TechCrunchの読者の多くは、印刷版の本もたくさん持っているだろうが、新たに読む本は大部分eブックに移っていることと思う。それなら、かさばる印刷版の蔵書のeブック版が安く手に入ったら便利だろう。それがBitLitが提供するサービスだ。
カナダのバンクーバーに本拠を置くこのスタートアップは出版社と協力して、すでに印刷版を所有している読者に無料または割引価格で電子版を提供する。またBitLitは出版社が印刷版に電子版をバンドルして販売するのを助ける。
現在のサービス提供地域はアメリカ、カナダ、イギリスの3カ国だ。
今日(米国時間5/22)、BitlitはKoboのファウンダーで前CEOのMichael Serbinisが新しく立ち上げたThree Angels Capital、BDC Venture Capital、WUTIFのMike Voker、バンクーバーの著名エンゼル投資家、Jim Fletcherからエンゼル投資を受けたことを発表した。投資金額は明らかにされていない。
BitLitが読者にとってありがたいサービスなのは自明だが、出版社にとってのメリットは何だろうか? BitLitはまずeブック自体の売上が得られ、さらに印刷版と電子版のバンドルの双方を購入できるようになれば、現実の書店の効用が増すとしている。
今週私は、BitLitの CEO、共同ファウンダーのPeter Hudsonにインタビューした。Hudsonによれば「現在、現実の書店が直面しているショールーム化という問題を逆に優位性に変えることができるので、出版社はこのソリューションに非常に興味を持っている」と語った。
現実の書店を訪れる消費者は、オンラインストアのユーザーに比べて、それまでまったく知らなかった本をその場で発見して購入する傾向が高いことが分かっている。そうした発見を助けるために、出版社は現実書店に広く配本することを怠るわけにはいかない。同時に、印刷版の購入者は、販売されてさえいればその場で電子版も購入する可能性が非常に高い。
BitLitは現在、O’Reilly、Other Press、ECW Press、Osprey Group、Greystone Books、Berrett-Koehleを始め出版社80社と契約を結んでいる。提供しているeブックのタイトルは約1万で、そのうち30%は、印刷版と同時に購入するか、すでに所有していれば無料だ。
Hudsonは「読者が読みたいような人気のあるタイトルを揃えていかなければわれわれのサービスには価値がない。それはNetflixがハリウッドの映画スタジオと契約できなければただのビデオ・コーデックに過ぎないというのと同じだ」と語った。Bitlitは近くさらに多くの出版社との契約を発表できるという。
ユーザーが実際に印刷版の所有者であることを確認して不正を防ぐため、BitlitではiOSとAndroid版の専用アプリを開発した。ユーザーはこのアプリで本の表紙を写真に撮り 、さらに著作権情報ページに自分の名前を大文字ではっきり記入し、その写真も撮ってBitLitに送る。
私は「ずる賢い学生がこのシステムを出し抜いて無料や割引のeブックを手に入れる不正な方法を考えだすのではないか?」と尋ねてみたが、Hudsonは「この程度でもタダ乗りを防ぐには十分役立っている」と答えた。
本を所有していることが立証されると、BitLitはユーザーに対しメールでeブックへのリンクを送信する。
[原文へ]
(翻訳:滑川海彦 Facebook Google+)