ポルシェ(Porsche)は米国時間の8月19日、発売予定の完全電動スポーツカーであるTaycanにApple Musicを組み込むことを明らかにした。これは、Apple Musicが車載用のスタンドアローンのアプリとして採用される最初の例となる。
この発表は、ポルシェが車内のデジタルエンターテイメントに注力しているというだけでなく、Apple(アップル)とのさらなる関係強化にも取り組んでいることを物語るものだ。
Apple Musicの標準装備は、熱い期待を寄せられているTaycanから始まることになる。しかし、Appleとポルシェとの関係はそこで終わるわけではないと、ポルシェ・ノース・アメリカのCEOであるKlaus Zellmer(クラウス・ゼルマー)氏はTechCrunchに語った。
AppleのCarPlayは、iPhoneのルックアンドフィールを、車のコンソール中央のディスプレイにもたらすものだが、すでに新しいポルシェのモデルには採用されている。そこにはTaycanも追加されることになる。さらにCarPlayのときと同じように、完全に統合されたApple Musicアプリも、やがてすべてのポルシェのラインナップに採用されていくはずだ。
その意図するところは、すべてのポルシェの顧客に「同じバンド幅のサービス」を提供することだと、ゼルマー氏は言う。そしてApple Musicは、ストリーミングサービスを利用できる技術を採用した他の新しい車種にも導入されるということ。これと同じ趣旨の発言は、ポルシェAGの取締役会メンバーであるDetlev von Platen(デトレフ・フォン・プラテン)氏の声明の中にも見られる。
現状では、Appleとポルシェのパートナーシップにより、Taycanのオーナーは、車載のタッチスクリーンまたはボイスアシスタントを使ってApple Musicにアクセスできるようになっている。そして、その中の5000万曲と、Beats 1ライブストリーミングRadioステーション、キュレーターによって選ばれたプレイリストを利用できるのだ。Apple Musicは、個人会員なら9.99ドル(日本では9800円)の年会費がかかるが、最近有料会員が6000万人を超えた。
ここで言う「統合」とは、Taycanのデジタルタッチスクリーンに、Apple Musicアプリのアイコンが表示されることだけを意味するわけではない。ポルシェはエクスペリエンスをシームレスなものにしたかった。そこで面倒なサインイン、iPhoneとのペアリング、あるいは車用アカウントの準備といった操作をすべて省いた。それは、ポルシェがオーナーのApple IDを独自のPorsche Taycan IDにリンクさせることで実現している。それにより、ユーザーのiPhoneアプリ上のApple Musicコンテンツが、Taycanの中でもそのまま使える。
TaycanのApple Musicは、ポルシェのボイスアシスタントからもアクセスできる。ユーザーは、曲、アルバム、プレイリスト、ラジオ局の再生をしゃべってリクエストすることが可能だ。
ポルシェの新規、および既存のオーナーには、Apple Musicの6か月間の無料サブスクリプションが提供される。これは、Apple Musicの統合が、いずれはポルシェの他の車種にも適用されることを意味している。
無料期間が終われば、オーナーはストリーミングサービスの料金を支払う必要がある。とはいえ、Taycanオーナーの状況が米国におけるポルシェの顧客ベースを反映しているとすれば、多くの人がすでにApple Musicの会員になっている可能性が高い。またゼルマー氏によれば、米国のポルシェの顧客の80%以上がiPhoneを所有しているという。
またポルシェは、Taycanのオーナーに3年間の車内インターネットアクセスを無料で提供する予定であることも明らかにした。
「私たちの顧客は、ストリーミングのためのデータ消費量について何も心配する必要はありません」と、ポルシェAGのポルシェコネクト部門における販売およびマーケティング担当責任者であるLars Buchwald(ラース・ブッフヴァルト)氏は、アトランタにあるポルシェの北米本社で開かれた今回のイベントで述べた。
ゼルマー氏によると、Appleとポルシェは自然に調和するのだという。両社のブランドは、デザイン、テクノロジー、イノベーションのいずれをも重視する姿勢からして、かなり相性がいいということ。
両社のブランドは、クローズドシステムを好む価値観という点でも共有している。たとえばポルシェは、Apple CarPlayのライバルであり、オープンソースベースのAndroid Autoをサポートしていない。それは、必ずしもApple Musicが、Taycanや他のポルシェ車に統合されうる唯一のアプリであることを意味するものではないとしても、それ以外のものが採用されることはまずないだろうし、あったとしてもごくまれということになる。
「一般的な話ですが、私たちは常にプライバシー上の理由によって、システムを管理したいと考えています」とゼルマー氏は言う。「関係のない、あるいは不適切なマーケティングメッセージや広告が、私たちの顧客の目に触れることは望ましくないと考えています。私たちは、私たちの車のデジタルエコシステムに対して、だれによるアクセスを許可するのか、ということについて、常にかなり気を使っています。Appleが私たちのパートナーとして適している理由は、彼らの姿勢がまったく同じだからということもあるのです」。
画像クレジット:Porsche/K7 Musicの厚意による
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(翻訳:Fumihiko Shibata)