スイス拠点の機械学習を用いたコードレビューのスタートアップDeepCodeをSnykが買収

スイスを拠点とする機械学習式コードレビュースタートアップのDeepCode(ディープコード)が、Snyk(スニク)によって買収された(いずれも未訳記事)。DeepCodeは自身を「プログラマーのためのGrammarly(グラマリー、英文チェッカーの製品名)」と自称している企業で、一方Synkは開発者がコードを安全なものにすることに焦点を当てた、サイバーセキュリティーのユニコーンスタートアップだ。

契約の金銭的条件は明らかにされていない。だが大規模なコード解析を行うDeepCodeは、CrunchBaseによれば2016年の創業以来わずか520万ドル(約5億8000万円)を調達してきたに過ぎない。しかもその大部分が最近行われた400万ドルのシードラウンドでの調達(未訳記事)で、昨年Earlybird3VCbtov Partnersから投資を受けたものだ。

DeepCodeのCEOで共同創業者のBoris Paskalev(ボリス・パスカレフ)氏によれば、「地球上のすべての開発者たちがセマンティックAI駆動型コード分析を利用できるようにするという使命」を継続するために、チームはSnykへの合流を『熱望』した」という。

「会社としてのDeepCodeは、Snykが完全に所有するかたちで存続し、今後もチューリッヒのオフィスを成長させる予定です。そしてこの地の素晴らしい人材プールにアクセスし、世界の開発者コミュニティのための最先端の製品を保守し拡張を続けていくつもりです」とパスカレフ氏はTechCrunchに語った。

DeepCodeの製品が今後もスタンドアロンとして存在し続けるのか、それともSnykのプラットフォームへの完全な吸収が、現在開発者に提供しているコードレビューボットの停止を含むことになるのかに関しては、彼はまだ決断していないと述べた。

「私たちはその件を詳細に検討している最中ですが、中心的な目標は私たちが開発者に提供しているメリットを維持/拡大すること、特にオープンソースへの採用と浸透を押し進めることです」と彼はいう。そして「明らかなことは、当面は何も変わらないということです。DeepCode製品はスタンドアロン製品として残ります」と付け加えた。

また「どちらの企業も、開発者第一主義に対する非常に明確なビジョンと情熱を持っており、世の中の開発者とセキュリティチームが、リスクをさらに削減して生産性を高めることを支援しています」とも付け加えた。

買収を発表した声明(Snykアナウンス)の中で「SnykはDeepCodeのテクノロジーを同社のCloud Native Application Securityプラットフォームに統合する予定だ」と語り、「さらにAIエンジンを組み込むことにより、開発者が『脆弱性をより迅速に特定』できるようになる」という利点を宣伝している。

「DeepCodeのAIエンジンは、Snykにとって、脆弱性の発見と修正対する速度を上げ、新しいレベルの精度を確保するのに役立ちますが、同時にSnyk脆弱性データベースから常にスマートになるための学習を続けて行きます」とCEOのPeter McKay(ピーター・マッケイ)氏。「それによって、開発者は追加のステップとして脆弱性のテストを行うのではなく、開発中に同時に問題点をテストして、より迅速な統合を行うことが可能になります。また、結果の精度がさらに向上することで、誤検知を追跡する無駄な時間がほぼ取り除かれるのです」と続けた。

マッケイ氏は、DeepCodeに関連したSnykの印象深い機能の中でも、特に「他の手段より10〜50倍速い」コードスキャンを称賛した。そして彼が「開発者向けの特別なUX」と表現した機能は、IDEとgitレベルでスキャンを行い「高精度のセマンティックコード分析をリアルタイムに行うこと」を可能にする。

チューリッヒ工科大学からのスピンオフであるDeepCodeの買収に関して書かれた大学当局のブログ投稿(チューリッヒ工科大学ブログ)によれば、このAIスタートアップの持つ「決定的な利点」は、「莫大なプログラムコードから素早く学習を行い、安全性ならびに信頼性に関するコードの問題点をAIを使って検知できることができるようにする」ということだ。

また続けて「DeepCodeは、データ(この場合はプログラムコード)から学習できる現代のAIシステムの優れた例だが、にもかかわらず、人間にとって透過的で解釈可能なものだ」と付け加えている。

また同じブログ投稿によれば、DeepCodeを支える大学の研究活動は2013年にさかのぼるという。共同創業者たちは、当時データ主導の機械学習手法と、シンボリックな推論に基づくセマンティックな静的コード分析手法を組み合わせる方法を見つけようとしていたのだ。

DeepCodeの技術は、現在400万人を超える開発者に提供されており、10万を超えるリポジトリがそのサービスを登録している。

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(翻訳:sako)