インドネシアの中小企業をデジタル化するBukuWarungがRocketship.vcから新たな資金を調達

米国時間2月2日、インドネシアで国内6000万の小規模事業者のデジタル化に取り組むスタートアップのBukuWarungが、Rocketship.vcおよびインドネシアの小売コングロマリットから新たに資金を調達したと発表した。

金額は明らかにされていないが、情報筋によるとBukuWarungのこれまでの調達金額の合計は2000万ドル(約21億円)だという。BukuWarungの直近のラウンドは2020年9月に発表されたもので、1000万〜1500万ドル(約10億5000万〜15億7500万円)だった。2019年にChinmay Chauhan(チンメイ・チャウハン)氏とAbhinay Peddisetty(アビネイ・ペディセッティ)氏が同社を創業し、2020年にはY Combinatorに参加した

Rocketship.vcは、インドのスタートアップであるKhatabookにも投資している。Khatabookは直近の資金調達ラウンドでバリュエーションが2億7500万〜3億ドル(約288億7500万〜315億円)に達した。Khatabookと同様にBukuWarungも、ワルンと呼ばれる町の商店のような小規模事業者が紙の帳簿に頼っていたのをデジタル簿記とオンライン決済に移行できるよう支援している。BukuWarungは最近、Tokokoというサービスも開始した。これは商店がアプリでオンラインストアを開設できるShopifyのようなツールで、すでに50万の商店がTokokoを利用しているという。

BukuWarungの社長であるチャウハン氏は、決済ソリューションで収益が出始めたと語る。同社は、インドネシアの750の都市で350万以上の商店がBukuWarungに登録したと公表している。同社プラットフォーム上で150億ドル(約1兆5700億円)相当を超える取引が記録され、取引量では5億ドル(約525億円)以上を処理しているという。

インドネシアのGDPの約60%は中小企業が占め、国内労働力の97%を中小企業が雇用している。しかし中小企業の多くは、成長につながる金融サービスをなかなか利用できない。BukuWarungのようなサービスで財務記録をデジタル化すれば、中小企業は信用枠や運転資金の融資などを利用しやすくなる。東南アジア最大の経済大国であるインドネシアで中小企業向けに同様のサービスを提供している企業には、BukuKasやCrediBookがある。

BukuWarungは新たに調達した資金でインドネシア、インド、シンガポールの技術チームと製品チームを増強する。2021年はクレジットなど収益化できるプロダクトをさらに公開し、決済ソリューションを成長させる計画だ。

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カテゴリー:フィンテック
タグ:BukuWarungインドネシア資金調達

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(文:Catherine Shu、翻訳:Kaori Koyama)

インドネシア拠点のBukuWarungが10億円超を調達、マイクロマーチャント向け決済機能や信用スコアを提供

Y Combinatorのアクセラレータープログラムを終了して1カ月後、インドネシアの中小企業に金融サービスを提供するフィンテックスタートアップのBukuWarung(ブクワルン)は、DST Global、Soma Capital、20VCを含む著名な投資家から新たな資金調達を行ったと発表した。

資金調達額は非公開だが、情報筋によると1000万ドル(10億5600万円)から1500万ドル(15億8400万円)の間とのこと。新たな資金は、BukuWarungのテクノロジーチームの採用に使われる予定だ。TechCrunchは7月にBukuWarungを初めて取り上げた。

今回のラウンドに参加したエンジェル投資家には、著名な創業者や幹部が数名含まれている。金融テクノロジープラットフォームPlaidの共同創業者であるWilliam Hockey(ウィリアム・ホッケー)氏、Tinderの共同創業者であるJustin Mateen(ジャスティン・マティーン)氏、Superhumanの創業者であるRahul Vohra(ラフル・ヴォーラ)、Adobeの最高プロダクト責任者でありScott Belsky(スコット・ベルスキー)氏、Clearbitの会長兼スタートアップアドバイザーのJosh Buckley(ジョシュ・バックリー)氏、元Uberの最高プロダクト責任者であるManik Gupta(マニック・グプタ)氏、Spotifyの元アジア新市場責任者のSriram Krishnan(スリラム・クリシュナン)、20VCの創業者のHarry Stebbings(ハリー・ステビングス)氏、Bond Capitalの投資家のNancy Xiao(ナンシー・シャオ)氏、Fastの共同創業者であるAllison Barr Allen(アリソン・バー・アレン)氏が名を連ねている。WhatsApp、Square、Airbnbなどに投資したエンジェル投資家もいる。

