気が散らないワープロ「Freewrite」の最新モデルはヘミングウェイのモノグラム付きアタッシュケース付属

2020年のレビューで、Freewrite Traveler(フリーライト・トラベラー)を「傑出している、しかし高価」であると評した。Astrohaus(アストロハウス)の気の散らないワードプロセッサー専用機は、最新バージョンでも後者の問題をまったく気にかけていない。実際、Ernest Hemingway Freewrite Signature Edition(アーネスト・ヘミングウェイ・シグネチャー・エディション)は、前モデルよりも300ドル(約3万3000円)も高い。

しかし、この最新バージョンのハードウェアは実用的ライティングツールを超える何かを追求している。事実Astrohausは、2014年にKickstarter(キックスターター)で「Hemingwrite」の名前で誕生した同社製品の最新バージョンに、ヘミングウェイ家の祝福を受けた。

新製品は「日はまた昇る」の著者の精神と美学から何かを受け継ごうと努力している。「2015年にFreewriteと名前を変えましたが、Hemingwriteのコンセプトは世界の注目を集めました」と共同ファウンダー兼CEOのAdam Leeb(アダム・リーブ)氏がリリースに書いた。そしてこのたび同社はヘミングウェイ家の承認を得た。

新バージョンは携帯性と引き換えに美しさを求めた。付属のアタッシュケースはいにしえの作家の道具を彷彿させる。最近ならばCrosley(クロスリー)などが出しているレトロターンテーブルだろうか。専用キャリングケースの付いたトラベルタイプライターはかつても存在したが、Freewriteの極めてスリムな形状がずっとコンパクトなつくりを可能にしている。

Astrohousの紹介文は以下のとおり(ロン・バーガンディ氏の声で聞くのがベストだ)。

Hemingwriteは、独自のデザインとグリーンのキートップを備え、手作業で磨かれたアルミニウム筐体はコーティングされておらず時間とともに独特の色艶を生み出します。部品はすべて手加工で同じものは2つとありません。Hemingwriteには、ヘミングウェイのモノグラムがついたクリーニングクロスと特製アタッシュケースが付属しており、装置を安全に格納し、ひらめきを得られるどこへでもエレガントに運ぶことができます。ハードタイプのHemingwriteアタッシュケースは、リッチなコニャックカラーのレザーでつくられ、クリーム色のベルベットで内張りされています。内側の深いポケットには、本やペン、ノートなどのひらめきの道具をしまっておけます。

ノートパソコンでもの書くときの雑音を減らしつつ、いにしえの美学に敬意を払うなにかを探しているあなたのために、Ernest Hemingway Freewrite Signature Editionは899ドル(約9万9000円)で販売中だ。

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(文:Brian Heater、翻訳:Nob Takahashi / facebook

自動車の都デトロイトは今もハードウェアスタートアップにとってハードモード

「これは少々面倒な話なのですが」とAdam Leeb(アダム・リーブ)氏が笑いながら切り出した。ミシガン州デトロイトのAstrohaus(アストロハウス)に2度の場面で起きたその話は、確かに込み入っていた。ハードウェアスタートアップの共同ファウンダーでCEOの彼は、サンフランシスコやニューヨークなどの大都市以外に拠点を構える幹部と話す時によく見られるような地元応援団タイプではない。

デトロイト郊外からやってきたリーブ氏は、2014年秋にPatrick Paul(パトリック・ポール)氏とともにここ自動車の都、デトロイトで会社を立ち上げた。Astrohausの最初の(かつ最も知られている)製品は、ユーザーに「気をそらされずに書く体験」を提供するべく誕生した。

「私は物書きではありません」とリーブ氏は製品紹介のときに言った。「この製品が私の興味を引き、私を動かしたのは、たしかに物を書くことですが、私の関心事のすべてに共通するのは、プロセスと生産性です。私はそこに特別思い入れがあります。ものごとを単純化して、誰もが煩わされることなく本当に楽しく使えるようにしたいと考えています」。

MITの機械工学科出身のリーブ氏と、ミシガン州立大学出身でソフトウェア開発者のポール氏は、デトロイトのスタートアップコミュニティで出会い、ワードプロセッサーのプロトタイプを作り始めた。それは、最近テクノロジーを生かしながら、現代のライターたちが十分すぎるほど感じているパソコンやタブレットに内在する雑音を取り除いたものだ。

