疾患名で地域の診療所を検索、“地域医療連携”の実現目指す「メドプラス」が5000万円を調達

医療機関向けのSaaS「メドプラス」を開発するAppdateは12月4日、ジェネシア・ベンチャーズと公的金融機関などから総額5000万円の資金調達を完了したと発表した。同時に、メドプラスのベータ版を本日よりリリースする。

Appdateが開発するメドプラスは、地域医療連携の手助けとなるSaaS型の医療情報データベースだ。日本の医療費が急増しているというニュースをよく目にするというTechCrunch Japan読者も多いだろう。政府はその対策の1つとして、同一の中核病院で半永久的に医療を提供しつづけるという従来の「病院完結型」の医療から、中核病院と地域の診療所が連携しながら適材適所で医療を提供する「地域医療連携」の実現を進めている。

高額な医療機器を多く揃える都内の大学病院などは固定費が高く、軽度の患者を必要以上に多く診察していては赤字になってしまう。一方、地域の診療所にも十分な医療を提供するだけの能力があるにも関わらず、患者が中核病院に集中してしまっているのが今の現状だ。中核病院が抱えきれない患者を地域の診療所に紹介することで、適切な医療を適切な医療機関で受けるという本来あるべき姿に近づけることができる。

しかし、これまでの医療機関間でのやり取りはとてもアナログなものだった。やり取りは電話やメールで行なわれ、紹介できる診療所のデータベースは医者の頭のなかにある。

そこでAppdateは、厚生労働省が毎年公開しているオープンデータを使って地域の診療所をデータベース化し、それを医療期間向けに提供している。メドプラスでは、患者が住んでいる地域にある診療所を疾患名ベースで検索できるほか、営業でいうところのCRM情報のような定性的なデータも「営業日誌」として残しておくことができるのも特徴だ。

これまでにも内科や外科などの診療科目で診療所を検索できるサービスはあるが、メドプラスの最大の特徴は、診療科目ではなく疾患名(例えば糖尿病など)で検索できることだとAppdate代表取締役の大嶋啓介氏は話す。Appdateはこの疾患名による検索システムを特許出願中だ。

「診療科目で検索すると、どうしても関係のない医療機関まで検索結果に出てきてしまう。また、病院は遠方にある診療所の情報をほとんど知らないのが現状であり、そのような情報を検索できるツールは画期的だと思う」(前 三井記念病院、地域連携部地域連携室チーフの窪田勝則氏)

2016年6月に創業のAppdateは、今回調達した資金を利用してエンジニアや営業員などの人材の強化を進めいく。メドプラスの本リリースは来年春ごろを予定しているという。

「医療と言うと、とかく治療自体に目が行きがちですが、その一歩前の医療連携や医療事務などの周辺領域のIT化を促進することで、医療全体の底上げを図り、最終的には患者の健康に貢献したい」(大嶋氏)