セキュリティスキルをゲーム化して教える英Immersive Labsが米Snap Labsを買収、気候変動も考慮して

サイバーセキュリティのスタートアップであるImmersive Labs(イマーシブラブズ)は、最近7500万ドル(約85億6000万円)のシリーズCラウンドをクローズして相当な資金を獲得したが、同社は「数百万ドル(数億円)規模」の株式と現金を組み合わせた非公開の取引で、米国のサイバースタートアップSnap Labs(スナップラブズ)を買収するとのこと。Snap Labsは、今回の買収以前にはベンチャー資金を調達していないことがわかっている。

最新のサイバー脅威インテリジェンスを「ゲーム化」して企業の従業員にサイバーセキュリティのスキルを教えるImmersiveは、今回の買収により、組織が社内でサイバー知識を身につけることを支援するための新たな力を得られるとしている。

サイバーセキュリティは技術チームだけの問題ではなく、会社全体のビジネスクリティカルな問題へと変化しているため、Immersiveのアプローチは、国際的にも多くの新規ビジネスを獲得しているようだ。一方のSnap Labsは、現在Accenture(アクセンチュア)、Mandiant(マンディアント)、CrowdStrike(クラウドストライク)と提携しており、米国での実績も十分にあるため、Immersiveのサービスを大幅に強化することになるだろう。

Immersive LabsのJames Hadley(ジェームズ・ハドリー)CEOは次のように述べている。「Snap Labsの買収により、お客様は、直面するリスクにピンポイントで対応した詳細でリアルな体験を通し、より優れたサイバー人材を育成することができます」。

ペンシルバニアを拠点とするSnap Labsは、共同創業者のChris Myers(クリス・マイヤーズ)氏とBarrett Adams(バレット・アダムス)氏によって2016年に設立された。

マイヤーズ氏は「2つのプラットフォームは自然にフィットしており、組み合わせることで、お客様がサイバー脅威に対する耐性をさらに高められるよう支援できると期待しています」と述べている。

また、これには気候変動に関する側面もある。Snap Labsは「エラスティックコンピューティング」を採用している。これは、サーバー上で仮想環境を継続的に稼働させて電力を消費するのではなく、使用するときだけ仮想環境を起動し、使用しないときは直ちにシャットダウンするというものだ。これは、各サイバー攻撃シミュレーションのカーボンフットプリントにプラスの影響を与え、全体としても大きな影響を与える。

ハドリー氏は筆者との通話で次のように語った。「Snap Labsの技術を利用することで、企業が自社のネットワークを仮想的に再現するなど、非常にクールなことが可能になります。お客様は複雑な規模の独自ネットワークを構築し、複製することで、マルウェアやペネトレーションテストに対するチームの戦闘力を試すことができるようになります」。

Immersive Labsは、英国の退役軍人を対象にサイバー職業訓練を行うTechVetsという慈善団体を無料で支援している。

画像クレジット:Chainarong Prasertthai / Getty Images

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(文:Mike Butcher、翻訳:Aya Nakazato)

最新の脅威インテリジェンスをゲーム化、全従業員がセキュリティスキルが身に付けられる「Immersive Labs」

Immersive LabsのCEOジェームズ・ハドリー氏。ブリストルのEngine Shedにて。2021年6月2日

実際にある最新の脅威インテリジェンスを使って「ゲーム化」された方法でサイバーセキュリティのスキルを企業の従業員に教えるプラットフォームImmersive Labs(イマーシブラブズ)が7500万ドル(約82億円)のシリーズCラウンドをクローズした。同ラウンドは新規投資家のInsight PartnersがMenlo Ventures、Citi Venture、そして既存投資家のGoldman Sachs Asset Managementとともにリードした。

調達した資金はImmersiveの米国でのサービス拡大に使い、多くの人がパンデミック後もリモートワークを続けることで引き起こされているサイバー脅威への新たな関心の波をとらえる。2017年創業のImmersive Labsは現在200人を雇用し、英国のブリストルと米国のボストンに共同本部を置く。同社は今後2年で従業員数を600人超に増やし、APAC(アジア太平洋地域)と欧州でも事業を展開する計画だ。同社の「Cyber Workforce Optimization」プラットフォームは、組織内のスキルがどのように対処しているかを計測するための取締役会レベルのメトリクスとベンチマーキングを提供する、と主張する。

Immersiveはベンチャーファンディングで計1億2300万ドル(約135億円)を調達し、顧客にはHSBC、Vodafone、NHSなどを抱える。「対前年比100%超」で成長している、とImmersiveは話す。

CEOで創業者のJames Hadley(ジェームズ・ハドリー)氏は「ますます多くの事業機能にとってサイバーリスクが問題になっていて、サイバーセキュリティの知識とスキルはもはや、バックオフィスにひっそりといる何人かのテック人材のものだけであるべきではありません。ソフトウェアを制作するチームからCEOに至るまで、誰もが広範にわたって浸透している会社の問題を解決するのにそれぞれの役割を果たす必要があります。幅広い人にロック解除と証拠のスキルが求められます」と語った。

Insight PartnersのマネージングディレクターRyan Hinkle(ライアン・ヒンクル)氏は「ここ数年、かなりのグローバル顧客と売上成長を確保し、Immersive Labsは急速に発展しているサイバースキル業界で強固な地位を確立しました。影響力のあるリーダーシップ、成長マーケットにおけるイノベーティブなプロダクト、強固なユーザーエンゲージメントでもって、同社はサイバー準備マーケットを引き続きリードする立場にあります」と述べた。

インタビューでハドリー氏は「Insight Partnersを選んだのは、当社がCIO(最高情報責任者)やCEOに販売している法人B2BでInsight Partnersが真に強みを持っているためです。成功している英国のサイバーセキュリティ会社という点で、当社は次のDarktraceになりたいと考えています」と筆者に語った。

比較は非現実的かもしれない。Immersive LabsはDarktraceと同様にCYLONサイバーアクセラレーターから登場し、Darktraceと同じ投資家を抱える。しかし Immersive LabsはシリーズCで7500万ドルを集めた一方で、DarktraceはシリーズDまでその規模の資金調達をしなかった。Darktraceはロンドンで上場し、企業価値は17億ポンド(約2640億円)だ。

元GCHQセキュリティ研究者でトレーナーのハドリー氏は、サイバートレーニングを率いていたときにサイバーセキュリティスキルのプラットフォームのアイデアを思いついた。筆者は同氏に、なぜImmersiveがプラットフォームで「フライホイール効果」を提案できると考えたのか尋ねた。

「人々はサイバー脅威がひどくなる一方だといつも話します。しかし確かに現在もそうで、公知のものです。サイバーセキュリティはもはや地下にいるギークの責任ではないと我々は確信しています。実際にはビジネス全体の問題です。そして今、大きな波がやって来つつあります。サイバー犯罪は2021年、そして来年とスケール外のものとなります。というのも、企業が身代金を払っているからです。その結果として、当社は危機における政策決定を測定するための分析に注力しています。CIO、部門にかかわらず、どの企業でもかなりの共感を呼んでいます」とハドリー氏は述べた。

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カテゴリー:セキュリティ
タグ:Immersive Labs資金調達

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(文:Mike Butcher、翻訳:Nariko Mizoguchi