新型コロナウイルス感染拡大よるパーソナライズのニーズの高まりを受け、マイクロソフトが顧客データプラットフォームを強化

Microsoft(マイクロソフト)が2020年2月に顧客データプラットフォームを発表した際(未訳記事)、その主眼は単純にデータのサイロをつないでデータをシステムに取り込むことだった。しかし新型コロナウイルス(COVID-19)の感染が世界的に拡大し、企業は自社の顧客についてもっと深く理解する必要が生じている。そこでマイクロソフトは米国時間10月1日、このプラットフォームの機能を強化した。

マイクロソフトのビジネスアプリケーショングループ担当プレジデントであるJames Phillips(ジェームズ・フィリップス)氏は、このプラットフォームは顧客をもっと深いレベルまで理解することを目指しているという。同氏はTechCrunchに対し「顧客を深く理解すれば、顧客のライフサイクル全体に対してエンゲージすることができます」と述べた。

これには顧客に合わせたキャンペーン、顧客が希望する方法での連絡、顧客のニーズを満たしたり支援したりする新しい製品やサービスの提案など、さまざまな活動が関連するだろうと同氏は語った。

さらに同氏は、新型コロナウイルスによって企業の優先順位が変わり、ビジネスの方法や顧客との関わり方を調整せざるを得なくなったと付け加えた。「すべてがデジタルになり、顧客を深く理解しエンゲージメントの効果を高めるニーズはパンデミックによってまさに高まっています」と同氏は言う。

マイクロソフトは、顧客を理解するために顧客データプラットフォーム(CDP)製品に追加する新しいコンポーネントをいくつか発表した。まず「Engagement Insights」というコンポーネントがあり、これはその名が示す通り、CDPにプッシュされたデータを活用して企業と顧客との関わりを向上させ、有意義なやり取りができるようにするものだ。このコンポーネントのプレビュー版が米国時間10月1日に公開された。

「Engagement Insightsはウェブやモバイル、接続されているプロダクトのデータを直接Customer Insightsに流し込むことで、顧客に対する理解を継続的に深めてより良いサービスを提供するものです」とフィリップス氏は言う。

次に、データとAIを活用し、顧客についてわかっていることをもとにマーケッターがこれまで以上に高度な予測ができるようにするコンポーネントがある。これはAzure Synapse Analyticsを活用しており、カスタマーチャーンの予測、製品の提案の自動化、顧客の生涯価値の推計といった要素に役立つAIのテンプレートがあらかじめ用意されている。

さらにマイクロソフトはデータの保護に役立つデータガバナンスプロダクトも提供し、Microsoft Customer Voiceと統合する。Microsoft Customer Voiceは同社の調査ツールで、企業はデータではわからないことがあるときに顧客に質問をしてデータの隙間を埋めることができる。

こうした機能はすべて企業のアジャイル性を高めるものであり、世界の変化、特に2020年の劇的な変化の中にあって、企業がこうした変化に素早く対応し、顧客の求めるものが変わってもそれに応えて業績を上げるのに役立つとフィリップス氏は言う。

このようなプロダクトを提供するのはマイクロソフトだけではなく、AdobeやSalesforce、SAPなどマーケティングツールを販売している大企業はどこも同様の理由で同様のプロダクトを提供している。

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(翻訳:Kaori Koyama)

Adobeがカスタマーデータプラットフォームの提供を開始

カスタマーデータプラットフォーム(CDP)は、カスタマーエクスペリエンスの武器の集まりともいえる最新のツールだ。大手企業が複数のチャネルから集めた顧客データを扱うためにこれに取り組んでいる。米国時間11月14日、AdobeはCDPを一般に提供すると発表した。

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CDPは一人ひとりの顧客に関するあらゆる情報を保管するデータ倉庫のようなものだ。そのチャネルはWeb、メール、テキストメッセージ、チャット、実店舗への来店、そしてCRMやeコマース、POSといったシステムまで多岐にわたる。こうしたデータを1件のレコードにまとめ、企業が顧客を驚くほど詳細なレベルで深く把握しようとする。そして企業はこの情報を活用して、複数のチャネルにわたって高度にカスタマイズされた体験を提供することを目指す。

CDPは情報をすべて集め、マーケティング担当者に必要なツールを提供するものだ。Adobe Audience ManagerプロダクトマーケティングマネージャーのNina Caruso(ニーナ・カルーソ)氏は「マーケティング担当者がAdobe Experienceプラットフォームの利点をすべて活用できるようにしたい」と説明する。

マーケティング担当者が見たいデータを使いやすいようにダッシュボードなどでまとめて提示するが、その裏側ではAIと機械学習によって見やすいダッシュボードが生成されるので面倒な作業は不要と、カルーソ氏は語る。

さらに、Adobe Experienceプラットフォームの中の1カ所でリアルタイムのストリーミングデータにアクセスできるようになり、マーケティング担当者はこれまで以上に精密に市場のセグメントを作成できる。「マーケティング担当者が活用できるように、リアルタイムCDPの一環として統合されたプロモーションを製品化できるようにする。キャンペーンの対象となっているセグメントやオーディエンスを複数のチャネルで利用することで、カスタマージャーニーのライフサイクル全体を通して一貫した体験を提供できる」とカルーソ氏は言う。

危惧する人も多いと思うが、こうした情報をまとめることは、顧客に応じたカスタマイズを可能とするプラットフォームを実現する一方で、さまざまなセキュリティやプライバシーの危険性もはらんでいる。GDPRや今後施行されるカリフォルニア州消費者プライバシー法に関しては、特にそうだ。企業はプラットフォーム全体にわたってデータの使用ルールを遵守しなくてはならない。

そのためAdobeは、企業がデータ使用に関するルールを定めるのに役立つよう、Adobe Experienceプラットフォームのデータガバナンスに関する有効性も発表した。これは「(顧客が)データ使用ポリシーを実行し、データを適切に使用することで、さまざまなデータセットに関連する規則、義務、制限を遵守するためのフレームワーク」だという。

カルーソ氏は「我々のお客様がデータを適切に管理できるように、お客様に制御機能を提供する。プライバシーとさまざまなポリシーが重要になりつつある現状では、特に重要なことだ」と述べている。

CDPのツールはAdobeの利用者向けにすでに公開されている。

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(翻訳:Kaori Koyama)