中国の顔認証ユニコーンMegviiが香港に上場へ

顔認証のFace++で知られる北京拠点の人工知能スタートアップであるMegvii Technology(メグビー・テクノロジーズ)が香港証券取引所に上場のための書類を提出した。

目論見書には株式公開の価格や時期は示されていないが、ロイターはMegviiが5〜10億ドルの調達と、今年第4四半期の株式公開を計画していると報じている。Megviiの投資家には、Alibaba、Ant Financial、そして中国銀行が含まれる。直近の資金調達は5月に行われたシリーズDの7億5000万ドルで、これにより企業価値は40億ドル超になったとされている。

清華大学卒業生3人によって2011年に設立されたMegviiは、中国のAIスタートアップを引っ張る存在で、同業他社(ライバル)としてはSenseTimeやYituがいる。そしてAlibabaやAnt Financial、Lenovo、China Mobile、中国政府企業をクライアントに抱える。

香港に上場するというMegviiの決断は、景気低迷、そして香港ハンセン株価指数基準のスランプの原因となっている民主主義運動を含む政情不安に直面している。先月、Alibabaは政治的、経済的環境が好ましいものになるまで香港上場を見合わせること決めたと報道された。

Megviiの目論見書では、売上の急成長と損失の拡大の両方が示されている。これらは好ましい株価の公定価格と研究開発への投資に貢献する。同社の売上高は2016年に6780万人民元だったのが、2018年には14億2000万人民元に成長し、これは年間成長率359%に相当する。2019年上半期は9億4890万人民元を売り上げた。しかしながら2016年から2018年にかけて損失は3億4280万人民元から33億5000万人民元に拡大し、今年上半期でMegviiはすでに52億人民元の損失を出している。

投資リスクとして、かなりのR&Dコスト、米国・中国間の貿易戦争、顔認証に関するネガティブな見方などをMegviiは挙げている。今年初め、人権NGOのHuman Rights Watchは、中国警察と当局が新疆ウイグル自治区の監視に使用しているアプリにFace++が関係しているとするレポートを出した。しかし、後にMegviiのテクノロジーはアプリに使用されていないと訂正した。Megviiの目論見書では、訂正されたもののレポートがいまだに評判を著しく傷つけていて、完全な挽回は難しいとHuman Rights Watchのレポートに言及した。

Megviiはまた、同社の技術の誤使用を防ぐための内部手段を有しているにもかかわらず、そうした手段が「いつも効果的である」と投資家を安心させることができない、とした。そしてAI技術のリスク・課題として、“ユーザーの認識や世論、受け入れに影響するかもしれない、不適切な目的でのサードパーティによる誤使用、意図的な情報漏洩、中国や他の管区における該当法律や規制の違反、先入観の適用、監視”を挙げた。

マクロ経済学的視点からすると、Megviiの投資リスクには現在進行形の貿易戦争の一環として、中国から米国への輸出品にかけられている規制や関税が含まれる。また、Megviiは米政府が貿易ブラックリストに加えるかもしれない中国テック企業の1社である、とのレポートも引用した。「我々はこの文書を発行する時点で我々がそのような規制の対象になるのかは知らないし、通知も受け取っていないが、そのようなメディアの報道の存在そのものが我々の評判を傷つけ、経営の注意をそらした」と目論見書には書かれている。「我々が経済・貿易制限のターゲットになるのかどうかというのは我々の手に負えることではない」。

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(翻訳:Mizoguchi)