Chinmay Chauhan(チンメイ・チャウハン)氏とAbhinay Peddisetty(アビネイ・ペディセッティ)氏の共同創業者が二人が昨年立ち上げたBukuWarungは、インドネシアの6000万人の「マイクロマーチャント」(小規模事業者)をターゲットにしており、近所の店またはワルン(小規模な家族経営のビジネス)のオーナーも含まれている。

このアプリはもともとペンと紙の台帳の代わりとして作られたが、今後はクレジット、貯金、保険などの金融サービスを導入する予定だ。8月に同社はBukuWarungのプラットフォームにデジタル決済機能を統合し、商店主がOVOやDANAのような銀行口座やデジタルウォレットから顧客の支払いを受け取ることができるようにした。BukuWarungの目標は、KhataBookやOKCreditがインドで展開しているのと同じ役割をインドネシアの商店主に果たすことだ。

BukuWarungがデジタル決済を開始した理由の1つは、新型コロナウイルスの感染蔓延の間、非接触取引と即時支払い(インスタントペイアウト)を求める顧客の需要に応えたことにある。この機能を導入して以来、同社はすでに年率換算で数百万米ドルの総支払額(TPV)を処理しているという。同社によると、現在ではインドネシアの第2、第3階層の都市を中心に、750拠点で約120万人の加盟店にサービスを提供しているそうだ。

デジタル決済は、BukuWarungの金融サービスを構築するための第一歩でもあり、他の会計サービスとの差別化にも役立つだろう。ペイメント機能は現在無料で、BukuWarungは手数料にわずかなマージンを上乗せするなど、さまざまなマネタイズモデルを実験している。

「BukuWarungが決済サービスを開始した理由もまた、非常に戦略的なものです。なぜなら、市場には多くの需要があるからです。私たちが提供する支払いは、銀行から得るよりも費用効率が良く、より安いので、1カ月未満で数百万の年間TPVを得られました」とチャウハン氏は語った。

「インドのKhatabookのような企業もデジタル決済を始めています。その理由は、それがビジネスを構築し収益化するための非常に重要なステップだからです」と彼は付け加えた。「決済ができなければ、なにもできません」。

「金融サービスプラットフォームを構築することは、簿記台帳に代わるユーティリティアプリを提供することと、最終的には運転資金や貯蓄、保険商品の融資を含む、商人にとって不可欠なサービスになることの違いである」とチャウハン氏。BukuWarungの会計機能は、信用力を評価するためのデータを提供することで金融サービス面に影響を与えるだろう。また、伝統的な銀行から運転資金を確保するのに苦労することが多いマイクロマーチャントが信用枠を利用できるよう支援する。

画像クレジット:BukuWarung

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(翻訳:TechCrunch Japan)

インドネシアの零細ショップ向け簿記アプリ「BukuWarung」

インドネシアには、約6000万人の「マイクロマーチャント」がいる。彼らは食品やその他の生活必需品を販売する零細商店の店主であり、顧客と親しい関係にあることが多い。彼らはよく顧客にツケ払いを認めるが、財務追跡の多くは依然としてペンと紙の台帳で行われている。BukuWarung(ブクワルン)の共同創設者Chinmay Chauhan(チンマイ・チョウハン)氏とAbhinay Peddisetty(アブヒナリ・ペディセッティ)氏はこのプロセスをインドネシアの小規模な企業向けにデザインされた財務プラットフォームでデジタル化したいと考えている。彼らの目標は、簿記ツールから始め、運転資本へのアクセスなどへサービスを拡大していくことだ。

BukuWarungは現在、Y Combinatorのスタートアップ・アクセラレータ・プログラムに参加している。またBukuWarungは、East Ventures(イーストベンチャーズ)、AC Ventures(ACベンチャーズ)、Golden Gate Ventures(ゴールデンゲートベンチャーズ)、Tanglin Ventures(タングリンベンチャーズ)、Samporna(サンポルナ)、ならびにGrab(グラブ)、Gojek(ゴジェック)、Flipkart(フリップカート)、PayPal(ペイパル)、Xendit(エクセンディット)、Rapyd(ラピッド)、Alterra(アルテラ)、ZEN Rooms(ZENルームズ)、およびその他の企業の戦略的エンジェル投資家からシード資金を調達している

チョウハン氏とペディセッティ氏は、シンガポールに拠点を置くピアツーピアのマーケットプレイスであるCarousell(カルーセル)で働いているときに知り合った。ここで彼らは販売者向けの収益化製品を開発していた。チョウハン氏はさらに、東南アジアにおける配車サービスとオンデマンドデリバリーの最大手Grabで、商店主向け製品開発にも取り組んでいた。しかし、BukuWarungを思い付いた背景には本人たちが育った環境も関係している。チョウハン氏とペディセッティ氏の家族はどちらもご近所向けの小規模商店を経営しているのだ。

