度々話題になるツイートからTurner Novak(ターナー・ノヴァック)氏を知る人も多いかもしれないが、同氏は常にミームメーカーとして活躍していたわけではない。
米国の地でシングルマザーに育てられたノヴァック氏。経済的な事情からインターネットにアクセスできないことも多々あった。あらゆるインターネット会社のお試しサービスを活用しながら乗り切り、トライアル後はインターネットがない状況が何カ月も続いたこともある。このときの経験こそが、同氏とテクノロジーとの関わり方を形成してくれたと同氏は振り返る。
「インターネットがいかに影響力の強いものであり、重要であるかを実感しました。またその時の経験のおかげで効率的な使い方を学ぶことができました」と同氏はいう。
そして現在、投資家となったノヴァック氏はその理念に基づいた会社を立ち上げた。Banana Capital(バナナキャピタル)はウェブ上に存在するコンシューマーテック系の創設者を見つけて資金調達する会社である。応募超過となったデビューファンドは999万ドル(約10億円)で、平均的な小切手の額は2万5千ドル(約270万円)から30万ドル(約3300万円)。Banana Capitalへの投資家にはWinnie(ウィニー)の共同創業者であるSara Mauskopf(サラ・マウスコフ)氏、Andreessen Horowitz(アンドリーセン・ホロウィッツ)のジェネラルパートナーであるSriram Krishnan(シュリラーム・クリシュナン)氏、GGVのマネージングパートナーであるHans Tung(ハンズ・タング)氏などが含まれる。またTwitter(ツイッター)のミームアカウントであるVC Starter Kit(VCスターター・キット)もLPとなっている。
ノヴァック氏は幅広い消費者セクターへの投資を予定しているが、中でも特にソーシャル、医療、eコマース分野におけるアーリーステージのスタートアップに関心を持っており、0.2〜3%の所有権を目標としているという。それと比較して、同じ運用資産を持つプレシードステージのCleo Capital(クレオ・キャピタル)は、ラウンドのリードと15〜20%の所有権を目標としている。
長期的にどのステージでプレーするかの柔軟性を持たせるため、同氏はラウンドをリードするのではなく、低い所有権を積極的に狙うという選択をしたという。
ミームとバナナの関係性
ノヴァック氏はBanana Capitalをインターネットファーストのファンドと表現している。この言葉はしばしばバズワードになるが、地理的なものではなくインターネットによって構築されたネットワークがどのようなものなのか、同氏の実績を見ればその信憑性は疑う余地もない。
ノヴァック氏のあり方は、同氏のミームに最もよく表れている。同氏は2020年6月にシリコンバレーを揺るがした「Eye Mouth Eye」キャンペーンに参加し、投資家の注目を集めるのはFOMO(取り残されることへの恐れ)と誇大広告であることをミーム文化を使って説明した。同氏はTwitterやTikTokでテクノロジーに関するミームを投稿し続けているひと握りの投資家の1人であり、オーディオソーシャルアプリClubhouse(クラブハウス)とその資金調達者に関するシリーズを繰り返し投稿している。スタートアップがVCに売り込む様子を撮影した模擬動画はTwitterで18万6200回以上再生され話題となり、TikTokでも何度か再生されている。
単なるスパイスのような役割を果たしているツイートもあるが、ミームはこの新進ファンドマネージャーにとってある種の戦略となっている。例えば、同氏の模擬ピッチ動画がきっかけで、ある企業への投資が実現したことがある。ツイート後に創業者から直接メッセージが届き、キャップテーブルの空き枠に招待されることも少なくない。この戦略はディールフローにおいての同氏の差別化の1つとなっている。Banana Capitalのポートフォリオには、Flexbase(フレックスベース)、Skillful(スキルフル)、Bottomless(ボトムレス)など11の投資先が存在する。
「インターネットの文化やミームを理解し、ウィットやユーモアを楽しみそれを評価してくれる人たちが自然と私の投資先になっています。こういった人たちはおそらく直感的な投資感覚を備え持っているタイプなので、確かにその方向に偏っているかもしれません」。
同氏は多様な創業者への投資に関する明確な目標や義務については話していないものの、Gelt VCでは資本の41%を女性のCEOに提供したという実績を挙げている。現在までにBanana Capitalのポートフォリオの創業チームの65%に非白人の創業者が含まれ、50%のチームに複数の性別が含まれている。
ノヴァック氏は当面、ミシガン州のアナーバーに住み続ける予定でいるが、成長著しいハイテクの中心地であるマイアミを無視できないでいるようだ。URLジョークはさておき、同氏の住所はいわばインターネットだと言えるのだろう。
「私のネットワークはサンフランシスコやニューヨークにあるわけではなく、単にインターネット上にいる人々なのです。それが私の人との出会い方です」。
同氏は自身の会社をBanana Capitalと呼ぶ理由を説明してくれた。第一に、バナナは世界で最も消費されている果物の1つであり、歴史の中で何度も改良され、生物工学的なプロセスを経てきているため、同氏の投資対象が消費者分野であることと繋がりがあるためだ。
第二の理由?同氏によるとそれは「果物のファンドなんて存在しないからです。私は人よりも少し真面目じゃないため、名前にそれが反映されているというわけです」。
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カテゴリー:VC / エンジェル
タグ:Banana Capital、投資ファンド、ミーム
画像クレジット:Yulia Reznikov / Getty Images
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(文:Natasha Mascarenhas、翻訳:Dragonfly)