スライダーは忌まわしい。いつも必ず、希望の場所よりも行き過ぎるから。それにマウスもいらつく。PhotoshopやFinal Cut、AutoCAD、それにSpotifyすら、精密で確実なコントロールが難しい。そこで新しく登場した入力デバイス、フロー(Flow)は、人間の視覚ではなくフィーリングに基づいて、多様なきめ細かいコントロールを可能にする。
Y Combinator出身のSenicが作ったパック(puck, 小円盤)フロー(Flow)(100ドル)は、4種類のコントロールをワイヤレスで行う: 1)赤外線センサの上空で手を振る(下図)、2)プログラマブルなタッチパッド(円盤上面)、3)プッシュボタン、4)高精度回転ダイヤル(円盤側面)。すでにAdobe Creative Suiteなど30種のアプリケーションが対応しており、デベロッパは自分好みのどんなインタフェイスでもカスタマイズできる。
協同ファウンダのTobias Eichenwaldは、コンピュータは画面を見なくてもコントロールできるべきだ、と考えた。たとえばギターのように、いちいち“見ずに、意識せずに、自然に”コントロールする方法があるはずだ。これまでのデザイナーはPhotoshopのメニュー階層を下りてゆき、マウスで矢印ボタン[< >]をクリックして、何度も行き過ぎを繰り返しながら変更を指定していた。
“これまでのグラフィックツールではピクセル単位の精度が得られなかった”、とEichenwaldは言う。
フローを使うと、Photoshopでの色調やブラシサイズの微調整、AutoCADでのモデルの角度の変更、Illustratorでのレイヤの切り替え、ビデオ編集アプリケーションでのフレームの選択などが簡単にできる。
フローは、友だちと雑談しながらでも使える。“人間のこれまでのコンピュータ利用の40年間をスクリーンが支配してきた。でもスクリーンは必ずしも最良のインタフェイスではない”、とEichenwaldは言う。“人間の注意力を完全に奪うから、ソーシャルな状況では使えない”。
フローはSpotifyやYouTube、SoundCloudなどでも使える。フローの上で手を振るだけで音量や選曲などのコントロールができるので、友だちとつながったままでもよいし、ほかのタスクで画面を見ていてもよい。スマート電球のPhillips Hueなども、スマホでリモートアプリを起動するよりフローの方が素早くコントロールできる。
ぼくもフローをちょっと使ってみたが、とてもよくできてると思った。側面の回転ダイヤルは抵抗感が適切なので、とても小さな動きでも感知できる。手を空中に保持していると疲れるから、それがLeap Motionが成功しなかった理由だと思うが、フローは疲れないジェスチャも組み合わせている。もちろん使い慣れるまでは時間がかかるし、フローが提供している多様で高精度なコントロールは要らない人もいるだろう。しかしそれでも、デスクの上に鎮座しているフローのお姿はなかなか美しい。
FlowはIndiegogoで100ドルだ。Eichenwaldの説では、入力作業の効率が上がるから、100ドルぐらいすぐに元が取れる、と言う。クラウドファンディングで獲得した資金は、量産体制の確立と、ファームウェアをアップデートするための組み込みソフトウェアの技術者の確保に充てられる。
ちなみに、ラップトップはもうすぐモーションコントロールを提供するだろう。たとえばぼくのMacBookのトラックパッドやWebカメラで、LeapMotionのようなことができるようになる。Eichenwaldは、そういう、そのほかの入力デバイスがフローの機能を取り入れることも期待している。もちろん、ライセンス料を払って。
“次世代のもっと自然なユーザインタフェイスを作りたい”、とEichenwaldは微笑みながら語る。ハードウェアもインターネット接続もWifiチップもどんどん安くなり、何でも入力源になりえる。そこでEichenwaldは言う、“テーブルでもいい、壁でもいい、そこらの、ありとあらゆる物でもいいじゃないか”。
新たなガジェットが生まれるたびに、それはわれわれの認知能力の新たな負荷になりがちだ。そして学者は、人間はマルチタスクが苦手で、一つのことに集中した方が良い仕事ができる、と言い続けている。でもついに、フロー(flow, 流れ)を維持でき、途切らせることのないデバイスが登場した。
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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))