これからはボットの時代だ、と信じたQuang Hoangは、ついに、自分の会社をボット専門の企業にした。そしてExpensifyのようなふつうのアプリだった彼のプロダクトは今やBirdly、Slackの中でSalesforceやZendeskなどから顧客データを直接呼び出せるSlackボットだ。
“企業が新しいアプリを採用するのは、ほんとうに難しいんだ。別のモバイルアプリにデータを移行しなければならないし、新しいパスワードやプロセスをおぼえなければならない”、とHoangは語る。“管理職やCFOにとっても、新しいデプロイ作業や管理義務が発生してしまう。でも、Slackの上でそれができればずっと簡単だ。わずか二分で、みんながそれを使えるようになるからね”。
Slackの管理者はまず、Birdlyにリンクさせたいアプリのアカウントにログインする。Stripeや、Zendesk、Salesforceなどだ。すると誰もが、ボットを使ってそのアカウントから情報を呼び出せるようになる。ボットに情報をリクエストすると、情報はSlackにインラインで返ってくる。そのサービスに飛び込んで、もっと情報を見ることもできる。
アドバンテージはいろいろある。複数のアプリケーションを立ちあげなくても、単純にSlack上でコラボレーションできる。そして言うまでもなくSlackは、コラボレーションのための人気のプラットホームだ。今や毎日のアクティブユーザーが200万人、有料アカウントは57万ある。
だから、Birdlyのような企業が登場するのも意外ではない。Slackだけでなく、Facebook Messengerようなものでさえ、今チャットボットには大きな関心が集まっている。それは、ユーザーインタフェイスをもっと会話的にしようとする、より大きなトレンドの一環だ。その会話的インタフェイスでは、Googleによって慣らされてしまったキーワードによる検索ではなく、自然言語でデータをリクエストする。
当然ながら、Birdlyの周辺は競争が激しい。Slackはアプリのディレクトリを立ち上げ、Slackをプロセスの核とするようなサービスに投資している。そこでは先頭走者が有利だが、Slackをコアプロセスに統合しているそのほかのサービスも、たくさんある。Slackプラットホーム上に、ものまねボットも登場している。しかもSlackという他のアプリに依存しているということ自体が、リスクでもある。
Hoangによれば、Birdlyのようにデータを同期化してSlackの中で扱うボットも、競合製品が出現している。たとえばFlow XOという新しいサービスがそれだ。しかしBirdlyの特長は、コマンドラインインタフェイスではなく自然言語を使う点にある。だからデータをSlack内に取り込むほかのボットよりも使いやすいはず、と彼は言う。
“自然言語で呼び出して、自然言語で指示できるボットを作りたかった。複雑なツールを作る必要がなく、一定のワークフローに縛られることのない、新しいアシスタントをね。それがBirdlyの最大の特長だ”。
当面Birdlyは無料だが、今後は顧客の利用実態に応じた料金プランも考えたい、という。Birdlyは今、Y Combinatorの2016年冬季クラスに参加している。