英国・ロンドンを拠点にVR(バーチャルリアリティ)を活用したプロダクトデザインとコラボレーションのプラットフォームを展開するGravity Sketch(グラビティ・スケッチ)が、370万ドル(約3億8600万円)の資金調達を明らかにした。
このシードラウンドはKindred Capitalがリードし、Point Nine Capitalと既存投資家であるForward Partnersが参加した。これにより同社が調達した総額は540万ドル(約5億6300万円)となった。なお同社は以前、InnovationRCA(英王立美術院の起業家支援プログラム)とJames Dyson Foundation(ジェームズダイソン財団)から助成金を受けていたこともある。
Oluwaseyi Sosanya(オルワセイ・ソサンヤ)氏、Daniela Paredes(ダニエラ・パレデス)氏、Daniel Thomas(ダニエル・トーマス)氏が2014年に設立したGravity Sketchは、物理的な製品の設計、開発、市場投入の方法を変えたいと考えいる。具体的には、分野を超えたチームに3Dデザインソフトウェアを提供し、3Dでのリアルタイムコラボレーションが可能なVRを含め、よりスムーズな方法で「作成、コラボレーション、レビュー」ができるようにする。このアイデアは、特にグローバルに分散しているチームや遠隔地にいるチームの開発サイクルを加速させるのに役立つという。
同社CEO兼共同創業者であるソサンヤ氏は「時間枠が短縮され、消費者はより早く、より多くの機能を備え、より持続可能な生産を求めるようになっているため、コラボレーションの重要性はますます高まっています」と説明する。続けて「また、グローバルに分散した設計・エンジニアリングチームを持つ多国籍企業が急増しており、かつて同じ場所にいたときと同じ精度で製品を提供するは常にネットワークに接続している必要があります。大企業にサービスを提供する中小規模の設計事務所も、ビジネスを獲得するためにはこのアプローチを採用しなければなりません。Gravity Sketchのサービスを利用すれば、国内の顧客ほど頻繁に顔を合わせることができない国際的な顧客から仕事を得られるだけでなく、高い品質でアイデアなどを引き渡せます」と語る。
現在では、製品サイクルの高速化やリモートワークによるプレッシャーに加え、製品設計プロセス自体が常に最適であるとは限らない。また、異なる専門分野やソフトウェアツールを持つ複数のチームが関与し、2Dから3Dへの移行が進められている。「物理的な製品を設計する場合は、3Dでオブジェクトを想像します」とソサンヤ氏。「しかし長年にわたり、私たちはそのアイデアを2D、またはラフな物理モデルを通して再現しなければなりませんでした。すべての物理的な製品は2Dのスケッチから始まり、それをデジタル3Dモデルに丹念に書き起こし、標準的な製造プロセスを経て製造されるのです」と説明する。
Gravity Sketchはこの作業を軽減するために、最初のスケッチの段階からデザイナーをデジタル3D空間に連れて行き、初期のアイデアとそれがどのように発展していくかをコントロールできるようにする。また、デザインチーム全員が同じVR空間に参加することで、時間とリソースを消費する前にデザイナーの視点からデザインを完全に理解することができるという。
「デザイナーはアイデアの段階で、すべての関係者をより正確にその内容を共有できます」と同氏は説明する。「VRを使えば、誰もが3Dで考えているという現実を利用して、すべての設計プロセスに存在する2D化作業を省略できるので、ユーザーは3Dで考え、3Dで作成することができます。これは3DのZoom会議のようなもので、誰もが自分の視点からまだ実現されていない製品を理解するのに役立ちます」と主張する。
さらに、Gravity Sketchで作成されたコンテンツは、デザインの制作工程全体をさらに発展させることができるという。具体的には、同社のデザインは市販のほぼすべてのCADツールに100%の精度で取り込めるそうだ。
現在、Ford(フォード)、日産、Reebok(リーボック)などの世界的な企業がGravity Sketchを使用しており、世界中の60大学や5万人以上のクリエイティブな専門家が使用している。
Gravity Sketchは今回の新たな資金提供によりプラットフォームをスケールアップし、「ハードウェアに完全に依存しない」ものを開発することを明らかにしている。現在、さまざまなVRのハードウェアで動作し、iPad、モバイル、デスクトップ用にベータ版が用意されている。
画像クレジット:Gravity Sketch
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(翻訳:TechCrunch Japan)