遠隔診療アプリとAI医療サービス開発の情報医療が三菱商事などから11億円を資金調達

このところ、ヘルステック分野のスタートアップによる資金調達が活発だ。5月7日にはAI問診システムと病名予測アプリ開発のUbieが3億円を調達を発表したばかり。そして今日5月14日、さらに3社のヘルステック関連ベンチャーが資金調達の実施を明らかにしている。

1つは健康管理アプリ「カロミル」を運営するライフログテクノロジーによる6000万円の調達。もう1つは電子薬歴システム「Musubi」を提供するカケハシ(詳しくは別の記事で紹介予定)。そして残る1社は、AIを活用した各種医療サービスと医療機関向けのオンライン診療サービス「curon(クロン)」を提供する情報医療だ。

情報医療が本日発表したのは、4月末までに実施された三菱商事など4社を引受先とする、総額11億円の第三者割当増資の実施。三菱商事以外の3社については社名が公開されていないが、いずれも事業会社とのことだ。同社にとって今回の資金調達はシリーズAラウンドにあたる。

情報医療は2015年11月、代表取締役CEOで医師でもある原聖吾氏らにより設立された。創業メンバーにはGunosyやREADYFORの創業にも関わり、ディープラーニングに関する著書も出版する、巣籠悠輔氏もCTOとして参画している。

写真左から代表取締役CEO 原聖吾氏、取締役CTO 巣籠悠輔氏、取締役COO 草間亮一氏。

同社が2016年より展開するcuronは、予約から問診、診察・処方、決済など、遠隔医療に必要な機能が一式そろった医療機関向けのオンライン診療サービス。初期費用・固定費なしで、PCだけでなくタブレットやスマートフォンなどからも利用できる。患者側も利用は無料。スマホアプリでいつでも診察・処方が受けられる。リリースから2年で約500の施設に導入されているという。

またAIを用いたサービスとしては、画像や患者行動からの疾病識別エンジンや、個々人の健康状態の将来予測エンジン、疾病・健康状態の維持管理をサポートするソリューションなどを開発・提供している。

3月には日本生命とともに糖尿病予備軍向けの予防プログラムの開発を開始。日本生命済生会付属・日生病院でのトライアルを経て、curonを使った、個々人に合わせた患者支援を展開していく予定だ。

冒頭でも触れたが、ヘルステック分野のスタートアップの台頭はめざましい。2018年4月から診療報酬が新設されたオンライン診療では、メドレーの「CLINICS(クリニクス)」やシェアメディカルの「MediLine(メディライン)」などの競合サービスがある。またAIを活用した医療ソリューションは、医療画像の診断支援技術を提供するエルピクセルや、医療画像解析、血液によるがんの早期診断技術を提供するプリファード・ネットワークス、医療、特に介護分野でAIを取り入れるエクサウィザーズなどのほか、スタートアップ以外でもさまざまな企業が参画する激戦区だ。

こうした中、情報医療では医療とAIの両方のプロフェッショナルがそろっている点を強みとして、事業を展開していこうとしている。またAIに関してはスペシャリストによる技術力に加え、curonを核として、大企業や大病院との提携により、精度の高いデータを蓄積できることも特色としている。

「他社のオンライン診療サービスでは、販売したところで終わる企業が多い。我々は医師と患者のやり取りをデータ化し、効果的な治療につなげていく」と情報医療ではコメント。「オンライン診療サービスとAIによる医療サービスを両輪として成長を目指す」と担当者は話す。

今回の調達資金は、機械学習や深層学習のエンジニアを中心に採用を強化するために投資していくとのこと。情報医療では今後、さらに多くのデータを持つ企業とタッグを組み、医療現場に合ったAIを提供していく考えだ。