日立がWesternに売ったHGSTがハードディスクにナノテクを応用して容量を倍増

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モバイルプロセッサに詳しい人は、Qualcommなどが作る現世代のチップを比較して論じるとき、32nm vs. 28nm(nmはナノメーター)なんて話をよく聞いているだろう。それはプロセッサのサイズを言い表す言葉で*、この数字が小さいほど電力消費が少なく、素子を小型化でき一定スペースに多量の回路を詰め込めるので機能も性能も上がる。〔*: この数字はVLSIの配線の太さ(幅)ないし配線間の間隔の幅のこと。〕

またディスクドライブでは、一つのビットを記録する磁性体単位の大きさ(パターンサイズ)を20nmよりも小さくするのは難しい、と言われている。ディスクドライブも、プロセッサと並んで、ムーアの法則が当てはまる分野だったが、どちらもそろそろ、限界に突き当たろうとしている。ところが今日、Western Digitalが日立製作所から買収したハードディスク企業HGST発表した画期的な技術によれば、10nmのパターンを作ることが可能だという。その工程は“ナノリソグラフィー(nanolithography)”(ナノサイズの平版印刷)と呼ばれ、これによりハードディスクドライブの最大容量を今の倍にすることができる*。〔*: 2×2=4倍ではない。原文のコメント参照。〕

HGSTのこのナノプロセスは、テキサス州オースチンのシリコン加工スタートアップMolecular Imprints, Inc.との共同開発で、これまで広く使われていたフォトリソグラフィー(photolithography)(写真製版平版印刷)技術を使わない。感光剤を用いる写真的な製版では、プロセスのサイズを光の波長より小さくすることはできない。HGSTの研究担当VP Currie Munceによると、HGSTの技術では将来的に10nm以下にすることも可能、という。

HGSTは今の2010年代内に一般市販製品の完成を目指している。そのための低価格化と安定性能を達成できれば、‘ストレージ欲’に限度のない今日の顧客たちが、こぞって採用するだろう。とくにWebは、クラウドサービスの増加と、Facebook、Apple、Amazonなどのビッグ企業のデータセンターの大型化がこれからも続くから、ストレージの費用効率とスペース効率はきわめて重要だ。HGSTのナノリソグラフィープロセスでは、磁性体の同じ面積のストレージ能力が従来の倍になるのだから、ざっと言って、効率も倍になることになる。

このプロセスは、顕微鏡レベルのちょっとした粗(あら)を冗長性によって回避できるディスクストレージに向いているようだ。Munceによれば、HGSTのナノリソグラフィーはモバイル用プロセッサなど、ナノレベルのVLSIの製造には向いていない。

“プロセッサでは、回路パターンに粗(あら)があることは絶対に許されない。ハードディスクドライブでは、つねにエラー修正コードが動いているし、パターンの欠陥を特殊な信号処理で補うこともできる”、と彼は説明する。

しかしそれでも、ハードディスクとメモリの方面では、今から5〜6年先にHGSTの画期的な技術が、クラウドコンピューティングやモバイルデバイスを中心として、テク業界全般に大きな影響を与えていくだろう。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))