スマートフォンで注文してから20分以内に弁当が届くサービス「bento.jp」は、自社の自転車デリバリー網のあらゆる可能性を試そうとしている。本日、ECサイトや地域店舗の注文を最短30分で配送代行する「kaukul」(カウクル)をスタートした。配送エリアは渋谷、港、目黒、新宿、世田谷の5区。順次23区に拡大する。
ECサイトに対して、注文から最短30分から数時間以内で商品を届けることを可能にする「kaukul API」と、自社でデリバリースタッフを抱えられない小売店や飲食店に、オンデマンドデリバリー(出前代行)機能を提供する「kaukul for Stores」の2つのパッケージを用意する。
EC事業者に即配オプションを提供
kaukul API はこれまで2、3日後の配送が最短だったEC事業者が、最短30分で所定の場所に商品を届けられるようにするもの。即配のリクエストから配達状況の確認までの機能をAPIで提供する。現時点では写真入りケーキのBAKE、シャンパンを扱う「シャンデリ屋」などが導入している。
kaukul for Storesは、最短30分の即配から毎日のルート配達、来店客向けの商品持ち帰りを代行する。青果店やカフェなどが導入していて、靴とバッグの修理店「ミスターミニット」も導入する予定。ミスターミニットでは、商品を集荷して修理後に届けたり、ユーザーが店舗で預けたモノを修理後に所定の場所に届けるサービスを検討中という。
kaukul for Storesおよびkaukul APIはどちらも月額の固定費不要で、注文に応じてベントー・ドット・ジェイピーに手数料を支払う。商品に上乗せするかたちになる配送料は、各店舗とECサイトが決める。
Amazonお急ぎ便に対する優位点は?
ベントー・ドット・ジェーピーの小林篤昌社長は「Amazonより速く届く」とスピード感を強調する。
Amazonは514円で「当日お急ぎ便」(Amazonプライム会員は無料)を提供しているが、kaukulの配送料は店舗ごとに異なる。目安は「ヤマトや佐川急便の短距離と同じか、それ以下」(小林氏)。つまり756円以下ということだ。
配送料の安さではAmazonに軍配が上がるが、小林氏は「当日お急ぎ便は朝注文で夜に届けるのがメインの“半日便”。数時間以内の配送はできない」と優位性をアピールする。
オンデマンドECにはLINEが参入
1年前にbento.jpをローンチした当初から、「単なる弁当デリバリー屋にとどまるつもりはない」と語っていた小林氏。その言葉通り、これまでに期間限定ながら、オイシックスの献立セットやバリスタ世界チャンピオン「Paul Bassett」のコーヒーを販売するなど、デリバリー網の汎用性を試してきた。
今後は自転車のデリバリー網を外部に開放し、消費者が即座に購入できるオンデマンドEC事業に本格参入することとなる。同様の取り組みは、スタートアップのdely(デリー)が2014年7月に渋谷限定で開始。同年11月にはLINEが参入し、delyは翌年1月末にサービスを撤退している。
LINEは3月、150店舗以上の飲食店の料理を即時配達する「今すぐ配達」と、ユーザーの買い物を代行する「おねがいWOW」を開始し、オンデマンドEC事業に本格参入したばかり。2015年中に100事業者の導入を目指すというベントー・ドット・ジェイピーは、この市場にどう挑むのか。