「われわれは重力波を観測した」と LIGOラボのエグゼクティブ・ディレクター、デビッド・ライツィー教授
今日(米国時間2/11)、科学者チームが史上初めて重力波の観測に成功したと発表した。
重力波は宇宙の時空に遍在する「さざ波」のようなものだ。驚くべきなのは、100年前にアルバート・アインシュタインが重力波の存在を予言していたにもかかわらず、現在まで誰もその探知に成功できなかった点だ。
発見の報を伝えたのはアメリカに本拠を置く国際研究チーム、 レーザー干渉計重力波天文台(Laser Interferometer Gravitational Wave Observatory)(LIGO)で、この施設の設置目的は重力波の直接観測にあった。LIGOの科学者チームは世界で最も精密な観測装置を建設する必要があった。
1992年にスタートしたLIGOプロジェクトはNSF(National Science Foundation)がこれまでに手がけた中で最も高価な装置となった。
今朝のNSFの記者会見で、LIGOチームの責任者(Executive Director)、デビッド・ライツィー(David Reitze)カリフォルニア工科大学教授は「これは科学におけるムーンショット(アポロ計画)だった。そして、われれはいわば月着陸に成功した」と述べた。
LIGOはにはルイジアナ州とワシントン州に研究施設があり、それぞれの施設に重力波観測のためのトンネルが建設された。トンネルはL字型で、それぞれの腕が4kmあり、施設間は3000km離れている。重力波は進行につれて一つの方向の空間を圧縮し、それと直角な方向の空間を伸長する。LIGOはこのきわめて小さな変化を捉えるためにデザインされた。
LIGOのトンネル内に置かれた一方の装置の距離が圧縮され、それと直角なもうひとつの装置の距離が伸長されたなら、それは重力波によるものだ。
この微小な伸縮を測る「物差し」として用いられたのが、トンネル内を往復する光だ。光速は観測者の運動にかかわらず一定なので、光がトンネルの端に置かれた鏡に反射して返ってくる時間を計測することでその距離を精密に測定することができる。
重力波は質量が加速されるときに生じる。2015年9月14日にLIGOで観測された信号は2つのブラックホールが光速の約半分の速度で、加速しながら互いの周囲を回るときに発生する重力波として科学者チームが予測していたものと正確に一致していた。
しかしLIGOチームが現象を観測してから今回の発表まで半年もかかったのは、データから重力波以外のあらゆる原因によって生じるノイズを取り除く必要があったからだ。そして今朝のLIGOチームは、観測されたデータが重力波によるものだということに確信を抱いていた。
「2つのブラックホールが連星となり、合体するという現象をわれわれが史上初めて観測したというのは驚くべきことだ。われわれは宇宙にブラックホールの連星が存在することを直接の証拠を得た」とデビッド・ライツィー教授は述べた。
ライツィー教授によれば、観測された重力波を起こしたブラックホールの合体は13億年前に起きたという。つまり光速で進む重力波が地球まで届くのにそれだけかかるほど遠距離で起きた事象ということになる。
それぞれのブラックホールは太陽の30倍の質量があり、衝突時の相対速度が光速の半分にもなっていた。
重力波が観測できると実性されたことによりまったく新しい天文学の分野が開かれた。ライツィー教授は「今後科学者は宇宙を全くの方法で見ることができるようになる」と語った。
「宇宙が重力波を通してわれわれに語りかけてきたのはこれが初めてだ。これまでわれわれの耳には重力波の声が聞こえなかった。今日から重力波が何を語っているか聞くことができる」とデビッド・ライツィー教授は述べた。
今回の発表は科学界にとって記念碑的業績だ。LIGOは人類に重力波を検知するテクノロジーがあることを証明した。昨年9月に検知された信号もさることながら、このテクノロジーこそ、われわれにとって真に重要性を持つ。LIGOの科学者チームは、人類が宇宙を理解するためのまったく新しい方法を生み出した。この点がわれわれの前に広がるもっとも大きな可能性といえるだろう。
トップ画像: NASA/Tod Strohmayer (GSFC)/Dana Berry (Chandra X-Ray Observatory)
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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+)