日本版Y Com目指す——YJキャピタルとEast Venturesが新アクセラレーター「コードリパブリック」立ち上げ

左からYJキャピタル代表取締役の平田竜氏とEast Ventures代表取締役の衛藤バタラ氏

左からYJキャピタル代表取締役の平田竜氏とEast Ventures代表取締役の衛藤バタラ氏

ヤフー傘下のCVC(コーポレートベンチャーキャピタル)であるYJキャピタルと、独立系VCのEast Venturesがタッグを組んで新たなアクセラレータープログラム「コードリパブリック」を開始する。4月25日から第1期参加者を募集する。プログラムの期間は3カ月。今後は年2回ペースで開催していく予定だ。

コードリパブリックは、YJキャピタルとEast Ventures共同で運営するアクセラレータープログラム。募集の対象となるのは「インターネットを使ったビジネスを検討しているベンチャー企業」となっており、国籍不問、法人化前のチームでもよいという。これだけ聞けば間口は広いようにも見えるが、「審査の敷居は高い。数を求めるのではなく、クオリティを重視したい」(YJキャピタル代表取締役の平田竜氏)という。また条件上はエンジニア必須となっていないが、「チームの中にいた方がいい。資金がない中での外注は難しい」(East Ventures代表取締役の衛藤バタラ氏)ということで、開発力のあるチームを求めているようだ。

審査を通過したスタートアップ(およびその準備を進めるチーム)には、East VenturesおよびYJキャピタルから合計700万円の出資(一律バリュエーション1億円で7%の第三者割当増資。必須)のほか、3カ月間のインターネットビジネス運営・企業経営向けの講座、1週1回のメンタリング、デモデイへの参加、オフィススペース(今春オープン予定のEast Venturesの新六本木オフィスの一部となるコワーキングスペースとのこと)の提供などが行われる。

プログラムのスケジュールは以下の通り。
2016年4月25日〜6月17日:第1期の募集期間
2016年6月下旬〜7月上旬:審査期間(1次:書類審査、2次:面接)
2016年8〜10月: 第1 期のプログラム期間
2016年10月31日: 「Demo Day」を開催
2016年11月中旬: 第2期の募集開始

メンターにはEast Ventures代表取締役の衛藤バタラ氏、同じくEast Ventures代表取締役の松山太河氏のほか、YJキャピタル代表取締役の平山竜氏、YJキャピタル取締役 兼 ヤフー執行役員ショッピングカンパニー長の小澤隆生氏、ヤフー上級執行役員 メディア・マーケティングソリューションズグループ長の宮澤弦氏、ヤフー執行役員パーソナルサービスカンパニー長の田中祐介氏、ヤフー執行役員CMOの村上臣氏、YJキャピタル パートナー CFOの戸祭陽介氏、YJキャピタル パートナー COOの堀新一郎氏が担当。今後は外部メンターの招聘も検討する。またゲストアドバイザーとして、メルカリ代表取締役社長の山田進太郎氏、KAIZEN platformの代表取締役社長の須藤憲司氏、ラクスル代表取締役の松本恭攝氏、フリークアウト取締役COOの佐藤裕介氏が参加する。

2010年7月にスタートしたOpen Network Labをはじめとして、国内でもいくつかのインキュベーション・シードアクセラレーションプログラムが展開されてきた。これまでプログラムを持っていなかったYJキャピタルだが、「これまでYJキャピタルでも数千万円前半程度の小さいステージ(シード・アーリー期)への投資は行ってきたが、より少額の投資をどうやっていくべきかという議論があった」(YJキャピタル代表取締役の平田竜氏)と考えていたのだそう。

「日本のベンチャーを見たとき、経済規模を考えてもまだ伸びる余地はある。でも一番初め、創業期のところではまだ仕組みが少ない。Y Combinatorの日本版を作りたい。3カ月の期間で世に問えるプロダクトを作れる人達を求めている」(平山氏)

East Venturesでも一度プログラムを実施したがリソース不足もあって定常的に実施することが難しかった。また、シリアルアントレプレナーなどにはリーチできているが、「肌感覚でもデータで見ても、まだまだ起業家は少ない。1人ずつ声をかけるのにも限界がある。プログラムを通じてより起業家を支援していきたい」(衛藤氏)

