すべてのブロックチェーンのハブとなることを狙うCosmos

先週Cosmos Networkがローンチしたが、私はこれが重要な出来事だと信じている。そう、それは確かにブロックチェーンへの取り組みだ。だが単なる新しいブロックチェーンではない。もし私が正しければ、その影響はいつか読者にもおよぶだろう。だが、あまりにも先端的な話なのでその影響が及ぶのには10年ほどもかかるだろう。もしくはTechCrunch読者のような先進ユーザーには5年ほどで。

(わかっている、これは随分と大胆な発言だ。だが自分を振り返ってみると、私はこの手の話には結構強いのだ。最後に私が書いたブロックチェーンのローンチは、Ethereumに関してだった。おそらくその後、読者も耳にしてきたことだろう。そして当時それをとりあえた非専門のコメンテーター/ジャーナリストは私だけだったのだ)。

今回のローンチは難解で、極めて技術的な成果であり、現在のところそれはブロックチェーンを、より良く中央集権ではない、より公平な未来への道だと崇拝している、小さく奇妙なサブカルチャーの中心で既に生きている人たちにとってのみ重要なものである(そういう人たちと、暗号通貨を主に素早く裕福になるための機会と見なしている、はるかに多数のその他大勢と混同しないように。乱暴なくくり方で失礼)。しかし、これは非常に印象的な技術的偉業であり、最終的にはより多くの人たちにとって重要になる、さまざまな可能を秘めている。

Cosmosは自分自身を「ブロックチェーンのインターネット」と呼んでいる。だがそれだけではない。同じくらい重要なことは、これが初の大規模分散型Proof-of-Stakeネットワークの立ち上げだということだ(いや、EOSは考慮されない(1)(2))このモデルでは、ブロックチェーンの検証は、ギガワット単位の電力を注ぎ込むことで困難な計算問題を解決する「マイナー」(採掘者)によって行われるのではなく、購入した(あるいは委任された)暗号通貨を「賭ける」(stake)「バリデーター」によって行われる。

その名前からわかるように、バリデーターたちは、ブロックチェーン上のトランザクションが有効であることを認証(バリデート)する。かれらは誠実で正確な場合には報酬を得られることを知っている。しかしもし彼らが不誠実だった場合、もしくはエラー、もしくはオフラインのときには、彼らの賭け金は「切り捨てられる」(slashed)。すなわちそのお金は失われてしまうのだ(現時点では100人のバリデーターがいるが、この数は3倍になる予定だ)。理論的上は、不誠実なバリデーターたちが共謀したとしても、少なくとも全バリデーターの3分の2が正直者である限り、ブロックチェーンは安全なままであることが示されている。

これは非常に重要なことである。なぜならProof-of-Stakeの高い効率性と速度は、Bitcoinや(現在の)Ethereumが採用しているようなProof-of-Workよりも、比べ物にならない環境に優しく、多くの動作を支援する、分散型システムへの道を切り拓くからだ。もしProof-of-Stakeがこの過酷で残酷な実世界で成功したとすれば ―― それはもちろん、かなり厳しい「もし」である。その実装は複雑だし、Proof-of-Workに比べて社会的にも技術的にも遥かに大きな攻撃側面を持っている。ブロックチェーンはついに現実的なスケールとなることができるだろう。世界の電力のバカにならない消費を行うことなく、許容可能なセキュリティも実現できる。

だが、Cosmosの野望はもっと先に進む。Cosmosは、単なるもう一つのブロックチェーンとしては意図されていないのだ。私たちは既に十分過ぎる種類のブロックチェーンをを持っている。それは他のブロックチェーン同士を互いに接続するハブとしての利用が意図されている ―― なので「ブロックチェーンのインターネット」なのだ。さらに、ソフトウェアエンジニアなら誰でも、まったく新しいカスタムデザインのブロックチェーンを(理論的には)容易に構築できるツールを提供する。これは次々に、任意の数の他者との相互運用を可能にする。

なぜこれが大切なのだろう?なぜなら、もしブロックチェーンが暗号通貨の用途を超えて大切なものになるのなら、例えば名前空間やファイルストレージ、デジタルグッズ、サプライチェーン、自主的アイデンティティ、そして分散型ソーシャルメディアなどのアプリケーションに使用される場合や、望ましい分散型アプリの通常の機能を考えたときに、そうしたアプリが互いに対話できれば、大きな利便性を得ることができるからだ。

今でもある程度までは、それは既に可能である。例えばBitcoinをZcashと1回の不可分なトランザクションで交換する「アトミックスワップ」を実行することができる。しかし、この種の相互運用性は困難であり、(それが何であれ)ホストチェーン側の都合によって制限される。Cosmosは説得力のある代替ビジョンを提供する。すべての分散型アプリケーションが実行される、単一の「ワールドコンピューター」を想定する代わりに、アプリケーションごとに1つのブロックチェーンを用意する。それらのブロックチェーンは合意された複数の「ハブ」を介して互いに対話し、資産やデジタルグッズ、データ、そして暗号通貨などを互いに送信し合うのだ。

今週ローンチされたのは、そうしたハブの最初のものとなるCosmos Hubである。原則として将来的には、誰でもハブを運営することができる(Cosmosのビジョンの多くはまだ「原則として将来的には」の状態にとどまっている)。現時点では、接続された他のブロックチェーンは存在していない、原則として将来的には、Cosmosのバリデーターたちはそうした他のブロックチェーンたちと相互運用開始するかどうかの投票を行うだろう(Cosmosには、ブロックチェーン業界用語である「ガバナンス」(すなわち「チェーン上の投票」)もあらかじめ組み込まれている)。

とはいえ、ハブを介して接続できるのは、特定の種類のブロックチェーン、つまりCosmos自身に似たアーキテクチャを持つ ―― つまり正確に言えば「高速な決済速度」を持つ ―― ブロックチェーンだけだ。原則として将来的には、Bitcoin、Ethereum、ZCashなどの他のブロックチェーン用にアダプタを開発することができる。このことによってほぼ間違いなくCosmosはBitcoinの「サイドチェーン」の1つになるだろう。そして/あるいは(まだ大きな支持を集められていない)ライトニングネットワークの競合相手/協力相手になるだろう。

私の口調が疑いに満ちているように響くって?まあ、いつも以上に疑ってはいないと思う。私はベイパーウェアがソフトウェアになる前の発言に対して慎重になっているだけだ。しかし、先週ローンチされたCosmos Hubは、前者ではなく後者だと思われる。実際の世界的に対する最終的な重要性について私が間違っていたとしても、それは大きくて重要な技術的成果であることには変わりない。チームに対して称賛と祝福を。投資家や投機家たちにとっては、一見暗号の冬が永遠に続くように見えているかもしれない。だが技術者にとっては、Cosmosのローンチは春の訪れを告げる力強い兆候なのだ。

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(翻訳:sako)