに組み込まれたTobii視線追跡モジュールを使用する。またデバイスには単純な検査用ライブラリが組み込まれている。基本的なEyeQ(と彼らは呼んでいる)検査の実施に必要なのは5分ほどだ。特殊な検査を追加しても少し増える程度である。そして結果はすぐに得ることができる。

どんなものかという雰囲気を掴んでもらうために説明すると、例えばゲーム仕立ての1つの検査では、あなたは宇宙船を守らなければならないが、そのためには迫ってくる他の宇宙船を見ることによって破壊する必要がある。しかし、特定の色の船は破壊してはならない。つまり、周辺視野でそれらを検知しし、それらを見ることは避けなければならないということだ。また別の検査では、画面の両端に現れる2つのターゲットの間で目を素早く往復させて、正確で機能的な眼球運動(目の筋肉による微調整)を検証する。

それぞれの目は独立して追跡され、ペアとしてのパフォーマンスが即座に評価される。わかりやすい結果シート上には、それらの実際の動きと、ベースラインからどのように逸脱したかが示される。

デバイスはコンパクトでバッテリーで約8時間動作する、そのため病院の外での使用に理想的なものである。たとえば学校の保健室から、NFLの試合場、そして家庭などに至るまで、あらゆる場所で利用可能となる。

私はCESで、デバイスを使って自分をテストしてみた(私の視覚は正常だったが、再検査してみたい)、そしてその後でRIghtEyeの社長であるBarbara Barclayに話を聞いた。この技術の最もエキサイティング(というのは彼女の熱意から判断してのことだが)な2つの応用分野は、子供たちの視覚に関連した認知障害の特定と、スポーツを行う人のための一種の視力検査を作成することだ。

例えばある子どもに、読むことを学ぶことや、注意力に問題があったとしよう。今日では、このような場合にすぐ想起されるのはADDである。しかしそれが視覚の問題である可能性も決して少なくはない。視線の動きの微妙な違い、おそらく1行のテキストを読んでいく時に、水平から外れてしまうことは、ページや黒板を読むことを、困難で苦しいものとしてしまうだろう。3年生の子供がそれを続けることができるだろうか?

読書集中検査では、視線がテキストの行に沿ってどのように動くかを追跡する。

これは画期的な新しいアイデアではないが、個人の眼球運動を信頼性をもって客観的に評価することは、通常はある振舞に対する説明がつけられず、最後に専門家に会いに行った場合のみ可能になることだ。RightEyeの検査は基本的に自動的に実行され、数分のうちに視力障害の可能性を検出または排除することができる。正直なところ、子供もこれを楽しいと思うのではないかと思う。

Barclayはこれに関する個人的な経験をしている。彼女の娘が何度かスポーツでフライングを重ねたあと、その原因がシステムの示唆した単純な視覚上の問題にあるという、健康上の課題が判明したのだ。

RightEyeは2016年に、目の動きのパターンをパーキンソン病やハンチントン病、自閉症スペクトラムの状態に結びつける研究に基づいて、一対の検査実施の権利を取得した。それは魔法の弾丸ではないが、その検査の迅速かつ容易な特性は、日常的なスクリーニングには理想的だ。

自閉症スペクトラム検査は、1歳から3歳の子供のためのもので、人びとの画像と幾何学的形状の画像との間の眼の動きを見るものだ。人びとよりも図形により興味を抱くことは、少なくともその子供が少くともさらなる検査を受けた方が良いことを示す、優れた指標である。

パーキンソン病とハンチントン病の検査では、これらの症状に見られる運動の変性に伴う、より知られたパターンを観察する。それらは、任意の年齢の人びとに適用することが可能であり、(視線追跡設定を用いて)病気同定に大いに寄与する。

全く違う観点ながら、おそらくより直接的な便益となっていることとして、Barclayが私に語ってくれたのは、検査は逆に優れた人物を発見するためにも用いることができるということだ。すなわち優れた視覚の持ち主の発見だ。

ある人物が検査を受けて、その結果、より速く、より正確な眼球運動や、より素早い対象の補足、そして通常よりも優れた対象追跡能力を持つことが判明することがある。もし打撃、守備、ゴールキープなどのタイトなプレーをしているならは、それは本当に貴重な資産となる。

健康な眼球運動の報告例(左)と脳震盪を起こした状態のもの(右)。

もしあなたがスカウトかコーチであれば、それもやはり持つべき貴重な資産となる。もしある選手がフィールドでは左翼側の球をよく捕えることができて、右翼側はそうでもないという場合には、もしかすると彼は自分の左側に飛んできた球を追うことに問題があるのかもしれない、彼の目が右の方を向いているのだ。

それだけではなく、トラブルが発生している場合は、現場で脳震盪やその他の外傷の影響を検査することができる。このような怪我がどれほど広範囲に及ぶか、そして繰り返された脳震盪の危険性が大きいことを考えると、早期の頻繁な検査は文字通り命を救うだろう。

Barclayによれば、現在7つのMLBチームが、RightEyeの技術を使ってプレーヤーの評価を行っていると語った。医療面の用途に関しては、現在同社は200の顧客を抱えていると語った。新しいハードウェアはその数を増やすのに役立つ筈だ。

おそらくもっと重要なのは、米国最大の視力保険会社であるVSPの後援を受けていることだろう(それゆえに影響力も大きい)。それは、とてつもなく大きな信任投票であり主流になるための力となる。既存の保険によってカバーされるということを知ること以上に、人びとがシステムを使うことを動機付けることはないのだから。

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(翻訳:sako)