衛星ブロードバンドサービスのAstranisが約99億円を調達

米国のシードアクセラレーターであるY Combinatorが支援するAstranis(アストラニス)がデットとエクイティの組み合わせによるシリーズBで9000万ドル(約99億円)を調達した。本ラウンドはVenrockがリードし、2018年のラウンドをリードした既存投資家のAndreessen Horowitz(アンドリーセン・ホロウィッツ)がかなり出資した。新たに調達した資金は初の商業衛星打ち上げに当てられる。この衛星は世界のインターネット非接続のかなりのマーケットにサービスを提供することを目的とする、未来のインターネットサービスの基礎となるものだ。

Astranisは、Andreessenがリードした1350万ドル(約15億円)の資金調達を発表した2018年に突如現れ、静止衛星を使った低コストで信頼できるインターネットを提供する計画を明らかにした。この手法は、かなりの数の衛星を地球低軌道に展開しようと計画している、このところ急激に増えている新規参入企業とは異なるアプローチだ。地球低軌道に展開する衛星は1カ所に留まらず、サービスを継続させるために地上のステーションを介してリレーシステムのように接続をつないでいく。

Astranisの静止衛星モデルは、すでにある宇宙からのインターネット接続提供方法に似ている。この方法では地球からかなり離れた静止軌道に大容量通信衛星を展開する。Astranisの画期的なアプローチでは従来の衛星の20分の1ほどの小型衛星を使う。重さは約770ポンド(約350キロ)で昔の衛星の1万4000ポンド(6350キロ)に比べるとかなり軽量だ。Astranisは超サイドバンドのソフトウェア無線技術により小型衛星の使用を可能にしている。この無線技術では、小型かつ複雑ではないハードウェアでより広域をカバーできる。これはかなりの宇宙空間を節約できるばかりでなく、ものの数カ月で衛星をつくって打ち上げることができる。昔の大型の静止通信宇宙機は準備に数年もかかっていた。

前述したように、本ラウンドはデットとエクイティの組み合わせだ。Y Combinator、そしてVenrock、Andreessenに加えて他の企業も参加する4000万ドル(約44億円)のエクイティファンディングを含む。残る5000万ドル(約55億円)のデットはTriplePoint Capitalが受け持つ。Astranisは今年と来年、インターネットサービスプロバイダー提携の獲得と、政府や他の産業との関係構築に注力する。

Astranisは昨年、初の商業衛星の打ち上げでSpaceXと契約を交わした。早ければ2020年第4四半期の打ち上げを目指す。Astranisはこれまでに1億800万ドル(約119億円)を調達したが、SpaceXのStarlinkやAmazonのKuiperなど、異なる技術で同じ機会を狙う資金豊富な競争相手がいる。

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(翻訳:Mizoguchi

衛星インターネットスタートアップのAstranis、Falcon 9ロケットによる初打ち上げを契約

Y Combinatorが支援するスタートアップのAstranis(アストラニス)は、来年の第4四半期にFalcon 9ロケットで初となる商用通信衛星を打ち上げる予定だ。Astranisの目標は、現在ブロードバンドインターネットにアクセスできない世界の膨大な人々の市場を開拓することで、既存の衛星よりもはるかに早く製造して打ち上げられる低コストな人工衛星を使い、既存のグローバルな携帯通信ハードウェアの価格を大幅に下げることだ。

Astranisの衛星は小型で製造が簡単なため、コスト効率が非常に高く、今後の通信事業者や接続プロバイダーのパートナーの事業展開を変えうる。このアプローチは、すでにアラスカ州で衛星ブロードバンド接続の拡大を目指して設立された、Microcom(マイクロン)の子会社であるPacific Dataport(パシフィック・データポート)との提携を獲得している。Astranisによると、SpaceXのロケットで静止軌道に1機の衛星を打ち上げることで、アラスカのインターネットプロバイダーのネットワーク容量を3倍となる7.5Gbps以上に拡大し、さらに潜在的にコストを「3分の1」にすることができる。

なお、これはAstranisが宇宙に送る初めての衛星ではない。2018年にデモ衛星を打ち上げ、技術が宣伝どおりに機能することを示した。Astranisのアプローチは、SpaceX自身のStarlinkプロジェクトなど、衛星ベースのインターネットを提供しようとする他のアプローチとは異なり、サービスを提供する地域の上空に留まる衛星を構築することに焦点をあてている。これは、地球低軌道に衛星コンステレーションを構築して、カバーエリアを広げるアプローチとは対象的だ。後者では、常に1機以上の衛星がカバー範囲に存在し、さらに衛星から衛星へと接続を引き継ぐ必要がある。

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(翻訳:塚本直樹 Twitter