「GrabやCarousellで商店主向けの収益化製品を開発していた経験から、どうやればいいのかはよくわかっています。またインドネシアには大きなポテンシャルがあるのもわかっています。6000万人の商店主がオンラインを利用しデジタル化を遂げるのを支援することができるのです。マクロレベルで見ると、これは大きなビジネスチャンスであり、また個人レベルでも、何百万という商店主に影響を与えられるという可能性を感じています」とチョウハン氏は語っている。

紙での簿記の場合、財務追跡に手間がかかるだけでなく、顧客のツケがどれくらいあるのかがわかりづらい。チョウハン氏とペディセッティ氏はTechCrunchに対し、彼らの目標は、KhataBookやOKCrediがインドで行っているのと同様のことをインドネシアで行い、彼らの会社を財務サービスも扱う会社に拡張することだと述べた。

BukuWarungは昨年サービスを開始して以来、インドネシアの750の市町村で60万人の商店主が契約しており、現在月平均ユーザーは20万人に上る。チョウハン氏とペディセッティ氏は、インドネシアの6000万人に上る零細・中小規模の商店主たちにサービスを利用してもらうことが目標だと言う。彼らはすでにインドネシア初のクレジット追跡アプリの1つであるLunasbos(ルナスボス)を買収している。

Image Credits: BukuWarung

BukuWarungのサービス開始準備を進める中で、2人はインドネシアを旅しておおよそ400人の商店主と、簿記、クレジット追跡、会計の問題点について話し合った。このときの商店主たちとの会話から、2人はまずは簿記アプリに焦点を当てることにし、簿記アプリサービスを10ヶ月前に開始した。

4月から6月にかけてインドネシアでは部分的なロックダウンが行われたが、BukuWarungのユーザーの大部分は食料品など生活必需品を扱う商店主であるため、アプリは成長を続けている。小さな都市や村では、人々のキャッシュフローが非常にタイトで、またその多くは月々の定期収入を持たないため、商店主はよく顧客にツケ払いを認める。チョウハン氏は「みなツケで売り買いしているということを、私たちは調査で突き止めました」と述べている。

そこへ来て、多くの商店主は顧客と親しい関係にあるという地域的特色がある。

チョウハン氏によると「これは地域によって異なるのですが、商店主はご近所のたくさんの人々のことを昔から知っていて、通常、500インドネシアルピーから最大約100万インドネシアルピー(約7500円)を貸し付けています」ということだ。しかし、顧客の自宅を回って支払いを求める回収時期になると、多くの商店主はためらいを感じるのだという。

「私たちが開発したアプリを使用すれば、彼らは顧客を探したり電話をしたりしなくてもすみます。アプリが顧客に自動的に貸付回収通知を送るからです。この『ソフトなメッセージ』のおかげで、ためらいを感じることなく、商店主として確実に顧客に通知を届けることができるのです」と同氏は付け加えている。

商店主たちと話すうちに、BukuWarungの創設者は、多くの商店主が従量課金制のデータプランとローエンドのスマートフォンを使用していることにも気付いた。そのためユーザーがいつでもそれぞれの記録にアクセスしアップデートできるよう、アプリは可能な限り軽量で、オフラインでも機能する必要があった。アプリの開発においてデータと容量をできるだけ少なくすることに重点を置いた結果、他の簿記アプリとの差別化を図ることができ、このことがインドネシアで契約数とユーザー数を維持することに役立っていると2人は述べている。

チョウハン氏とペディセッティ氏は、ユーザーがデジタルウォレットやファイナンスなどのオンライン決済システムへアクセスできるよう、同社の成長に合わせ金融テクノロジー企業と提携するつもりであると語った。

Y CombinatorのパートナーであるGustaf Alströmer(グスターヴ・アルストレーマー)氏は、TechCrunchへの声明で「新興経済圏向けのデジタルインフラストラクチャ開発は、特にCOVID後の世界においては大きなビジネスチャンスとなります。BukuWarungはこの課題に取り組むことができるチームであると信じています。私たちはインドでのKhatabookやOkCreditの取り組みを見てきましたが、BukuWarungが同様に成長し、インドネシアにおいて零細企業に力を与えることになると考えています」と述べている。

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カテゴリー:ソフトウェア

タグ:インドネシア BukuWarung