コードリパブリックが重視するのはプログラム自体がコミュニティであり、エコシステムを作ることだという。まず、必須ではないが基本的にプログラム参加チームはコワーキングスペースでサービス開発を進めてもらうのだという。「ここはY Combinatorというより500 Startupsの考え方だが、彼らは(コワーキングスペースにプログラム参加者を入居させて)オフィスで切磋琢磨している。『ディナーでないと顔を合わせない』というのではなく、共同体になってほしい」(平山氏)

今後は外部からもメンターを招聘する予定。外部メンターに対しては、プログラム参加メンバーへの先行的な出資の交渉権などを付与することも検討しているという。「(Y Combinatorでは)デモデイが行われる頃には各社のバリュエーションが上がっている。なので『先に出資したいのであれば、先に彼らを鍛える』という仕組み自体ができている。それがシードのエコシステムになっている。あれ自体を実現したい」(平山氏)

Y Combinatorの社長Sam Altmanしぶしぶ認める: “うちは独占的アクセラレータだ”

Y Combinatorはスタートアップのアクセラレータの世界を支配している、と思っておられるあなた、YCの社長のSam Altmanもそう思っているのだ。

TechCrunch Disrupt New Yorkのステージで壇上インタビューを担当したTechCrunchのファウンダMichael Arringtonは、Altmanから、ちょいと物議を醸しそうな話を引っ張り出そうとして彼に、“YCがアクセラレータのエコシステムから酸素の99.9%を吸い取っているのではないか”、と尋ねた。Altmanは、ハードウェアなど特定の分野でクールにやってるアクセラレータはほかにもいる、と反論した。

ただしAltmanは、YCはほかの育成事業を経てきたスタートアップにはあまり投資しない、と言葉を加えた。

“そういう意味では、そのほかの段階の投資と違ってアクセラレータの分野には独占がある、と思う”、と彼は言った。

Arringtonは、Y Combinatorが独占だと思うか、としつこく食い下がった。気まずそうな一瞬の沈黙のあとAltmanは、“そうだね。うちは優秀な企業だけをつかまえてる。うちの仕事のいちばん難しい部分、精力の90%を取られる部分がそこだね”、と答えた。

AltmanがYCの社長になったのは2月で、それ以降彼は、YCの投資から起きうる紛争やいわゆる“信号送出リスク(signaling risk)”*の軽減に努めてきた。たとえば投資構造の改革YCのパートナーたちによる投資の制限などを通じて。〔*: signaling risk, 緩い任意のパートナーシップの場合、その後の投資が継続せず、それが、対象企業の内情に関する“悪い信号”として世間に流れること。また逆に、間違った“良い信号”もありえる。〕.

また技術的な面では、デベロッパを一人から三人に増やし、今後もっと増やす予定だ。Altmanによると、今進めている二つの主なプロジェクトは、Hacker Newsのアグリゲータと、同社独自のインターネットツールだ。“VC企業を本当にスケールする方法は、ソフトウェアだ”。

さらに、本誌も記事にしたように、YCはStartup Schoolを国際展開した。

Altmanは、企業が初期の理想や焦点を失う理由について、こう言うWeb: “伝道者(missionaries)だった者が金目当ての傭兵(mercenaries)になってしまう”。とくに問題なのが、IPOだ。

“公開企業になることは、多くの企業にとって、たいへんなことなんだ”、と彼は言う。“FacebookやGoogleは、四半期ごとに恐ろしい顔をしてやってくる数字のプレッシャーをうまくあしらっていると思うが、ぼくが見たかぎりでは、対応の下手な企業がほとんどだね。本来の仕事そっちのけで、この‘四半期問題’に翻弄されてしまうんだよ”。

そしてAltmanの説では、“彼らのいちばん多い間違いは、視野狭窄的に、短期的な最適化に勤しんでしまうことだ”。良い企業とは、長期的な最適化に正しく取り組む企業だ、と彼は主張する。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))