若きスタートアップは、Kickstarterを通じて自らを世界に紹介するべく、2014年にキャンペーンを開始した。

「Hemingwriteはそれまでの入力ツールのさまざまな特長と最新テクノロジーを組み合わせた製品です」と会社は謳った。「タイプライターのように目的に特化し、キーボードとバッテリー寿命はパソコンより優れ、ワードプロセッサーのように雑音フリーです。そして、文書はリアルタイムでクラウドに保存されるので、作業の保存や同期、バックアップの心配をする必要はありません」。

興奮と暖かいレビューに迎えられて(中にはこれを「仰々しく、独りよがりのナンセンス」と評したあまり暖かくないレビューもあった)、500ドル(約5万4800円)を超えるタイプライターの再発明は登場した。クラウドファンディングコミュニティは熱狂し、35万ドル(約3800万円)近くが集まった。そして2015年6月、プロダクトは名前を変えた。

「私たちのブランドを、中身を表す名前に変え、特定の著名なライターの人物像とのつながりをなくしました」と2015年のKickstarterアップデートに同社は書いた。2カ月後、会社はニューヨーク市に移転した。

「実は引っ越したくてたまらなかったんです。デトロイトでなんとかする方法が私たちにはわかりませんでした」とリーブ氏はいう。「そこにハードウェアのシーンはなく、私のつながりは主にニューヨークにありました。パトリック(・ポール)を説得し、調達した資金がある程度あったので、私は『ニューヨークへ行こうぜ』という感じでした。そこには間違いなくハードウェアの居場所があり、私たちは間違いなくその一部でした」。

再びそこで、人生に邪魔が入る。ポール氏が会社を去り、リーブ氏が結婚したKacee Must(ケイシー・マスト)氏は、デトロイトに住み、地元のヨガ教室チェーンであるCitizen Yogaのオーナーだった。2018年、リーブ氏はAstrohausを再び誕生した地へと戻した。3年後の現在、チームはまだ比較的小さく、デトロイトの正社員5人と分散して働く契約社員たちのチームからなっている。

リーブ氏の、デトロイトでハードウェアスタートアップを立ち上げることについての感情は、明らかに入り混じっている。地元での採用や資金調達の難しさを嘆く一方で、地元の応援を強く感じることも認めている。「こういう小さなエコシステムでは、あらゆる場所の人々と知り合いになれます」と彼はいう。「誰とでも簡単に連絡がとれます。私の知る限り、デトロイトの会社はお互いを応援し合います。デトロイトのプライドはすごい」。

製造拠点をデトロイトに戻したことについての話の中で、リーブ氏はFreewriteやその後の製品を米国で製造するという目標達成が困難だったことを話した。

「製造ハブにいることの利点を高度なハードウェアスタートアップが活かすいうのはどこか別の世界の話です」と彼はいう。「ソフトウェア会社ならともかく、私たちにとってあまり利点はありません。現在製品は中国で作っていて、当面変える予定はありません。工場との関係は良好で、私も中国で長い時間過ごしています。それが彼らに適合した仕事。彼らは消費者向けエレクトロニクス製品を作っているのです」。

画像クレジット:Darrell Etherington

リーブ氏は、Andrew Yang(アンドリュー・ヤン)氏の設立したNGOであるVenture for Americaが地元採用に役立つことに気づいた。Astrohausの設立から数年が過ぎ、デトロイトの印象はラストベルト(寂れた工業地帯)ブームの抑圧された副産物から企業を立ち上げるのに有効な場所へと、劇的な変化を遂げた。

「この10年、この年は大きく変わりました」とリーブ氏はいう。「(Quicken Loansの共同ファウンダー)Dan Gilbert(ダン・ギルバート)氏が、ほとんど1人で街を立ち直らせました。彼を大嫌いな人はたくさんいますが、現実はといえば、この街のビリオネアは彼1人ではありませんが、デトロイトに巨額を投資したのはギルバート氏だけです。彼は郊外にあった自社オフィスをすべて中心街に集め、同じことをするようすべての企業を説得しました」。

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響は間違いなく続き、リモートワークが多くのテック企業の標準になる。ハードウェアスタートアップには、製品の開発やテストを進めるために、近い場所にいる理由がある。リーブ氏は、Astrohausの次期製品は、リモートコラボレーションの課題解決を狙ったものだという。

「私は新しいハードウェア製品として、コラボレーションとコミュニケーションのツールの開発を積極的に進めています」と彼は言った。「それは以前からある問題ですが、今やある種のコミュニケーションが欠けていることが大きな問題になっていると私は感じています。するべきことはたくさんあります。私は十分繋がっているとは感じられないのです、現在のテクノロジーをもってしても」。

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画像クレジット:Bryce Durbin / TechCrunch

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(文:Brian Heater、翻訳:Nob Takahashi / facebook